第38話 悪役豚貴族は悲惨な未来を話す 1
「ご、ごめんなさい」
「いえ、大丈夫です」
ようやく解放され、エリーゼさんから謝罪を受ける。
正直役得ではあったが、流石に義理とはいえ母親に抱きつかれるのは恥ずかしかった。
「では、ポールはヴァイス侯爵家に所属したままで良いな」
エデルが俺たちの様子を見て、話を締めようとする。
先程の光景もうまくいったと思ったのだろう。
だが、そうは問屋が卸さなかった。
「いや、待って」
「なんだ?」
提案を反対され、エデルは少し不満げな表情になる。
エリーゼさんを受け入れたので、俺は納得したと思っていたのかもしれない。
けれど、俺にはまだ話すべき事がある。
といっても、全てを話せるわけではないが・・・・・・
「俺が突然変わった理由を聞いて欲しい。その上で、俺をヴァイス侯爵家に残すかを判断してくれ」
「何?」
いきなりの提案に怪訝になるエデル。
エリーゼさんやシオンも同様の表情だった。
まあ、何を言っているんだとは俺も思う。
だが、これは話しておかないといけないだろう。
「実は夢を見たんだ」
「夢?」
出だしでいきなり反応される。
まあ、たかが夢だと思うのが当然だろう。
といっても、前世と話すわけにもいかない。
完全に頭がおかしいと思われるからだ。
「これから遠くない将来──最低でも10年以内に起こる出来事を夢で見たんだ」
「どんな夢だ?」
エデルが食いついてきた。
夢の内容が気になったのだろう。
「このまま俺が性格の悪いまま成長すれば、学院に入学したときにとある学生に断罪されるんだ」
「断罪? その学生は誰なんだ?」
「名前はわからない。でも、のちに【勇者】と呼ばれて、【魔王】を倒すみたい」
「【魔王】だと?」
説明を聞いて、エデルが聞き返してくる。
まあ、驚いて当然の言葉だろう。
「【魔王】は魔族の王ということだろう? 決して友好的ではないが、魔族とはそれなりに交流をしている。【勇者】が討つような【魔王】がいるとは思えないな」
信じられないのは当然だろう。
夢の話の時点で眉唾物だからだ。
だが、これは事実であるので、上手く伝えないといけない。
「詳しくはわからないけど、複数の部族を武力で統一する魔族が現れ、【魔王】と名乗って人類と戦争を起こすんだ」
「・・・・・・あり得ない話ではないのか?」
「光があるところに影あり──とは逆だけど、【魔王】となる存在が現れれば、【勇者】となる存在も現れるみたい」
【MGF】のシナリオで語られた内容をそのまま伝える。
自分の言葉で伝えるより、プロが作った文章を利用する方がいいだろう。
下手に自分の意見を入れれば、おかしなことになってしまう。
「その2人が現れるという前提で話を進めるが、どうして【勇者】に断罪されることになるんだ? ポールは人族だろう?」
どうやらそこに引っかかったようだ。
たしかに、普通に考えれば、人族である俺が【勇者】に断罪される話自体がおかしい。
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