第39話 悪役豚貴族は悲惨な未来を話す 2
「【勇者】だって、戦うのは魔族だけじゃないでしょ。人族の仲にも悪い奴はいるんだから」
種族によってその性格が決まるわけではない。
個々によって色々と異なってくるはずだ。
「まあ、そうだな。だが、それがポールだと?」
「今までの俺だったら、断罪されるような人間に育ってもおかしくはないでしょう?」
「む」
俺の指摘にエデルは何も言えない。
かつてのポールは性格が屑だったのは公然の事実であった。
そんな彼が悪役豚貴族と呼ばれるほどの糞野郎に育つのは当然だったわけだ。
それをエデルは否定できない。
「シオンも出てきたな」
「僕も? 一緒に断罪されるわけが・・・・・・」
いきなり話を振られ、シオンが驚きを隠せなかった。
彼との関係を説明した方がうまく説明できる気がしたから話題に出したのだ。
「いや、違う。その【勇者】と呼ばれる存在は平民出身らしく、同じ平民出身のシオンと気が合ったみたいだ」
「なるほど・・・・・・貴族社会というアウェイの中で同じ境遇で仲間意識が芽生えたわけか」
「そういうこと。そして、シオンにとっては恥ずべき家族──いや、家族と認めることすら嫌な存在が未来の俺だったわけだ」
「そこまで言うことは・・・・・・いや、かつてのお前ならそうだったんだろうな」
否定しようとしたが、流石に難しいと思ったのだろう。
当主であるなら、公正に判断しないといけない。
「学院で断罪された俺は人族を裏切り、魔族に寝返ることになるんだ。【勇者】が現れたという情報を引っさげてね」
「つまり、人族にとって裏切り者になってしまうわけか。その結果、【勇者】たちに討伐されるわけだな」
「よく分かったね。魔族側でも雑に扱われ、結果として寂しい最期を迎えてしまったよ」
エデルの推測が当たったので、笑顔で正解を告げる。
まあ、笑うような状況ではないのだが・・・・・・
「・・・・・・にわかに信じられないな」
「そりゃそうだよね。でも、俺はこの夢をまったくのデタラメとは思えないんだ」
「それは夢を見た本人だからじゃないか? 夢の中で経験したからこそ、実際に起こったことだと勘違いしている可能性もあるだろう」
信じられなくて当然である。
夢の話の時点で、そもそもの信用がないわけだ。
もちろん、俺も完全に信じてもらえるとは思っていなかった。
「その可能性は否定できない。でも、そうなるかもしれないと思ったからこそ、俺は改善しようとしたんだ」
「それは良いことだが・・・・・・」
「俺が「2年後に廃嫡される」のを条件としたのはこの夢が理由なんだ」
「どういうことだ?」
話を先程の決闘に繋げる。
俺の行動に一貫性があることを示すためである。
「俺が断罪されるのは【勇者】やシオンと同じ学院だ。廃嫡され、冒険者になった俺は学院に通うことはない」
「つまり、断罪される未来がなくなるわけか」
「というわけで、2年後に俺を廃嫡してくれないかな」
断罪される未来を回避するため、廃嫡が一番手っ取り早いのだ。
せっかく異世界に転生したので、貴族の面倒なしがらみから離れて冒険者として活動するのも悪くないはずだ。
そのために魔法の訓練を始めたのだ。
「お前の言い分は分かった」
「じゃあ・・・・・・」
「だが、お前の廃嫡は認められない」
「えっ⁉」
俺の提案はあっさりと拒否された。
一体、どうしてだ?
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