第31話 悪役豚貴族は義弟と決闘する 3
「三本目、はじめっ!」
実父が宣言する。
これで勝とうが負けようが結果が決まる。
「【ファイアボール・ロット】」
シオンは自身の周りに火の玉を生み出す。
一斉にではなく、順番に俺に向かって撃ってくる。
先程の戦いで俺からの反撃を恐れての行動だろう。
石の壁を使うことで動きを制限できても、破壊されて反撃される可能性があるのだ。
下手に魔法を放つことができないわけだ。
(ヒュッ、ヒュッ)
火の玉だけなら、回避することは難しくない。
だが、俺が避けることは相手も考えているはずだ。
一体、どういう風に攻めてくるのだろうか?
(ヒュッ、ヒュッ)
「?」
だが、一向に新たな攻めが来ない。
まさかこれ以上は何もできないのだろうか?
疑問に思った俺は周囲を見渡す。
「かかったな」
「っ⁉」
ようやくシオンの意図に気がついた。
俺の周囲には大量の火の玉が浮かんでいた。
先程からずっとシオンが放っていた【ファイアボール】である。
それらが俺を取り囲むように位置しているのだ。
どこに逃げようが、死角から俺に向かうようになっている。
「これでとどめだっ!」
俺に考える暇を与えないためか、即座にシオンが【ファイアボール】を操作する。
これだけの魔法を一斉に操れるのは彼が天才であるが故だろう。
普通なら、この状況で詰みだろう。
「【身体強化】」
だが、俺はまだ打開する手段があった。
【全体強化】でシオンに向かって駆け出した。
ギリギリのところで【ファイアボール】の囲いから抜け出すことができた。
「それも読んでたよ。【ファイアランス】」
「っ⁉」
接近する俺に向かって、シオンが炎の槍を放ってきた。
火属性初級魔法の【ファイアランス】である。
【ファイアボール】と違って、貫通性を上げた魔法である。
威力が上がった反面、魔法が凝縮している性質から接触面積が小さくなり、命中率が下がる欠点がある。
だが、この状況では効果的だった。
勢いよく駆け出したせいで、俺は方向転換をできなかった。
その身で受ける必要があり、直撃は避けられないわけだ。
「くっ・・・・・・おらぁっ!」
(バシッ)
「えっ⁉」
苦し紛れに右手に魔力を集め、勢いよく振るった。
右手が【ファイアランス】に横からぶつかった瞬間、その軌道が逸れてしまった。
目の前の光景にシオンは驚愕の表情を浮かべた。
これはチャンスである。
そう思った俺は再び全身に魔力を流そうと──
(ガクッ)
「っ⁉」
いきなり全身の力が抜けるように感じた。
この感覚には覚えがある。
【魔力切れ】である。
戦いに集中しているせいで、残りの魔力量に気が回らなかった。
このままでは俺の負けである。
(ガッ)
「「えっ⁉」」
【魔力切れ】で倒れそうになった矢先、右足が地面のへこんだところに引っかかった。
先程まで走っていた勢いのせいで全身が宙に投げ出され、そのままシオンの方に向かっていく。
その状況に俺もシオンも呆けた声を漏らしてしまった。
((ドオオオオンッ))
そのまま俺たちは勢いよく交錯し、絡み合うように転がっていった。
【魔力切れ】のせいで上手く身体が動かせず、受け身を取ることができなかった。
「──っ!」
少し離れたところから実父の声が聞こえてきた。
だが、そのまま意識を失ってしまったので、なんて言ったのかわからなかった。
ついに決着です。
作者のやる気につながるので、読んでくださった方は是非とも評価やブックマークをお願いします。
★5でも★1でもつけていただけると幸いです。




