第30話 悪役豚貴族は義弟と決闘する 2
「2本目、はじめっ!」
状況を戻し、父親が再び宣言する。
「【身体強化】」
再び【全体強化】をかける。
先程と同じ流れである。
「どうせそれしかできないんだろ。【ファイアボール・ロット】」
シオンの周囲に複数のファイアボールが浮かぶ。
一斉に俺に襲い掛かってくる。
(ダッ)
ファイアボールを回避するために俺は駆け出す。
一つ一つはそこまでのスピードではない。
先程とは違って、余裕を持って回避できた。
だが、この行動はシオンにとっても予想通りだったのだろう。
「【アースウォール】」
先程と同じ流れで土の壁が生み出される。
俺の進行方向と右側と背後──シオンに向かった面だけが開かれている状態である。
そこに再び【ファイアボール】をぶち込む算段なのだろう。
俺はそれを読んでいた。
「しっ」
(ボゴッ)
「えっ⁉」
突然の行動にシオンが驚きの声を漏らす。
いきなり進行方向の壁を俺が右手で殴りつけたからである。
狂ったのか、そう思ったのかもしれない。
だが、俺の精神は正常だった。
(ゴロッ)
めり込んだ右手が壁からこぶし大の土の塊を取り出した。
【部分強化】を行うことで壁を破壊し、土の塊を作り出したのだ。
「【全体強化】、おらあっ」
(ブンッ)
今度は【全体強化】をした状態で土の塊を放り投げる。
野球の球ほどの速度は出ていないが、8歳の子供にとっては驚異的な速度だろう。
(ボゴッ)
「かはっ⁉」
土の塊が腹部に直撃し、シオンが苦しげな声を漏らす。
お腹を押さえながら、その場にうずくまった。
「一本!」
実父は高らかに宣言する。
審判は公平にしてくれるようだ。
いくら改善されたとはいえ、嫌っているポールよりシオンを贔屓にする可能性もあったので安心した。
歩み寄ろうとしてくれているみたいだ。
「いけるか、シオン?」
「もち、ろんだよっ!」
まだダメージが残っているだろうに、シオンは気合いで立ち上がった。
魔法使いタイプなので、彼はそこまで耐久が優れているわけではない。
なので、これで終わりだと思っていたが、予想は外れてしまった。
「次は僕が勝つぞ」
「・・・・・・」
ギロリと睨み付けられ、俺は何も言えなかった。
彼にここまで敵意を向けられ、改めてポールが嫌われていることを自覚したからだ。
だが、俺もここで負けるつもりはない。
2本目はポールの勝利です。
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