第14話 悪役豚貴族は幼い妹の末恐ろしさに気づく
「魔法に興味があるのか?」
「うん」
俺の質問にシャトンは元気に答える。
たしかに子供からすれば、魔法なんてファンタジーな技術は興味が惹かれるだろう。
俺も子供の頃は物語に出てくる魔法に憧れたりもした。
「それはいいことだ。だが、俺から教えられることはないな」
「なんで?」
シャトンは悲しそうな表情を浮かべる。
可哀想ではあるが、こういうしかなかったのだ。
「まず、俺はまだ魔法を使えない。せいぜい魔力の操作ができるだけだ」
「でも、私より知識はあるよね」
教えられる段階に達していないことを伝える。
だが、彼女は自分よりは知識があることを理由に挙げる。
それも大したことはないが、何も知らない彼女より優れているのは事実か。
「次に俺の訓練方法は我流だ。下手なやり方をするよりはきちんとした人に習う方がいいはずだ」
「まだ私は4歳なの。だから、教えてくれる人はいないわ」
この世界で魔法の訓練を始めるのは大体6歳になってからである。
基礎的な知識はもう少し前から学び始めるが、ある程度の知識を得てから魔法の訓練は始める。
そうしないと、危険な魔法の訓練をやらせるのは不安だからだ。
大体というのは、基礎的な知識の習熟度によって開始が前後するからである。
ちなみに、以前のポールはまったく勉強をしてこなかったので、魔法の訓練は開始すらしていなかった。
「魔法の訓練はかなり危険だ。まだ4歳の子供にはさせられない」
「兄様だって、まだまだ子供じゃない」
「俺はもう8歳だ。魔法の訓練をしても問題はない」
子供ではあるが、俺は魔法の訓練をしていてもおかしくはない年齢である。
それが彼女との違いである。
だからこそ、諦めてもらえると思っていたが・・・・・・
「訓練は我流なんでしょ?」
「ああ、そうだが・・・・・・」
「だったら、かなり危険だと思うわ。そんな訓練をさせるなんて、周りはどう思うかしら?」
「むっ」
シャトンの指摘に俺は言葉を詰まらせる。
彼女を諦めさせるための理由が俺の首を絞めようとしてくる。
「じゃあ、お父様に言おうかしら? 兄様が危険な魔法の訓練をしている、って」
「それはやめてくれ」
思わず止めようとする。
父親は俺に対して興味はないだろうが、流石に危険な真似はさせてくれないだろう。
俺が何かやらかしたとき、被害を受ける可能性があるからだ。
そうなれば、魔法の訓練をすることはできない。
それだけは絶対に避けたい。
「はぁ・・・・・・何が望みだ? 魔法の訓練をするのは絶対に無理だぞ」
大きくため息をつき、左手で頭を押さえる。
まさか妹に脅されるとは思わなかった。
といっても、魔法の訓練をさせられないのはこちらも譲れない。
もし、彼女の身に何かあれば、俺の居場所は完全になくなってしまうだろう。
害意があって彼女を傷つけたのであれば、追い出されても仕方がない。
だが、ただの事故で追い出されるのだけは避けたい。
「譲れないものがあるのはわかったわ。だったら、兄様の魔法の訓練を見せて欲しいの」
「何?」
予想外の提案に怪訝そうな表情になってしまう。
一体、何が目的なのだろうか?
「最近の兄様って、色々楽しそうなことをしているでしょ?」
「まあ、そうだな」
「そんな兄様のことをもっと知りたいの。だから、見学ぐらいはいいでしょ?」
「・・・・・・わかったよ。好きにしろ」
「やった!」
受け入れると彼女は嬉しそうに反応する。
脅されている俺に断る選択肢は用意されていなかった。
幼くとも女性というわけだ。
まったく末恐ろしい。
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