帝都:ダミーボア!?でした!
家族がインフルでダウンしており、投稿遅れました・・・申し訳ございません。
主人公一行の嫌な予感は果たしてどうなるのでしょうか・・・。
沢山のブックマークありがとうございます!!
次話投稿は一週間以内です。
ザリッと砂の感触が足に馴染む。
体を覆っているのは、一般の冒険者が装備する頼りない革の鎧・・・命の危険と常に隣り合わせとなるであろう冒険者であるが、自分の胸中は踊っているとしか形容できない。
冒険などいつ以来なのか、恐らく子供の頃の・・・あそこの地下に潜り込んだ時であろう。
それ以来、心踊る冒険なんてした覚えがない。
草木の微かに揺れる音、漂う自然の香りに心を静まらせていると、横からはガシャガシャと粗野な音が聞こえてくる。
それを酷く残念に思いながら、ふと横を見てみればブレストプレートを着込んだ大きな男が歩いている。
・・・まぁ、知らない仲ではないが、今ここでこの男と並んでいるのがあれらにバレたらとんでもないことになるのは間違いないな。
「そこ、足元気を付けて」
「問題ない」
会話という会話がないが、仕事となれば饒舌になるもんだから、二人とも職業病であるだろう。
そしてまた黙々と歩いていくが道中は穏やかなものだ。まぁ、それにしても気配が無さ過ぎるけれど。
村から少し離れた場所にある、山にできた崖の下を沿って歩いていくが、魔物の気配は微塵もしない。
近くに依頼にあったダミーボアの巣があるからと言えば、大抵は通じてしまうだろうが、ここにいる僕とヴォルフ?には異様な気配が漂っているのがわかる。
気配が無さすぎるのだ・・・魔物をはじめとした、森のあらゆる生物気配が微塵も感じられない。
足元を這いずる虫ですら、何かに怯えているのではないかと思わせる程に不気味なのだ。
「気を付けようね。何があるかわからない」
「はっ! あ、いや、う、うむ」
・・・まぁ、誰もいないし、大丈夫か。
そうして歩いていくと、ヴォルフがピタリと足を止めた。無論同じ場所で自分も足を止めていて、視線の先にはポッカリと巨大な口を開けた洞窟が姿を現したのだ。
当然ながら、こんな崖に洞窟があるのはおかしい。歪な形から、まず人間が作ったものではなく、洞窟から漂ってくる独特の獣臭さは十中八九ダミーボアの巣である事を示している。
しかし、その洞窟の中は驚く程に静まり返っており、巣の前に立っているとは思えない。
それと
「洞窟が広すぎる・・・入り口からしても、普通は人一人がやっと通れるくらいな筈だけど、これは四人が並んで歩いても大丈夫だね」
「・・・間違いなく異常事態だ。慎重に行くしかないだろう」
ヴォルフと視線を交わし、睡眠効果がある植物に火を付け、煙を洞窟の内部へと流す。
・・・普通なら巣の出口近くにいる見張りのダミーボアが飛び出てくるのだが、やはりそれもない。
それでも油断なく巣をジッと見つめ、充分に煙が行き渡った頃、洞窟の内部へと進む。
一歩巣の中へと踏み出すと、そこからは暗く澱んだ空気が吹き抜けるばかりで、魔物の気配は全くない。
松明の火の揺らめきに、自分達の影がユラユラと形を変える。
「やはり魔物の姿はないな」
眠っている筈の魔物の姿はどこにもなく、しかし、不気味な気配だけは漂ってくる。
そしてまた暫く進むと、恐らくダミーボア達が残したであろう食べ滓が散乱していた。あの村から盗ってきたのであろうか、食い散らかされた野菜がそこいらに見受けられる。
だが、そこにあったのはそれだけではない。
ダミーボアが主に食べているものは木の実や山菜等であり、時折、村などの畑を襲う。それらが稀に巣を作り、群れとなって行動するのだ。
そして、そこには・・・
「何かの肉だな。ダミーボアが肉食なんて聞いたことがない」
「それに、こっちには共食いの跡まであるね」
村を襲って充分に腹拵えもできている筈のダミーボア・・・それに巣を形成している筈のそれらが、共食いをするなど考えられない。
何故この様な事態になったかは全くわからない・・・しかし、何らかの異常事態が起きているのは間違いない。
「村に残してきたユガ達が心配だ・・・早く戻ろう」
「そうだな・・・しかし、そう簡単に帰れる気配ではないぞ」
BRRRRRRRRRRRRRRRRRRR………
奥の暗闇から一匹の巨大な影がユラリと僕達の前に現れる。ゆっくり引き下がろうと後ろへ半歩後退る。
BRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRR………
しかし、背後からも巨大な影が迫っている事に気づいた。
「・・・八方塞がりですね」
辺りには殺気が満ち溢れ、その全てが自分達に注がれているだろう事がわかる。
そして更に最悪な事に、発している気配からして恐らくこの魔物達はただ者ではない。
纏う気配のそれはどれもが王者のそれであり、ダミーボアなど足元にも及ばぬだろう。
無論神獣とまではいかないが、それでも僕の見立てでは・・・A-ランクは確実にあるだろう。
それが二匹いるということであり、一応準備はしてきたが、まさかAランクに相当する魔物が出るなど予想できる筈もない。であるからして、準備も最低限なものであり、出来ていないというのが本音だ。
Aランクの冒険者が万全に準備し、最低でも総勢5名でやっと勝てると言われているそれだ。
僕達のような半端者に勝てる筈が・・・まぁ、普通ならないだろうね。
「やるしかないね」
「・・・・・・・・・」
「どうかした?」
Aランクの魔物を前にヴォルフは一言も発せず固まる・・・この男がこの程度の相手に怯む筈がないと思うのだけど。
「・・・いや、なんだ。もう恐らくここには誰もいない筈だ。出来うることであれば、いつものしゃべり方に戻ってくれないか?やりづらくて叶わんのだ」
「・・・」
あぁ、そういうことか。
まぁ確かにそうだな。こんなダミーボアの巣にノコノコ入ってくる様な者なんているわけない。
それにヴォルフからすれば、我がこの様な喋り方をしているのが違和感でしかないだろうし、自分の喋りからにも大変気遣っているのがわかる。
それじゃあ・・・戻すとしよう。
「そうか。それでは戻すとしよう。ユガ達の前では見せられないが、流石にこの相手に自重はしておれん。全力でいくぞ」
「俺も王国の者として、貴殿に恥じぬ戦いをしよう」
ザッ・・・・・・ザッ・・・・・・
「おやおや、Aランク相当が4匹もいるとは思わなかったぞ」
「しかし、我々の敵ではないという事・・・思い知らせてやりましょ!!」
PUGYAAAAAAAAAAAAA!!!!
ユガ・・・直ぐに向かう。
だから、もってくれよ!!
誰にも見られない巣の中で、ある二人と魔物の激闘が開幕した。
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「うーん、二人とも大丈夫かな?」
部屋のベッドの上で転がりながら、少し前に出ていった二人の事を考える。
コトヒラとシロタエは村の周りの警備に向かい、ハンゾーも今は肩から離れ、恐らく忍びながら警戒網を張っている筈だ。
と言うのも、昨日の夜にダミーボアの襲撃があったのだが、それがどうにもアドルフとヴォルフさんには異常に見えたらしい。
確かに自分も嫌な予感はしていて、しかし、それが何の嫌な予感なのかが全くわからない。
で、アドルフとヴォルフさんはダミーボアの巣へ向かい、念の為に俺達が村に残ったというわけだ・・・まぁ、絶賛ニート中なんだけどね。
俺が村の見回り行こうとしたら
「主人さまはお待ちください。私たちで充分にございます」
「僕らだけで充分ですよ主人!」
「ヤツラゴトキ、ワレワレデコトタリルカト」
と言われ、ここで待機することを余儀なくされてしまった。
正直言って暇なのだ。
『人間は何故安全な場所から離れて暮らすのかしら?』
「えっとね・・・確か、村に住んで農業なんかに従事すると、税が軽くなるらしくて、村長なんかは税がもっと低くなるらしいから、それだと思うよ」
『安全な場所に住むのにそんなのがいるのね。理解できないわ』
久々に二人きりになったディーレと話を交わす。さすがにいつも一緒にいると会話の種もなくなっては行くけれど、ディーレとなら同じ会話でも楽しく感じてしまう。
こんな美人が彼女ならもう死んでもいいな。
そうして、ディーレ話し込んでいると、突然ゆっくりと扉が開かれる。
え?とそちらに視線を向けると、そこからヒョッコリと少年が顔を出す。
確か・・・レブ君だったかな?
「ヴォルフさんいますか?」
レブ君はキョロキョロと周囲を見渡し、俺に問い掛ける。明け方近くに出ていってしまったから恐らくまだ戻らないだろう。
「あぁ、ちょっと用事で出掛けてるよ」
「そっか・・・じゃあ、兄ちゃん何か教えてよ! 兄ちゃんも冒険者だから強いんだよね?」
うん。そう来ると思ったけど、何も教えることはできそうにないんだよレブ君・・・。
アドルフやヴォルフさんみたいに剣を使ってかっこよく敵を倒すなんてできないし、二人の騎士道の様なモノなんて俺にはないし。
まさか、バッタバッタと敵を触手で貫いてきたんだ!!スライム相手にやられかけて、王都では拐われて、普通なら楽に倒せるゴーレムを自分から暴走させて、死にかけながら倒しました。なんて言えるわけがない。
『・・・貴方のかっこいいところは、貴方には見えてないのよね』
ディーレさんが何かをボソボソと呟いたが、俺には聞こえなかった。
・・・レブ君のキラキラと輝く期待に満ちた瞳を見てしまえば、ここで無下に突っ返す事なんてできやしない。
とは言っても武勇伝なんて、そんなかっこいいものはない・・・。それにこの子は、ヴォルフさんの影響で今は騎士になりたいって言ってるし、冒険者の話を蒸し返してまた目覚めさせても困る。
どうしたもんか・・・
『それなら、貴方の失敗談でもいいんじゃないかしら? 貴方が死にかけたのは情報を仕入れてなかったからでしょう? だから、失敗から学んだ事を教えてあげなさい』
失敗談でもいいのか・・・。レブ君に向き直り、口を開く。
今まで死にかけた事なら何度でもある。その経験が活かせるというのなら、いいのだが・・・本当にこんなものでいいのだろうか?
レブ君に情報の重要性を充分過ぎる程に説いていく。アドルフとヴォルフさんが綺麗な部分を教えるなら、俺はあえて泥臭さを教えてあげればいい。
思えばスライム相手に舐めて掛かって死にかけ、森を見て回ろうとすればウルフに襲われ・・・知らず知らずの内にハルウ達が付いてきて、仲間ができて・・・。
そして・・・もうなんか、色々あったな。
「・・・うん。というわけで、情報の大切さわかってくれたかな? 無謀に行動するのが一番ダメ。無茶して死んだらそこで終わり・・・よっぽど強くならない限り、逃げるのが一番。英雄と蛮勇を履き違えないようにしてね」
え?なんか俺らしくないかっこいい事言ってるって?
そりゃ、ディーレ様が格好良く聞こえる様に耳打ちしてくれているんだから当然だ!!
・・・将来ヒモになる可能性が出てきている。
レブ君は真剣に話を聞いている・・・まぁ、そうだろう。今まで聞いてきたのは英雄達のかっこいい部分ばかりであり、そう言った戦う前の事前準備など知らないだろう。
どんな英雄であっても、事前の準備なしで物語を紡いできたわけではない。
トイレしない英雄がいるか? 物を食べない英雄がいるか? そんな事と一緒である。
巨大な魔物や龍と戦うにも、しっかりと事前準備はした筈なのだ。
「ただ、どうしても守らなければならないものがあれば、全力で守るんだよ」
「うん! わかった!!」
レブ君は目をキラキラと輝かせている・・・が申し訳ないけど、全部俺から出た言葉じゃなくて、肩に座っている精霊さんのお陰なんだよなぁ。
『嘘は言っていないわ』
「・・・釈然としないなぁ」
そんな小声のやり取りはレブ君には聞こえておらず、ウキウキした様子で部屋を出ていった。
そして、外で待機していたお母さんに耳を引っ張られていた・・・どうやら家畜の世話を頼まれていたらしい。
少年がいなくなった部屋はシンと静まり返り、やはり少し寂しい気持ちになる。
もう森で一人ぼっちの生活には戻れそうにないな。
ディーレさんと他愛もない話を続け、精霊魔法がなんたるかをずっと聞いていると、扉が三度ノックされる。
扉の叩き方からして誰かわかったので、入っていいよと声をかける。
「どうだった?何か変なところとかなかった?」
「今の所周囲に変化は見受けられません」
扉を開けて入ってきたのはシロタエで、途中報告で戻ったらしい。
・・・どうやら、周囲にはあまり問題はないようで、コトヒラやハンゾーも周囲に異常はないとシロタエに報告している。
取り越し苦労だったかな?
引き続き、シロタエには見回りを続けて貰おうと・・・
ドンッ!!
した次の瞬間には、村の門の方から破砕音が響き渡った。
「なんだ!?」
「直ぐに向かいます」
シロタエはドアを蹴破る様にして外へ飛び出し、門の方へと向かっていった・・・おかしい、門の方はコトヒラが守っていた筈なのに、あのコトヒラがダミーボアなんかに遅れを取るとも思えない。
それに村の門は質素ながらも、ダミーボアの突撃には耐えるて言っていた筈だ。
大量のダミーボアが突撃したのならわかるが、大量にいたのなら足音や気配で俺やシロタエが気づく筈だ。
「何があったの!?」
「あぁ、冒険者様!! そ、それがダミーボアが地中から現れまして・・・」
外に出て、門の方へと向かう村人から事情を聴く・・・地中から移動するなんて聞いてないんだけど。
それなら気配やら足音が聞こえないのもありえる。
門へと全力で疾走する。
門へと辿り着くと、シロタエとコトヒラがダミーボア達の行く手を遮り、軽々といなしている。
シロタエとコトヒラの後ろには怪我をした村人が何人か倒れており、それを無事な村人達が必死に救出している。
門の前にいるダミーボア達を見てみると・・・何かに取り付かれた様に此方へと突撃してくる。
ダンジョンの魔物を彷彿とさせるそれを見ていると、中に一際大きなダミーボアが存在している。
マーダーボア(LV31)
称号:猪の暴徒
HP:1457
MP:123
STR:1718
VIT:1621
AGL:1821
MGI:241
LUC:1
位階:A-
専有スキル:穴堀り、突撃、支配下
エクストラ・スキル:暴徒激突
おぉ、結構手強い相手もいるもんだな。A-ランクって事は地龍と同じってことなのか?
にしてはステータスも低いし、強いようには見えない・・・しかし、恐らくはあのスキルだな。
"エクストラスキル:暴徒激突。周囲の支配下に置いた『ボア』のステータスを倍増させ、支配下に置いた『ボア』の数だけ自身のステータスを向上させる。支配下に『ボア』がいない時のステータス、B-"
ナビちゃんありがとう。
成る程。ボアがいればいるほどステータスが上がるってことか、ボアがいない通常の状態なら弱い。つまりは、ボアから先に倒せばいいってことか。
「シロタエ! コトヒラ!! ダミーボアから先に倒せ!!」
その言葉皮切りに、コトヒラとシロタエは目の前に乱立するダミーボア達を蹴散らしていく。
良く見てみれば、何匹かのダミーボアはまっぷたつに切断されている・・・どうやら、ハンゾーも来ているようだ。
ダミーボアはかなりの数だ・・・門の前はダミーボアの群れで埋め尽くされ、マーダーボアの周囲にはそれに増してダミーボアの密度が濃い。
「だ、大丈夫なんですよね冒険者様!?」
「あの数じゃ流石に無理じゃ」
「アドルフ様やヴォルフ様は戻られませんのか!?」
うーん、やっぱり見た目がアドルフやヴォルフさんと比べてひ弱そうだから、ダミーボア相手に押されて見えるんだろう。
マーダーボアに出張られたなら少し苦戦するかもしれないが、今のこの状況であれば余裕な筈だ。
門の前から二人が一歩も引いていないのがその証拠だ。
それに二人は全く全力を出していない。と言うのも、俺が止めているせいなんだけどね。
理由は・・・まぁ、やり過ぎてしまうというのが一つ。そして、もう一つは目立ちすぎてしまうからだ。
シロタエは魔法と体術を駆使して敵を倒す技に秀でている。コトヒラはよくわかんない腰の刀・・・仏刀?でスキルを繰り出し戦う。
で・・・進化してから、今まで以上に自重が効かなくなっている。
とは言ってもこの状況を打開しない限り、村人達の不安も払拭できないだろう。
それなら一発だけ、ダミーボア達を押し返すだけの技を繰り出すことを許可しよう。
「シロタエ、コトヒラ、ハンゾー・・・一発だけ許可する」
「「はっ!!」」
(御意ニ)
シロタエの瞳が深紅の色に燃え上がる。身体から発されていた気配が一瞬にして消失し、シロタエの周りの空気が凍り付く。
薄く開けられた口元から微かに漏れ出る呼気が、紅いオーラを纏い内部に力が蓄積されているのがわかる。
両手に紅いオーラが出現し、それが一本一本の糸へと姿を変える。
その糸は空中へ充分に放出された後、シロタエの両手へと紋様として刻まれる。
魔方陣がシロタエの足元へと出現し、それはゆっくりと発光を始める。その魔方陣の一つひとつの文字は全てが前世で使われていた文字であり、魔方陣は西洋のそれでなく、陰陽が刻まれた和のモノである。
「故ノ力、紡ぐ全てにカシコミカシコミ颪申す。思ふ望みは永劫吹き荒ぶ風神の頂なり。妖術:颪嵐」
シロタエの周りから一切の時が動くことを諦める。
「鉄拳」
暴力的な風の圧が門前に轟き、ダミーボア達の身体を散り散りに吹き散らしていく、切り裂かれる・・・いや、押し潰されるようにして一撃で数えきれない量のダミーボア達が跡形もなく圧し潰れた。
「強天に願わくは、唯一の武士が騙る英傑の御伽草子。雷審は己ヶ刀に宿り、血潮は河へと武士の亡骸斃れる河辺に無念というなの華を咲かせ。エクストラスキル:武士琴平」
コトヒラが腰に下げた仏刀を引き抜き、ゆっくりと横へと一閃させる。紫色のオーラがコトヒラの前へと一筋描かれると共に、それが幾つもの刃となり、ダミーボアへと襲い掛かった。
ダミーボアがその刃に触れた瞬間、どこも傷ついていないにも関わらず倒れ伏す。
猛り狂っていたダミーボア達をその刃が通過していくだけで、パタパタと嘘の様に倒れ伏していく。
「鋼鐵斬糸」
ダミーボアの中から小さな影が一つ飛び出したと同時、ダミーボア数匹を覆い隠す糸の網を射出した。
それはダミーボアの頭上へ降り掛かると、何の抵抗もなく地面に吸い込まれる様にしてダミーボアを通過する。
・・・すると、網の形に沿う様にしてダミーボア達が斬り分かれていく。
空中へ飛び出した小さな影・・・ハンゾーは、いつのまにか張っていた一本の糸に掴まり、空中で静止すると先程の網を幾つもダミーボアの群れ目掛けて発射する。
ダミーボアの群れは瞬く間に減少し、押し返す所か、一気に形成を逆転させてしまった。
HP:1121
MP:87
STR:1432
VIT:1265
AGL:1589
MGI:123
LUC:1
位階:B
マーダーボアのステータスも三匹の一撃で下がりに下がっている・・・。
一言言わせてもらおう、誰がそこまでやっていいっていったんだろう。
押し返す程度でよかったのに、形勢逆転って・・・さっきまで無限にいるんじゃないかと思っていたダミーボアが、いまや数十匹の群れとなっているのだから驚くしかないだろう。
「主人様」
「どうしたの?」
コトヒラがマーダーボアを前にして、此方へと声を掛ける。
「さっきまでマーダーボアが二匹いた筈です・・・一匹見当たらないのです」
「逃げたってこと?」
「イエ、オソラクベツノバショヘムカッタノデハナイカト」
えっと、つまり・・・
ドンッッッ!!
出現場所はここだけじゃないってことかよぉぉぉぉぉ!!
門の反対方向から先程聞こえた破砕音が響く、幸い村人達はこの騒動で此方へと集まっており、破砕音が聞こえた方に人はいない筈だ。
と、村人達がザワザワとし始め、何か騒ぎが起こっている事に気付く。
まさか、さっきの怪我人で重傷者がいたのか、とも思ったがどうやらそういう騒ぎではない。
「イヤよ!! だって・・・だって・・・!!!」
「無理だ! あんたが行ったって無駄だ! ありゃ普通の野荒しじゃねぇだがや」
「そんなことわかってるわよ!! でも、でも私は!」
いったいどうしたというのか、折角コトヒラ達がダミーボアを押し返したのにどうやら祝勝ムードというわけではない。
「いったいどうしたんですか?」
「あぁ、冒険者様! 実は」
気になって、近くにいた村人に声を掛ける。
「あの女性の息子さんが、破砕音が聞こえた方角にある『畜舎』にいるってんだよ!」
それを聞いた途端、俺は自然とその場から駆け出していた。
二人の正体は一体何なのでしょうか?そして、主人公達は一体どうなってしまうのか・・・。
少年の危機に駆け付けるユガ・・・遂にニート脱却の予感です。
宜しければ、本文下にある評価の方是非ともお願い致します!
遠慮なくこの物語を評価して下さい!!
何か変なところ、見にくい、誤字だ!などがあればどしどし教えて頂けると嬉しいです。
(言い換えでこういうのがありますよなどが合ったら教えてください。例:取得→習得、思いやる→慮る、聞こえる→耳に届くなど)
感想や活動報告の方にコメント頂けると私の気力になりますので気軽にどうぞ!!