第16話 悪役豚貴族は初めて魔法を使う
「そういえば、ポール様はまだ魔法を使ったことがないんですよね」
「ああ、そうだ。というか、使えたとしても初心者にさせるような技術じゃないだろ、あれは」
先程のフィエラの例を思い出す。
落ちてくる石を素手で斬る。
どこまで訓練したら、そんな芸当ができるようになるのだろか?
前世でも素手で瓦を割る映像を見たことがある。
だが、あれはあくまでも割っているだけである。
断面を綺麗に斬ることなどできるわけがない。
まあ、割るだけでも十分凄いとは思うが・・・・・・
「では、まず魔法を発動させる方法ですね。とりあえず、手に魔力を集中させていただけますか?」
「ああ、わかった」
言われたとおり、右手に魔力を集中させる。
とりあえず、1割程度の魔力が右手に集まっている。
「だいぶスムーズになりましたね」
「昨日、あれだけ訓練したから当然だろう」
「それもそうですね。では、次に想像してください」
「想像?」
思わず首を傾げてしまう。
何を想像すれば良いのだろうか?
「とりあえず、自分がしたいことです」
「したいこと、と言ってもわからないな」
「今回の場合は【身体強化】に関することですね」
「【身体強化】に関すること、か・・・・・・硬くすることかな?」
説明を聞いて、頭の中に思い浮かべる。
イメージとしてはギュッと拳を握りしめる感じだろうか?
握りこぶしは硬いイメージがある。
(グググッ)
「ん?」
頭でイメージしたせいか、右手で自然と拳を作っていた。
魔力を流しているせいか、どこか強い雰囲気を纏っていた。
「できたようですね」
「え?」
フィエラが淡々と話を進める。
まさかできているとは思わず、驚きの声を漏らしてしまう。
そんな俺の様子を余所に彼女はさらに話を進める。
「では、そのままあの岩を殴ってください」
「はい?」
彼女が指さしたのは、そこそこ大きな岩だった。
高さは俺と大差ないぐらいで、大人でも持つのに苦労する大きさだろう。
当然、今の俺が動かすことなどできるはずがない。
殴ったとしても悲惨な未来が予想できる。
「早くっ!」
「っ⁉」
フィエラに急かされ、俺はその場を駆け出した。
右腕を大きく振りかぶる。
左足を前に踏み出し、左手を引きながら身体を回転させる。
その勢いで右拳が放たれた。
(ドゴオッ)
右拳がぶつかった瞬間、岩に拳より少し大きなクレーターができた。
まさか殴っただけでこんなことができるとは思わなかった。
だが、そんなことはどうでも良かった。
「いってえええええっ!」
右拳の激しい痛みに思わず叫んでしまった。
ビリビリと走る痛みに目から涙がこぼれ落ちる。
これ、骨が折れていないか?
以前に殴られたときよりも痛い気がする。
「ぽ、ポール様っ⁉ やりすぎですよ」
「や、やる前に言ってくれよ」
心配そうなフィエラの言葉に弱々しく反論する。
彼女が急かしたから、こんなことになってしまったのだ。
だが、あまりの痛みに俺は反論する気力もなかった。
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