第10話 悪役豚貴族は自然の流れを感じ取る
「では、始めましょうか」
「ああ」
川の中で向かい合った。
深さは膝のあたりまでなので、溺れる心配はないだろう。
「では、魔力の流れを感じる訓練と同じようにしてください。といっても、座らなくて大丈夫ですよ」
「まあ、そうだな」
座ったら、おそらく胸のあたりまで水が浸かるだろう。
普通なら問題はないが、何かあったときに溺れる可能性が出てくる。
そもそも残ったパンツが濡れてしまう。
帰りにノーパンで帰るのは避けたい。
「ふぅ」
目を閉じ、大きく深呼吸をする。
今回は魔力の流れではなく、周囲の流れを感じ取る。
川の流れ、風の流れ、木々の葉っぱの揺れ、小鳥の声──様々な情報が入ってくる。
「・・・・・・」
深呼吸を3回繰り返したあと、周囲への意識を集中させる。
この流れを何度も繰り返していく。
最初はただただそれぞれの情報を得ているだけだが、繰り返していくと徐々に得られる情報が増えていく。
これは感覚が鋭敏になっているということだろうか?
(シュウゥ)
「っ⁉」
身体に意識を向けると、何かが全身を流れているのを感じた。
今までにない感覚ではあるが、不思議と嫌な感じではない。
これが魔力なのだろうか?
「どうやら感じ取れたようですね」
「ああ、そうだな」
俺の様子に何が起きたのか理解したのだろう。
フィエラは笑顔を浮かべていた。
自分の提案した訓練方法が上手くいったことが嬉しいのだろう。
「やはり気と似たような感じなんですね」
「もしかして、同じようなものじゃないのか?」
今までの話を聞いた感じ、似ているというよりは同じもののように思える。
もしかすると、種族によって言い方が違うだけで同じものなのだろうか?
「別物であるのは事実ですよ」
「そうなのか?」
だが、俺の考えはあっさりと否定される。
違うものなのか・・・・・・
「似たようなエネルギーですが、変換される効果に違いがあるんです」
「変換される効果?」
理解できず、首を傾げてしまう。
一体、どういうことだろうか?
「気は身体能力の強化と身体の変化に特化しています」
「ふむ」
「魔力は魔法の放出として使えます。身体強化もできますが、気に比べるとその効果は低いです」
「なるほど」
似て非なるものというわけだ。
似ているからこそ訓練等を代用できるが、完全に同じではないからできることとできないことの差もあるわけだ。
「といっても、まずは魔力の流れを感じ取れないとその違いも意味はありません。訓練を続けましょう」
「そうだな」
彼女の言うことはもっともである。
早く魔法を使うために、魔力の流れを感じ取る訓練を続けよう。
俺は再び目をつぶり、深呼吸を繰り返した。
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