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鬼畜な悪役豚貴族に転生したので、生きるためにシナリオから逃れます  作者: 福音希望
第二章 鬼畜な悪役豚貴族は家族と交流する
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第7話 悪役豚貴族は食事に対する矜持がある


「なんでそんな提案を?」


 コッホに純粋な疑問を投げかける。

 今まで彼が料理を作ってくれていた。

 正直、かなりレベルが高い料理であり、今後も食べたいと思っているぐらいだ。


「はっきり言わせていただくと、新人教育のためですね。私が作れば常に美味しい料理を用意できますが、それでは他の料理人が育ちません」

「まあ、言わんとしていることは理解できる。だが、本当の理由は?」

「え?」


 俺の返事にフィエラが驚いた表情を浮かべる。

 コッホの理由をそのまま受け入れたのだろう。

 もちろん、先程の話も理由の一端であるのは事実だろう。

 だが、他にも理由はあるように見える。


「流石にわかりますか。デビ、持ってこい」

「はいっ!」


 指示を受け、デビが厨房を駆ける。

 食材を扱う場所なので、もう少し静かに動いて欲しい。

 衛生的な問題で・・・・・・


「お待たせしました」


 少しして、デビが戻ってきた。

 彼は皿を持っており、その上には料理が盛られていた。

 見た感じ、鶏肉と野菜の炒め物のようだな。


「こちらを食べていただけませんか?」

「ん? わかった」


 コッホの頼みを受け入れる。

 皿を受け取り、野菜にフォークを刺して口に運ぶ。


「っ⁉」


 口に入れた瞬間、驚きを隠せなかった。

 思わず鶏肉も口に運ぶ。


「どうです?」


 コッホが問いかけてくる。

 彼の様子から本気で意見を聞きたいように感じる。

 素直な感想を告げよう。


「正直、料理としてのレベルはかなり低いな。鶏肉はパサパサだし、野菜の火の通りもまばらだ」

「やはりそうですよね」

「だが、味付けに関しては素晴らしい。スパイスなどを上手く使っているからか、食欲を掻き立ててくれる」

「でしょう!」


 褒められたことに気づいたのか、デビが会話に入ってくる。

 その表情はとても嬉しそうである。


「まあ、それも調理技術が台無しにしているがな。結局の所、一度口にしたら食感のせいでこれ以上は食べようと思えない」

「そんなぁ」


 一気に落とされ、彼は悲しそうな表情を浮かべる。

 だが、これは事実である。

 嘘をつくことはできない。

 コッホもこれを求めていたのだろう。


「流石はポール様です。おっしゃるとおり、味に関してはかなりのレベルですが、調理技術は素人レベルなんです」

「で、俺の料理を作ることで調理技術のレベルアップを図るわけだな」

「そういうことです。お願いできますか?」


 頼みの内容は理解できた。

 料理長という立場上、新人の教育は大事なのだろう。

 そこで俺の料理を作るという実戦経験の場があったのだから、利用しない手はない。


「そういうことなら任せておけ。だが、たまにはコッホの料理を食べさせてくれよ? 俺はあんたの料理のファンなんだから」

「そう言っていただけて光栄です。時々、作らせていただけます」


 提案を受け入れたからか、料理を褒めたからか、はたまた両方か?

 コッホは笑顔を浮かべる。

 やっぱり強面なので、怖いと思ってしまう。

 そんな思いを悟られたくないので、俺は残っていた料理をかっこむ。


「あっ⁉ まずいなら残していただいていいのに」


 デビが不安げな表情で口にする。

 先程までの元気なようすはどこへやら、鳴りを潜めていた。

 俺に否定されたことが堪えたのだろう。


「食材を無駄にするのは駄目だからな。どんなにまずくても最後まで食べる──それが食材と料理人への礼儀だ」

「えっ⁉」

「失敗しても良い。俺が満足できる料理を作るレベルになれるまで精進しろ」

「は、はいっ!」


 俺の叱咤激励にデビは元気を取り戻した。

 さて、おいしいものを食べられるのはいつになるだろうか?







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