第36話 悪役豚貴族は元凶の流れを聞いてしまう
「ヴァイス侯爵家を継いだ俺の生活は大きな問題も無く、安定していたと思う。同じ貴族の令嬢と結婚し、跡継ぎであるお前も産まれた」
「・・・・・・」
実父は軽く笑みを浮かべながら話すが、なんとも言えない感情を持ってしまう。
ポールが産まれたことは彼にとって幸せだったのだろうか?
悪役豚貴族と呼ばれる者が家族なのは不幸以外の何者でもないと思うが・・・・・・
「兄上の方も大変ながら、幸せな生活を送っていることは聞いていた。同い年の息子が産まれたと聞いたので、家族付き合いをしながら一緒に遊ばせるのもいいと思っていた。だが、その夢は叶わなくなってしまった」
「え?」
幸せな空気が一変、深刻な雰囲気を醸し出す実父。
まさかポールがやらかしたことが原因だろうか?
「5年前、国中に流行病が蔓延した。王侯貴族平民問わず、多くの者が命を落とした」
「ああ、なるほど」
ポールが原因ではないようで安心した。
だが、流行病により多くの人々が亡くなったことは大変な事態である。
「お前の母親と俺の兄も亡くなってしまった」
「もしかして、エリーゼさんがこの屋敷に来たのは・・・・・・」
「弟として、兄の代わりに彼女と彼女の家族を守ろうとしただけだ。まあその結果、ポールに勘違いされたようだがな」
「・・・・・・」
苦笑する彼を見て、同情してしまった。
別に彼は何も悪いことはしていない。
むしろ、家族の幸せを願って行動したことは素晴らしい。
だが、説明不足はあったのかもしれない。
自分の居場所を奪われると思ったポールがエリーゼたちを排除しようとするのは父親なら想像できたはずだ。
だが、気になることがあった。
「じゃあ、どうしてシャトンを身籠もったの?」
「「え?」」
予想外の言葉に実父とエリーゼが驚きの声を漏らす。
まさかそんなことを聞かれるとは思わなかったのだろう。
「シャトンを身籠もったということは、そういう仲になったってことでしょう? 父上のエリーゼさんを守りたい気持ちは本当だと思うけど、そういう感情がなかったとは思えないな」
「えっと・・・・・・」
実父は顔を赤らめ、言葉に窮する。
子供にそんなことを聞かれ、何と答えて良いのかわからないのだろう。
こんなことを聞く俺も悪いが、質問されるような状況にした相手も悪い。
「ポール君、ごめんなさい」
「はい?」
エリーゼさんが突然頭を下げる。
いきなりの謝罪の意味が分からず、首を傾げてしまう。
「今の私たちは愛し合っているけど、その当時は別にそんな感情はなかったの」
「どういうことですか?」
予想外の言葉に思わず聞き返してしまう。
愛し合っていないのに、どうしてシャトンを身籠もったのだろうか?
まさかもっと爛れた関係で・・・・・・
「ヴァイス侯爵家に来てから1ヶ月経った頃、エデル様の私室で一緒にお酒を飲んだの。何か問題がないか、色々と話を聞いてくださったの」
「はぁ」
思わず気の抜けた声を漏らしてしまう。
まだ爛れた関係の線が消えていない。
思わず警戒してしまう。
「話も進み、私は旦那──エデル様の兄のことを思い出して泣いてしまったわ。そんな私をエデル様は優しく慰めてくれたの」
「まあ、当然ですね」
「その優しさにくらっときて、酔ってたのもあってそのまま・・・・・・」
「・・・・・・」
流れに身を任せたというわけか。
まあ、批判するようなことではないな。
お互いに愛する人を失った空虚な心を埋めたかったのだろう。
そんな事情を知らないポールからすれば、父親の裏切りに思えたのだろうが・・・・・・
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