第29話 悪役豚貴族は義弟と決闘する 1
「では、1本目はじめっ!」
実父が右手を挙げ、高らかに宣言する。
「【身体強化】」
魔力を循環させ、【全体強化】を行う。
まずは動けないと意味がないからである。
「【ファイアボール】」
シオンは右手から手のひらサイズの火の玉を放つ。
8歳の少年なので、これぐらいが普通なのだろう。
あんな暴走をさせたシャトンが規格外なだけだ。
(シュッ)
見え見えの攻撃だったので、あっさりと回避する。
そのまま距離を詰めて、1本目を奪おうとした。
「【ファイアボール・ロット】」
「っ⁉」
だが、目の前の光景に俺は中断を余儀なくされた。
シオンの周りには大量の【ファイアボール】があったからだ。
両手で数えられないほどだった。
「ちぃっ」
襲い掛かってくる【ファイアボール】をなんとか回避する。
そういえば、シオンは【MGF】では坂ざまな属性の魔法を使ってに戦うキャラクターだったはずだ。
ポールが迷惑を掛けたという理由で主人公の仲間になり、同じ平民出身ということで意気投合していたはずだ。
最終的に魔王軍に寝返ったポールの身内であることから仲間から離れようとするが、それを主人公が引き留めるのは感動した。
だが、敵となった今ではそんな暇はない。
「【アースウォール】」
(ズズッ)
「っ⁉」
いきなり目の前に巨大な土の壁がせせり出す。
高さは大体2mぐらいだろうか?
成人男性ならなんとか越えることもできるだろうが、8歳の身体では【身体強化】をしたとしても難しいだろう。
しかも、それを俺の進行方向と右側と背後に作られた。
「【ファイアボール・ロット】」
(ドドドドドッ)
「うわぁっ⁉」
唯一開いていた左側から大量の【ファイアボール】が流れ込む。
すべての進行方向を潰された俺は【ファイアボール】に蹂躙され、悲鳴を上げてしまった。
「かはっ」
「一本!」
地面に膝をつく俺を見て、実父は再び右手を挙げた。
今度はシオンの勝利を宣言するためである。
「どうした? 所詮はこの程度かよ」
倒れる俺を見て、シオンが馬鹿にしたように声を掛けてきた。
まだ本編が始まる前だからと甘く見ていた。
シオンの設定に【天才魔法使い】という異名があったのを思い出した。
大した実力のないポールと対になるように──いや、ポールが闇落ちする理由となるためにそんな設定になったのだろうか?
「まだやれるか?」
「もちろん」
心配気に実父が話しかけてくるが、俺はあっさりと答える。
直撃はしたが、所詮は【ファイアボール】である。
大きなダメージはないので、まだまだ戦える。
さて、どう反撃しようか?
1本目はシオンの勝利です。
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