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第3話 悪役豚貴族はダイエットを決意する


 セバスとフィエラが部屋から立ち去った。

 あそこまで言えば、彼女は悪いようにはされないだろう。

 むしろ、ポールからの被害者ポジションで周囲から甘やかされるかもしれない。


「とりあえず、立つか・・・・・・あれ?」


 右手を地面につき、立ち上がろうとした。

 だが、うまく立ち上がることができなかった。

 思わず鏡の方を向く。

 そこにいたのは──


「豚?」


──見るも耐えない姿の俺だった。

 悪役豚貴族と呼ばれているので、当然の姿ではあった。

 共有している記憶で現在の年齢が8歳であるとわかったが、よくもまあこんなだらしない姿になったものである。


 だが、それも仕方がない話でもある。

 ポールは侯爵家の嫡男ではあるが、決して恵まれた生い立ちではなかった。

 母親は現侯爵の前妻、既に亡くなってしまっていた。

 それは彼が2歳の頃の出来事で、そこまで記憶には残っていなかったようだが・・・・・・


 その後、3歳の頃に現侯爵は再婚した。

 平民出身の上、ポールと同じ年齢の息子──シオンがいた。

 その再婚に周囲は困惑したようだが、それはポールも同じだった。

 今まで彼が侯爵家唯一の嫡男であり、その恩恵を享受できる唯一の子供だった。

 それがいきなり現れたポッと出の子供にわけないといけなくなったのだ。


 当然、今まで甘やかされたポールはシオンとその母親に嫌がらせを始めた。

 だが、二人はその嫌がらせに反抗せず、受け入れてすらいた。

 そんな生活が続き、ポールが4歳になった頃にある事件が起きた。

 後妻が妊娠し、長女を出産したのだ。

 侯爵家の全員が長女に対してべったりになった──ポール以外は。

 そのことに怒りを覚えた彼は長女を害そうと考えてしまった。

 半分とはいえ自分の妹にあたる少女を、だ。

 記憶を共有している俺でも外道な行為だと思う。

 しかし、子供だった彼にはそうするしかできなかったのだ。

 もちろん、その計画はあっさりと失敗に終わった。

 ポールの異変に気づいたシオンがすんでのところで割って入り、顔面を殴り飛ばしたのだ。

 その一見で侯爵家でのポールの立場は地に落ちた。

 侯爵家嫡男としての立場を残っているが、ほとんどの使用人は彼と関わるのを避けるようになった。

 父親も見限ったように関わるのをやめたようだ。

 唯一、家族が揃うのは食事の時ではあるが、その時ですらまるで針のむしろだった。

 こんな生活をしていれば、ポールが悪役に落ちるのも当然だろう。

 そのストレスがグータラな生活につながり、だらしない身体にもなってしまったわけだ。


「まずはダイエットだな」


 とりあえず、現状すべきことを確認する。

 こんな体格では生活習慣病に待ったなしである。

 いや、そもそも床に手を突いた状態で立ち上がれないのはかなり問題だろう。


「よいしょ、と」


 ゴロンと仰向けになった状態で転がる。

 うつ伏せになった状態から立ち上がることはできた。

 だが、いちいちこんなことをするのはかなり面倒である。

 痩せることは絶対に必要である。


「身体を動かす前にまずはあそこに行くか」


 俺は目的地を思い浮かべる。

 ダイエットとして一番最初に思い浮かぶのは運動である。

 もちろん、痩せるためには必要な行動である。

 だが、今のこの体型でどの程度運動できるかがわからない。

 下手すれば、少し運動しただけで動けなくなる可能性もある。

 その前にやらなければいけないことがある。

 俺は重い身体を動かし、部屋から廊下に出た。

 それだけで汗だくになってしまったが・・・・・・







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