第19話 悪役豚貴族は義弟に敵意を向けられる
「シャトン、こんな所に居たのか」
「ん?」
いきなりの声が聞こえてきたので、その方向に振り向く。
そこには1人の少年がいた。
年齢はポールと同じくらいだが、どこか中性的な雰囲気を醸し出しているので見た目はまったく違う。
「どうしたの、シオン兄様?」
声を掛けられたシャトンが反応する。
この美少年は彼女の兄──シオン=ヴァイスである。
俺の義弟にもあたるが、彼はそれを認めないだろう。
「・・・・・・シャトンに何の用だ?」
完全に敵意を向けられていた。
まあ、ポールが引き起こした過去の一件のせいで仕方のないことだ。
「別に用はないさ。家族なんだから、話してもおかしくはないだろう」
脅されたので一緒にいるだけだが、そんなことは言う必要はないだろう。
それらしい言い訳を口にする。
「はっ、あんたが今更家族だと? 馬鹿も休み休み言えよ」
「・・・・・・」
この反応は想像していたが。ここまで敵意を向けられるのは意外と精神的にくる。
正直、家族としての関係を良好にするのは不可能だと感じさせる。
「あんたがシャトンにしようとしたこと、忘れたとは言わせねえよ。二度とシャトンに近づくんじゃねぇ」
「ああ、わかったよ」
相手の言い分をあっさりと受け入れる。
ここで反論すれば、面倒になることは確実だろう。
そもそも俺から近づこうとしたわけじゃない。
「行くぞ、シャトン。こんな奴に近づいたら、お前に危険が及ぶ」
「し、シオン兄様っ!」
無理矢理手を引っ張られ、シャトンは連れて行かれてしまった。
【身体強化】を使えば引き剥がせそうだが、この状況でそんなことはできなかったのだろう。
おそらく彼女は魔法を使えることを隠している。
危険だからと使用を禁止される可能性があるからだ。
まあ、彼女のためにはその方がいいかもしれない。
「「・・・・・・」」
シオンとシャトンが屋敷に戻り、俺とフィエラがこの場に残っている。
なんとも言えない空気にどうしたらいいかわからなかった。
「あの、よろしいですか?」
「なんだ?」
そんな中、フィエラが口を開く。
この状況で何が聞きたいのだろうか?
「私がこの屋敷に勤め始めたのは最近なので詳しく知らないのですが、どうしてポール様はこんなに嫌われているんですか?」
「はっきりと言うなぁ」
「す、すみません」
あまりの直接的な言葉に思わず反応してしまう。
自分の失言に気づいたのか、彼女は何度も頭を下げてくる。
「別に良いよ。事実だからな」
「そうなんですか? 私にはポール様が嫌われる理由がわからないのですが・・・・・・」
俺の言葉にフィエラは納得いかないようだ。
彼女の知っているポールはほぼ俺である。
本来のポールのことはあまり知らないだろう。
だからこそ、過去に彼が引き起こした悪行について伝えなければいけないはずだ。
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