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第1話 悪役豚貴族は目が覚める

同時更新です。


「はっ⁉」


 後頭部の痛みで俺は目を覚ました。

 思わず触るが、嫌な生暖かさは感じない。


(ぷにっ)

「ん?」


 その代わり、身に覚えのない柔らかな感触があった。

 身体を鍛えていた俺には縁のない感触である。


「ご主人様、大丈夫ですかっ!」

「え?」


 いきなり見知らぬ女性が話しかけてくる。

 年齢は10代前半ぐらいだろうか、まだ少女らしさを残した可愛らしい女性だった。

 だが、すぐにおかしいことに気がつく。

 彼女の頭には犬のような耳がついていた。

 コスプレだろうかと思ったが、ぴょこぴょこと動いていることから本物なのだろう。


「私の不注意で申し訳ございませんっ! ですが、どうかクビだけは・・・・・・」

「クビ?」


 謝罪をする彼女の様子に疑問を覚える。

 ゆっくりと身体を起こし、周囲を確認する。

 そこは見知らぬ部屋だった。

 部屋の大きさだけで俺のワンルームの何倍の広さもあり、揃えられた家具の一つ一つが家賃の数ヶ月分に匹敵しそうな高級感があった。

 床には割れたカップがあり、その近くにシミがあった。

 おそらくカップに入っていた液体がこぼれたのだろう。


「ん?」


 そして、俺の視線はカップの向こう側に見える鏡に吸い寄せられた。

 少し離れてはいたが、視力はそこまで悪くない。

 だからこそ、鏡に映った姿をはっきりと見ることができた。

 俺の知る姿からは幼く見えるが、このルックスには見覚えがあった。


「ポーク?」


 その姿はポーク──ポール=ヴァイスそのものだった。

 軽く右手を挙げると、鏡の向こうのポークも同じように左手を挙げる。

 それだけで理解できた。

 俺はポークになってしまったようだ。


「ご主人様?」

「え? どうかしたか?」


 怪訝そうな表情で声を掛けられ、思わず驚いてしまった。

 そういえば、近くに犬耳の彼女がいた。

 こちらも対処しないといけないだろう。


「あの・・・・・・私はどうなるでしょうか? やはりクビですか?」


 心配そうに声を掛けてくる。

 クビになるかどうかが気になっているのだろう。

 そういえば、【BGF】には主人公のいる国では人族以外が下に見られている風潮があったはずだ。

 元は人族のみの国だったが、魔族との戦いに備えて他国との連携が必要になり、他種族も迎えるようになったのだ。

 だが、昔からの考えがそう簡単に変わるわけもなく、他種族に対する差別は残ってしまった。

 その問題を解決するのも、ストーリーの一部だったりする。

 とりあえず、彼女が心配しているのはクビにされてしまうと再就職が難しいことだろう。


「あぁ、気にしないでくれ。クビにはしない」

「本当ですかっ!」


 俺の言葉に彼女は満面の笑顔を浮かべる。

 こんな近くで可愛らしい表情を見せられ、思わずドキッとしてしまった。

 今までの俺の人生に異性の笑顔などなかったからだ。

 まあ、同性の笑顔もなかったか?

 あったのは俺を虐めていた上司の嫌らしい笑みだけだな。


「噂とは違って、ご主人様は優しい方なんですね」

「・・・・・・本人の前で言うなよ」

「す、すみませんっ!」


 指摘され、女性はすぐに頭を下げる。

 噂とは、ポークが下の人間に対して傍若無人に振る舞っていることだろう。

 事実ではあるが、真正面から言われるのはショックである。

 だが、これで状況は理解できた。

 どうやら俺はポーク──ポール=ヴァイス侯爵令息に転生したようだ。

 なんで鬼畜な悪役豚貴族に転生したんだよっ!







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