第41話 悪役豚貴族は家族として受け入れられる
「シャトン、騒々しいですよ。令嬢らしく振る舞いなさい」
エリーゼさんがシャトンに注意をする。
貴族令嬢としての教育は大事ではあるが、今気にするのはそこではないだろう。
「ポール兄様が追い出される、って本当?」
どうやら俺が追い出されるという話を聞いて、急いで来てくれたらしい。
彼女から家族としての好意を向けられているのだろう。
そんな彼女を拒絶してしまったのは申し訳なく思ってしまう。
「安心しなさい。ポールが追い出されることはないわ」
「え?」
「むしろ、これからは家族として過ごすのよ。今までみたいに近づかないよう言われることはないわ」
「本当?」
エリーゼさんの説明を聞き、シャトンの視線がこちらに向く。
とことこと近づき、上目遣いでじっと見つめられる。
その姿はとても可愛らしかった。
「ああ、本当だ」
「やったぁ」
肯定した瞬間、シャトンは勢いよく抱きついてきた。
流石に【身体強化】を使っていなかったので、素の俺でも受け止めることができた。
「離れてくれ。俺は汗をかいてるから汚いだろ」
「嫌っ! ポール兄様はすぐに逃げようとするもん」
抱きついてくる彼女を引き剥がそうとする。
だが、ここで【身体強化】を使っており、引き剥がすことができなかった。
このままでは俺の服の方が先に破れてしまうだろう。
「うふふ。シャトンはポールのことが好きなのね」
「ああ。兄妹の仲が良いのは素晴らしいな」
俺たちの様子を見て、エリーゼさんとエデルが嬉しそうな表情を浮かべる。
そんな呑気なことを言ってないで、早くシャトンを剥がして欲しい。
太っちょの汗で彼女のドレスを汚したくない。
「おい」
「ん?」
いきなり声を掛けられた。
振り向くと、そこにはシオンがいた。
その表情は険しく、これから家族になる人間に対する友好は見えない。
「・・・・・・悪かった」
「え?」
いきなりのこと驚いてしまった。
まさか謝罪をした?
「でも、僕がお前のことを嫌いなのに変わりはない。今度は絶対に勝ってやるからな」
真正面から嫌いと言われてしまった。
シオンはそのまま部屋から出て行ってしまった。
「あらあら。シオンには嫌われちゃったわね」
「いや、そんなに呑気な反応でいいんですか?」
シオンが出て行った方を見て、エリーゼさんが優しげに呟く。
とても心配しているようには見えない。
これから家族になるのに、はっきり嫌いと言ったのはいいのだろか?
「いきなり仲良くなるのは難しい。話すようになれただけ良いだろう」
「まあ、そうなんだけど」
エデルの言葉に納得するしかなかった。
元々はまったく交流がなかったのだ。
そういう意味では進展があったわけだ。
「それにこの関係は悪くないな」
「どうして?」
「お前たちは同い年だ。お互いがライバルになれば、より高みを目指す良い存在になれるわけだ」
「なるほど・・・・・・でも、それを俺に言って良いの?」
ライバルの存在が成長に良いことは理解できた。
だが、ライバル当人に言うのはどうなのだろうか?
「ポールは大人びているようだから問題は無いだろう」
「・・・・・・そうだね」
エデルの指摘に言葉を濁してしまう。
もしかして、気づかれているのだろうか?
藪蛇はつつきたくないので、これ以上は何も言えなかった。
「ポール兄様、さっそく訓練しよう」
「決闘をしたから、今日は休ませてくれ」
「え~」
俺が断ると、シャトンは頬を膨らませる。
だが、拒絶はしていないので、暴走することはなかった。
そんな俺たちの様子を見て、大人達は笑みを浮かべていた。
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