第8話 悪役豚貴族は父親からの提案を断る
「こちらにおられましたか」
「げっ⁉」
背後から声を掛けられ、思わず嫌な声を漏らしてしまう。
振り向くと、そこにはセバスがいた。
調理場に来ることを反対されていたので、何とも居心地が悪い。
「あぁ、セバス。今回は俺が呼んだから、坊ちゃんを叱らないでやってくれ」
俺の様子に気づいたコッホがフォローしてくれる。
強面であるが、気遣いもできる良い男である。
思わず感動してしまった。
「もちろん、わかっていますよ。ポール様が約束を違えるはずがありませんから」
「そうなのか?」
「ですが、もし約束を違えたときは相応の罰がありますので」
「ひぃっ⁉」
セバスの笑みを見て、悲鳴を漏らしてしまう。
笑顔ではあるが、なぜか恐怖を感じてしまう。
彼の背後に黒いオーラのようなものが見えた気がした。
だが、すぐにそれは消えてしまう。
「ポール様に用件があります」
「用件?」
思わず首を傾げてしまうが、わざわざこんな所にまで俺を探しに来たのだから当然の話だろう。
しかし、どんな用件なのだろうか?
「実は侯爵様より「一緒に食事を取るように」とのことです」
「断る」
反射的に断ってしまった。
俺の様子に周囲は驚きの表情を浮かべていた。
唯一、セバスだけは表情は変わらなかった。
おそらく予想していたのだろう。
「そうでしょうね。では、そのようにお伝えします」
「ああ、頼む」
何事もなかったように話を進めるセバス。
話が早くて助かる。
「ポール様っ⁉ よろしいのですか?」
事情を飲み込めないフィエラが俺に話しかけてくる。
侯爵からの用件を断ったのだから、仕方がない反応である。
「別に良いんだよ、これで」
「良いわけないですよね? もしかして、家族仲を改善しようとしてるのでは?」
彼女の言っていることはもっともである。
おそらくポールの様子が変わったことを噂で聞いたのかもしれない。
反省しているのであれば、受け入れても良いと思っているのだろう。
「この話を受けるべきじゃない」
「どうしてですか?」
「おそらく親父の思いつきだろうからな」
「え?」
理解できなかったのか、フィエラは首を傾げる。
デビもわからないようで、同じような反応をしていた。
「まさにその通りですね。私の報告を聞いて、侯爵様が考えられた案です」
「なるほど。坊ちゃんと一緒に食事をしようとしているのは、あくまで侯爵様だけってことだな」
セバスの話を聞いて、コッホが反応する。
どうやら彼は状況を理解しているようだ。
「どういうことですか?」
「簡単に言うと、奥様とシオン様にはまだ話が通っていない、ってことだ」
「あ」
ここでようやくフィエラも理解したようだ。
ポールと継母&異母弟の関係は非常に悪く、それが原因で俺は食事の場から離れたのだ。
俺も針の筵で食事をしたくないし、向こうも俺と一緒に過ごしたくなかったはずだ。
侯爵の考えに2人が賛同するとは思えない。
「というわけで、断るのが正解ということだ」
「それでいいのでしょうか?」
俺の説明を聞いて、まだ彼女は納得できない様子だ。
家族仲が良い方が良いと考えているのだろう。
もちろん、俺も草は思っている。
だが、何事も例外は存在するのだ。
「・・・・・・」
「ん?」
(サッ)
不意に視線を感じ、入り口の方を振り向いた。
だが、そこにいた人物はすぐに立ち去ってしまった。
誰なのかはわからなかったが、俺は気にしないことにした。
作者のやる気につながるので、読んでくださった方は是非とも評価やブックマークをお願いします。
★5でも★1でもつけていただけると幸いです。




