第33話 悪役豚貴族は自分の計画を伝える
(ガッ)
「ふざけるなっ! 一体、どういうつもりだっ!」
いきなりシオンに胸ぐらを掴まれる。
少し首が絞まり、息が苦しくなる。
魔力切れの気絶の後なので止めて欲しい。
「何のことだ?」
「お前の報酬についてだよ。じゃあ、何のために戦っていたんだよっ!」
彼の立場からすれば、馬鹿にされていると思ったのかもしれない。
追い出そうとした相手が自ら追い出されようとしているのだ。
自分の行動がまったく意味がないと思ったのだろう。
「勘違いするな。俺の報酬とシオンの報酬はまったく別物だよ」
「何?」
俺の言葉に怪訝そうな表情を浮かべるシオン。
まったく意味が分からないのだろう。
他の者達も理解できていないようなので、仕方なく説明を続ける。
「俺の報酬の中で最も重要なのは「2年」という期間だ」
「期間だと? 結局追放されるんなら、そんなことは関係ないだろ」
シオンにとって、「追放」という部分の方が重要なようだ。
まあ、彼の考え方なら当然だろう。
だが、それは俺の考え方とは違う。
「関係はあるさ。2年後、俺は10歳になる。10歳になったら、冒険者として登録できるからな」
「冒険者?」
さらに意味が分からないといった表情をするシオン。
いきなり出てきた冒険者という言葉に困惑している様子だ。
「つまり、自分で稼ぐことができるようになるまで、この家にいたいと言うわけだな」
「そういうことです。正確に言うと、2年の間に冒険者として活動するための知識と実力を準備するつもりでした」
実父は俺の報酬の意図に気づいたようだ。
セバスも納得した様子だった。
女性陣はまだ理解できていないようだ。
「ふむ、悪くない計画だな。侯爵家にある図書室には様々な本があるから、知識を得るには申し分ない。訓練も行っているようだから、しっかり準備もできそうだな」
実父は状況を正確に分析する。
侯爵家の当主なだけあって、頭の回転はかなり早いようだ。
俺の意図をほとんど当てている。
「何を言ってるんですかっ!」
そんな実父の様子に継母が口を挟む。
この状況で彼女が何を言うのだろうか?
「ポールは2年経っても、まだ子供ですよ? 冒険者なんて危険な職業につかせるわけにはいかないでしょう」
「冒険者は10歳から登録することができる。ならば、問題はないだろう」
「問題はあります。ポールは侯爵家で貴族としての教養を学び、血を繋ぐ義務があるはずです。そんな危険なことをさせるわけにいかないです」
「それはそうだが・・・・・・」
継母の剣幕に実父は言葉を詰まらせる。
貴族としては、彼女の言い分の方が正しい。
だからこそ、何も言い返せないのだ。
「私は認めませんよ。この家の女主人になったのですから、ポールを立派な大人にするのも私の役目です」
彼女は自分の胸に手を当て、はっきりと宣言した。
その考え自体は素晴らしいことである。
前世でも、再婚相手の連れ子に対して愛情を持てず、悲しい事件が起こったニュースが流れることがある。
もちろん、全員がそうではないのはわかっている。
だが、一定数いるのもまた事実である。
この家の状況──いや、ポールの今までの行動からそうなってもおかしくはないと思っていた。
だが、彼女は違うようだ。
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