第9話 悪役豚貴族は恥ずかしい思いをする
「はぁ、はぁ」
数日後、俺は息を切らしながら歩いていた。
現代のような舗装された道ではなく、自然の中の獣道のため体力の減りも早い。
「目的地はまだなのか?」
「もうすぐですよ」
先導するフィエラに問いかける。
彼女はまったく疲れた様子を見せていない。
獣人で身体能力に優れているからだろうか?
いや、現実逃避はよそう。
単純に太っているポールの身体の問題である。
いくら痩せたからとはいえ、まだまだ肥満体型である。
身体を動かすだけでかなりのエネルギーを消費してしまう。
「ほら、つきましたよ」
「おぉ」
開けた場所に抜け、目の前の光景に感嘆の声を漏らす。
そこにあったのは川だった。
人間の手が入っていない自然そのままの状態であるためか、なんとも過ごしやすい雰囲気を感じる。
しかし、ここが目的地なのか?
「では、さっそく脱いでください」
「えっ⁉」
いきなりの命令に驚きの声を漏らす。
思わず腕で身体を隠してしまう。
「川の中に入るんですから、脱ぐのは当然でしょう」
「なんで?」
川に入るのは初めて聞いた。
まあ、目的地が川なら当然の行動である。
だが、どうして川に入るのか理由がわからない。
「魔力の流れを感じるための訓練をするためです」
「はい?」
予想外の内容に呆けた声を漏らしてしまう。
魔力の流れを感じる訓練のためなのは今聞いた。
それは良いとして、どうして川なのだろうか?
「これは気の流れを感じる訓練にも使われる方法なんです」
「ほう?」
「川の流れや風、生物の動きを肌で感じ取り、身体を流れる気を感じ取れるようにするのです」
「つまり、流れる感覚を掴むわけか」
ようやく理解できた。
現状、俺は魔力の流れを上手く感じることができない。
元々、全身を流れる血ですら感じることが難しい。
この異世界で新たに知った魔力なら尚更だろう。
だが、外部の流れを感じることで、自らの体内に流れるものを感じ取る礎にするわけだ。
「そういうわけなので、早く脱いでください」
「いや、女性の前で裸になるのは・・・・・・」
目的は理解できたが、だからといって脱ぐのは躊躇してしまう。
いくら子供とはいえ、嫁入り前の女性の前で裸をさらすのは恥ずかしすぎる。
「何を言っているんですか? 脱ぐのは濡れて困るズボンや靴だけですよ」
「・・・・・・そうか」
どうやら恥ずかしい勘違いをしていたようだ。
まあ、考えれば分かる話だった。
川の中に入るのにわざわざ全ての衣服を脱ぐ必要はない。
これは俺が悪い。
「・・・・・・」
言われたとおりに衣服を脱いだ。
万が一、こけたときに濡れるのは困るので上半身も脱いだ。
そして、改めて自分の身体を見て、何も言えなくなってしまう。
お腹についた贅肉で足下が見えない。
早くなくしたいものである。
脱ぐのは恥ずかしいですよね。
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