プロローグ 侯爵家当主はベテラン執事の報告を聞く
第二章、開始です。
ようやくポークの家族が出てきます。
ヴァイス侯爵家のとある一室で男二人が向き合っていた。
一人は背筋を伸ばして立っており、もう一人は腕を組みながら椅子に座っていた。
「以上が報告となります」
立っている男──セバスは持っていた紙から顔を上げる。
紙にはびっしりと内容が書かれており、それぞれの内容が事細かに書かれてあるのがわかる。
そこまで書く必要がないと思うレベルの内容も多いが、どんな些末な出来事も見逃さないためにしっかりと調査したのだ。
「ご苦労だった」
座っている男──ヴァイス侯爵家当主のエデル=ヴァイスは報告を聞き、セバスのことを労った。
この2人はエデルが生まれた頃からの付き合いである。
幼い頃からずっと一緒に過ごしてきた2人は親友であり、家族であり、兄弟分のような間柄だった。
エデルはセバスのことを信頼していた。
だからこそ、今回の報告は信じられなかった。
「ポールが改心したなどありえないだろう」
自分の息子のことなのに、まったく信用していなかった。
それほどまでにポールは問題を起こしており、取り返しのつかない失敗もしでかしたからだ。
今更信用できるはずもなかった。
「私の報告が信じられませんか?」
「いや、お前のことは信じているが・・・・・・あのポールだぞ?」
セバスのことは信用しているが、やはりポールについては信じられなかった。
家族だからこそ、その関係を崩すほどの問題からの改善は難しい。
「一度、お話するのも良いかもしれません」
「・・・・・・あいつと何を話せば?」
「それはわかりません。世間話でも良いでしょう」
「まあ、それが無難か」
エデルはセバスの意見を受け入れる。
すぐに深い話は難しいだろうから、まずは世間話などの軽いものからすべきだ。
「といっても、普通の会話すら難しいかもしれませんがね」
「なんでっ⁉」
だが、あっさりと梯子を外されてしまう。
いきなりの言葉にエデルは驚きを隠せなかった。
そんな主人にセバスは呆れた視線を向ける。
「おそらくですが、ポール様はご家族から離れようとしているのだと思います」
「どういうことだ?」
理解できなかったのか、思わず質問してしまう。
8歳の子供が家族から離れようとする意味がわからなかったのだろう。
「今まで唯一の交流の場であったお食事の時間、ポール様は現れなくなりましたよね」
「そういえば・・・・・・」
話を聞いて、最近の食事のときを思い出す。
今まで無視をしていたので気づかなかったが、いつの間にかポールの姿がなかった。
「あれはポール様自身が言い出したことです。理由は今まで分かりませんでしたが、よくよく考えると推測はできました」
「それが家族から離れようとしているということか」
「そういうことです。つまり、敬遠されている側が離れようとしているなら、もう近づくのは難しいというわけです」
「どうしたらいい?」
状況はあまり良くないと理解したのか、エデルは案を確認する。
こういうときに頼れるのは執事のセバスである。
彼なら何か解決策を出してくれるだろうと期待しているのだ。
「解決できるかはわかりませんが、まずは場を設けないと話は進まないでしょう」
「ふむ」
執事の言葉を主人が真剣な表情で聞く。
壊れていた家族の関係を直すため、真剣に作戦を話し合った。
「・・・・・・」
そんな2人の会話を部屋の外から聞いている小さな影があった。
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