第17話 悪役豚貴族は【身体強化】の説明を聞く
「まったく無茶をして・・・・・・」
「いや、説明をしていないフィエラにも非があるだろ」
治療をしてくれるフィエラに文句を言う。
言われたとおりに行動した俺も問題だが、事前に説明をしていれば痛い思いをせずに済んだと思う。
「普通はいきなりあんな勢いで殴りませんよ」
「・・・・・・」
彼女の指摘に何も言えなくなる。
たしかに勢いよく殴りすぎた気がする。
そこは俺に非があるな。
「ですが、【身体強化】の効果は実感できたと思います。どうでしたか?」
「ああ、凄かったよ」
素直な感想を口にする。
岩に小さいクレーターを穿ち、その威力の反動も思ったより酷くはない。
骨にひびは入っておらず、せいぜい皮膚が切れている程度である。
「とりあえず、【部分強化】を自在に行えるようにしましょう」
「ああ、わかった」
フィエラの指示に俺は頷いた。
火や風を扱うようなファンタジーっぽい魔法ではないが、これも一種のファンタジーに感じる。
訓練に対するモチベーションになる。
「ちょっと良いかしら?」
「ん?」
だが、訓練を再開しようとした矢先、出鼻を挫かれてしまう。
声を掛けてきたのはシャトンだった。
「どうして【部分強化】から訓練を行うの?」
「それは各部位で【身体強化】を行うことで、実践的に身につけることができます」
シャトンの質問にフィエラははっきりと答える。
おそらく彼女が今までやってきたからこそ説明ができるのだろう。
理論については擬音ばかりでまったく分からなかったが・・・・・・
「今のお兄様には【部分強化】より【全体強化】の方が必要だと思うわ」
「どういうことだ?」
シャトンの説明を聞き、俺は首を傾げる。
どうして彼女は【全体強化】とやらを勧めるのだろうか?
「もちろん、単発で強力な攻撃を行える【部分強化】が重要なのはわかっているわ。でも、今のお兄様に【部分強化】を効果的に扱えるとは思えないわ」
「・・・・・・馬鹿にしているのか?」
「違うわ。【部分強化】で一部だけ強化することによって、他の部分との差をつけてしまうことになるの。その差が身体の負担を大きくすると思うの」
「・・・・・・なるほど」
彼女の言いたいことはよく分かった。
俺の体型は肥満なので、元々の身体能力は決して高くない。
それを【身体強化】で無理矢理一部分だけ強化してしまう。
その結果、他の部分との差ができてしまい、身体に負担になってしまうわけだ。
たしかにその通りである。
「ですが、ポール様はまだ【全体強化】を継続できるほどの魔力がありません」
「それは徐々に増やしていけば、良いんじゃないかしら? 訓練をしていけば、保有魔力は増えていくでしょ?」
「それはそうですが・・・・・・」
フィエラはシャトンに言いくるめられる。
感覚派のフィエラは理詰めに弱い。
シャトンの説明はしっかり理に適っており、非の打ち所がなかった。
もしかすると、彼女は天才なのかもしれない。
「別に貴女の訓練方法を否定するつもりはないわ。獣人だからこそ、その訓練方法が合っていたんだと思うわ。でも、それが人族に必ずしも合うわけじゃないと思うの。お兄様なんて特に、ね」
「そうですね。では、シャトン様のおっしゃるとおりの訓練にさせていただきます」
「ごめんね。外野が色々と言って」
「いえ、私も至らないところがありましたので」
2人は喧嘩することなく、和解してくれたようだ。
だが、途中で俺を馬鹿にするのはやめて欲しかった。
事実ではあるが、もう少しオブラートに包んでくれてもいいんじゃなかろうか?
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