第23話 悪役豚貴族は魔法の危険性を知る
「熱っ⁉」
あまりの熱気に思わず叫んでしまった。
非現実的な炎だが、どうやら本物のようだ。
「暴走です、ポール様」
「暴走?」
聞き慣れない言葉に聞き返してしまう。
だが、あまり良くない意味であることは聞かなくても分かった。
「感情の高ぶりによって魔力が操作できていないんです。とても危険な状態です」
「なるほどな」
フィエラの説明を聞き、状況はすぐに理解できた。
まさに今のシャトンの状態そのものである。
おそらく先程俺が拒絶したことにより、彼女の感情を昂ぶらせてしまったのだろう。
天才だから故、魔法を使えるのも逆に禍となった。
怒りの感情が炎となったわけだ。
「すぐに誰か呼びましょう」
「いや、そんな暇はないようだ」
「え?」
フィエラは助けを呼ぼうとする。
だが、状況がそれを許さない。
「あぁ・・・・・・熱い・・・・・・」
炎の中でシャトンが苦しんでいた。
これだけの炎の中にいるのなら、熱いのも当然だろう。
いや、本来ならば自分で操作する魔法なら熱さなど感じないはずだ。
だが、操作できていない暴走状態の炎なので、彼女に牙をむいているわけだ。
「ふぅ」
「ポール様、何をするつもりですか?」
大きく息を吐くと、フィエラが声を掛けてくる。
俺の落ち着いた様子に違和感を覚えたのだろう。
実際はかなり慌てているが、この状況を解決するために精神を落ち着けているだけだ。
「シャトンを助けてくる」
「止めてください。危険です」
あっさりと否定された。
別に彼女の選択が悪いわけではない。
シャトンを助けたいという気持ちは彼女も持っているだろう。
だが、俺の安全も考えてくれての判断なわけだ。
「あんなに苦しんでいるのに、見捨てるわけにはいかない」
「ですが、ポール様では辿り着く前に・・・・・・」
「そんなのやってみないとわからないだろう。【身体強化】」
「あっ⁉」
話を切り上げ、俺は【身体強化】を発動する。
選択したのは【全体強化】である。
あの炎の中に入ってしまえば、確実に身体を焼かれてしまう。
【部分強化】では、強化できていない箇所のダメージが大きくなるだろう。
【全体強化】を選ばざるをえないわけだ。
「うぅ・・・・・・」
炎の中でシャトンが苦しんでいる。
その姿に心が痛む。
彼女の提案を拒否したことは間違っていないと思っている。
俺自身のことを考え、最適の判断をしたつもりだ。
だが、断り方は考えた方が良かったのかもしれない。
その結果がこの暴走につながったからである。
「今、助けてやるからな」
彼女の苦しげな姿を見て、思わずそう呟いた。
意を決して、炎の中に飛び込んだ。
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