第4話 悪役豚貴族は料理長に提案する
「何用ですかな、ポール様?」
髭面強面の屈強な男が見下ろしながら話しかけてくる。
彼はヴァイス侯爵家の料理長コッホである。
現在、俺はこの屋敷の調理場にいた。
ダイエットのための食事を頼むためである。
だが、それは非常に難しいミッションであることが改めて認識させられる。
(((((・・・・・・)))))
調理場にいる料理人達の視線が俺に集中している。
もちろん、良い意味ではない。
ほとんどが敵意の視線を向けていたのだ。
まあ、今までのポールの行動を考えれば、仕方のないことだろう。
「少し頼みたいことがあってね」
「頼みたいこと、ですか? 我々はただの料理人ですので、残念ながら解決できないでしょう」
まだ内容も話していないのに断られてしまった。
どれだけ嫌われているのだろうか?
でも、俺もここで諦めるわけにはいかなかった。
「今後、俺の分の食事は作らなくて良い」
「ですから、解決できないと・・・・・・は?」
断ろうとしたコッホが呆けた声を漏らす。
予想外の提案だったのだろう。
周囲の料理人達もザワザワとしていた。
「どういうつもりですか? 我々の料理に何か文句でもあるのですか?」
睨み付けながら、コッホが質問してくる。
料理人としての誇りを汚されたと思ったのだろう。
正直、こんな屈強な髭面強面に睨み付けられたら、ちびりそうなぐらい恐怖を感じてしまう。
だが、俺は目線を逸らさずに話を進める。
「安心してくれ。別に料理に対する文句はないよ。丁寧に作られた料理はどれも一級品だろうよ」
俺は本心から褒め言葉を告げる。
共有しているポールの記憶から、この屋敷の料理の味に対する不満はなかった。
量に関する不満や間食を作らなかった事への不満はあるようだが、料理人達の腕に関しては高く評価しているようだった。
まあ、それを口にしてはいなかったようだが・・・・・・
「では、どうしてこのような提案を?」
コッホは怪訝そうな表情で聞いてくる。
褒められたのであれば、もっと食べたいと言うのが普通である。
拒否される理由がわからないのだろう。
「一言で言うと、美味しすぎるのが問題だな」
「美味しすぎる、ですか?」
首を傾げるコッホ。
内容が明らかに褒めているから余計にこんがらがっているのだろう。
「美味しすぎるからこそ、俺は今まで際限なく食べまくってしまった。その結果がこのだらしない身体なわけだ」
「・・・・・・」
ジョークを交えながら伝えたが、残念なことにコッホは笑ってくれなかった。
他の料理人達も同様であった。
俺に対して警戒心があるからだろう。
まあ、このまま話を続けよう。
「とりあえず、今後は俺のメニューを鶏むね肉、ブロッコリー、卵、トマトの4種で用意してくれ」
「わざわざ我々に無駄な調理をさせるのですか? それに一人だけ別メニューになると他の方々にあらぬ疑いをかけられるのでは?」
提案を聞いたコッホはさらに怪訝そうな表情になる。
まあ、明らかにおかしな提案なのは自覚している。
だが、この食材たちは筋トレ時代によく食べていたものである。
「別に調理をする必要はない。いや、鶏むね肉とブロッコリーは茹でてくれ」
流石にその二つを生で食べるのはきつい。
鶏肉はあたる可能性があるし、ブロッコリーは下ごしらえをしないと硬い。
調理は必要である。
「あと、別メニューは自室でとるつもりだから、あらぬ疑いをかけられる心配はないよ」
目の前で比べなければ、疑われる心配はないだろう。
あっちも嫌っているポールと食事を共にしないことで清々するはずだ。
「我々に自室まで運べ、と?」
「いや、その必要はない。朝と晩に自分で取りに行くから」
「は?」
俺の提案にコッホは驚いた声を漏らす。
それほど突拍子もない提案だったんだろう。
普通の貴族令息が自分の食事をわざわざ調理場に取りに行くことはあり得ない。
最低でも、使用人の誰かに運ばせるはずだ。
信じられないのも無理はないだろう。
「今の俺には調理場への行き来だけでも良い運動だ。問題ないだろう」
「・・・・・・そんなことをすれば、専属の使用人が罰せられますよ」
「もう俺の専属はいないから、その心配はない」
フィエラはすでに他の場所で働いているだろうから、食事を自室まで運んでくれる者はいない。
なので、俺は自分で取りに行かないといけないのだ。
「どういうつもりですか?」
これだけ説明しても、まだ疑念が晴れないようだ。
まあ、それだけポールが今までやらかしてきたのだろう。
さて、どうやって提案を受けてもらおうか・・・・・・
ダイエットには食事も大事ですよね。
とりあえず、痩せるのに良さそう且つ異世界にありそうな食材をピックアップしました。
あと、ブロッコリーは生でも食べられるらしい。
栄養的にも効率的にらしい。
ただしっかり洗うのと消化への負担があるらしいので、湯がきました。
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