初めての共同作業(意味深)-14
「…奇跡、ですね…。」
思わず私はそんな言葉を口にしていた。勿論、小雪さんと一緒に走りながら。
スタートダッシュはいつも失敗していたのに。いつも引き摺られて砂まみれだったのに。
この土壇場で完璧なスタートをきれた。小雪さんと完全に息を合わせて走ることが出来ている。
「よーし、このままいくよーッ!!」
小雪さんは右の拳を突き上げて上機嫌だ。私も同じことをしたい気分だったのは言うまでもない。
これですよ、これこそ共同作業です…!今までのは足を繋がれた女が引き摺られているだけでしたからね。
やはり二人三脚というのは難しいらしく、他の二人組はスタートからもたついているのが多いようだ。
これならいける…!凄く大変だったけどちゃんと練習しておいてよかった…。
…いや、私達以外にもスタートダッシュが完璧なところがある。
「あ、あれは隣の組の陸上部コンビ右京さんと左京さん!!!あの二人は阿吽の呼吸コンビと呼ばれるほどにコンビネーションが抜群らしいぜよ!!まさか一緒のレースだったとは…!!」
詳しいですね、小雪さん。説明キャラも様になってますよ。
しかし、小雪さんの説明が本当のことならば非常によくない。
二人三脚は二人の息がいかに合うかが勝負となる競技だ。阿吽の呼吸コンビだなんて呼ばれているのならば二人三脚は大の得意だろう。
その予想は的中していたようで、そのコンビは既に半分のラインを越えていた。
その数秒後に私達も半分を越える。だけど、このままじゃジリ貧だ。
「むむむ~!!!これは『本気』を出すっきゃないね!!」
「本気!?まさか小雪さん…」
スタート前に聞いた言葉が、今頭に鮮明に思い浮かぶ。
小雪さんの本気?そんなの、全力で阻止しないといけない。でないと死人が出ます。何度も言いますが私ですよ!!
「ちょっと待っ」
「ヒィアウィーゴー!!!☆爆速でいくぜぇぇぇ!!!!」
私の必死の制止は、呆気なくも霧散する。
今まで私のペースに合わせていた小雪さんの足の動きは急激に加速をして。
それに着いていけなくなった私の身体は大きくバランスを崩し。
「あ、これもうダメですね。」
共同作業終了のお知らせが頭の中に響き渡り。
もう無理だと悟った私は、地面からの熱い抱擁を受け入れることにした。




