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ソシャゲの序盤で死ぬヒロインにTS転生したけど、とりあえず主人公くんをいじりたい  作者: あまぐりムリーパー
奈落の先の青空

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TS娘、休日を謳歌する

 硝煙が立ち込める。辺りには瓦礫の山がいくつも積み上げられていた。

激しい破壊の跡が色濃く残っている。


 輪郭のぼやけた何かの破片が散らばっていて、その下には血がべっとりとついていて。バラバラになった人体がいくつも転がっていた。


 むせ返るような血と煙の酷い匂いが漂う。


 その中心にいたのは、一人の少女。虚ろな目をして、その場に立ち尽くしている。千切れた人間の腕を握って。無言のまま、どこを見ているかもわからないような状態のまま。


 地獄のような、悲惨の光景。


 それでもこれは、深禍到来後のよくある話。


 この世界にありふれた悲劇のひとつに過ぎない。


◇◇◇


 知らないうちに、怜菜と渚くんがちょっと進展してたみたい。ふっ、チームメンバー渚くん大好き計画は順調に進行してるね!


 何せ、私も希沙とちょっとだけ仲良くなったし。


 希沙はね、表面上はわりと付き合ってくれるからね。うん、表面上だ。私たちカースシーカーはナーバスなメンヘラばかりなので、ここら辺は難しい。


 私?私もめっちゃメンヘラだよ!渚くんと離れると、寂しさのあまり押しかけて一緒に布団入りたいし!


 ……ごめん、ちょっと飛ばしすぎた。さすがにここまでやるのはちょっとね。


 ともかく、チーム仲はギリギリましになっている!ならやるべきことは……まあたくさんあるけど今はないんです!

 希沙と渚くんとかまだ全然ダメそうだけど。


 でも、急に進めてもよくないからね。ガツガツいかない淑女を目指しています。


 だから、何しようね。


 ちなみに今日は休日です。学校もなくてノー渚くんデーです。シュジンコニウムをください。


 と、言うことなので仕方なく休日を謳歌しよう。


 明上ユーリ、休日ファッションでやったりますか。制服以外ですよ。


 地味めのファッションでね!落ち着いた色合いで統一しようかな。


 うーん、卵切らしてるし食べ物と一緒に色々買っちゃおうかな。 




 ――というわけで、近所のショッピングモールに来ました。


 服を買うほどの余裕はないし、食べ物ぐらいでいいか。


「あっ」

「ん?」


 小さな声が聞こえたので、思わず振り返ると揺れる赤い髪が見えた。


「ユーリじゃん」

「あれ、希沙。奇遇だね」


 ばったりと希沙と遭遇した。……なんか、私が主人公みたいなイベント起こしてない?気のせいか。


「休みの日はコネクターくんとはいないんだ」


 冗談めかして、笑みを見せる。うーん、これだけでかわいい。乗ってやろうじゃないか。


「そうだねー、本当は渚くんと休日デートしたかったなあ」

「あはは、ユーリは本当にコネクターくん大好きだね」

「えへへ、それほどでも」


 と畏まってみると、希沙の目つきが変わる。……なんか真面目な話をしようとしてる。


「……ユーリさ、今からデートしない?」


 え?

 もしかして、私が主人公のゲームをやってる?


 そういう風に茶化そうとしたけれど、希沙の言い方が存外まじめだったもので、私はつい頷いてしまうのでした。ごめん、押しに弱くってさ……。


 希沙に連れ回されて、ショッピングモール内を回されています。まずは雑貨屋に来た。……何が目的なの?卵買いたいんだけど。


 っていうか、これってデートなのか?


 あっ、かわいいヘアゴムだ。……髪を結ぶには短いからダメか。


 シュシュとかやりたくなるんだけど、これは希沙の方が似合うよね。ポニテ街道を躍進してますからね……!


 じーっと、シュシュとかを見ていたらさっきまで何かを見てた希沙がこっちに来た。買いたいもの見つかったのかな。


「そういや、ユーリって髪結ばないね」

「あんまり長くないし」

「でも、伸ばすこともないんだよね」


 うーん、でもこれは原作の私に合わせてるだけで別に好みとかでもないんだけど。伸ばすのも、試してみたくはあるよね。


「じゃあ、そのうち伸ばしてみようかな」

「似合いそうだよね」

「えっ、そう?じゃあ伸びてきたら、希沙に選んでもらおうかな」

「うん、いいよー」


 なんていう小さな約束を交わしつつ、雑貨屋は希沙がミサンガだけ買って、私は結局何も買わなかった。


 次に来たのは、普通にカフェ。定番過ぎるなあ。


 希沙は物憂げな顔をしながら、クリームソーダをストローで吸っている。


 希沙って快活ってイメージが強いけど、憂いを帯びた横顔も様になってる。くー、美少女は違いますね。

 いや、私も負けてないけどね???


 にしても、どうしたんだろう希沙。今日はちょっと様子がおかしい気がする。黒河希沙と言えば、テンション高めだからね!当然、闇は抱えてる系だけど。


 ちなみに私が頼んだのはコーヒー。この苦味の奥にある酸っぱさみたいな何かが癖になるよね、くぅ~。


「……ねえ、この後にカラオケとかに遊びに行こうと思ったけど」


 希沙がずるずる、と飲んでいたクリームソーダはいつの間にか底をついていた。


 まあ、雑貨屋とカフェ行ってデート終わったりしないよねそりゃ。


 希沙は、ストローの先を指でくるくる回した。


「――行っても楽しくないと思うんだ」

「えっ」


 お前とのデートつまんないよってこと?

 つい、コーヒーを飲む手が止まる。


「……ユーリは楽しかった?」


 そう言う希沙の瞳は何かに縋っているようで、冗談で返すのは憚られた。


「まあね」

「……そっか」


 その目に浮かんでいたのは、失望に似た何かだった。私の答えはお気に召さなかったらしい。


「ユーリもさ、こっち側だと思ったんだ。コネクターくんと、怜菜は違ってそうだったから」


 ……なんの話?私と希沙の共通点ってなんかあったかな。テンションが高いとか?

 渚くんが関係なかったら、胸の大きさとかの可能性もあったけど。


 ……いやでも、渚くんも脱いだら腹筋バキバキで胸囲がでかい可能性があるんじゃないか?

 今度、正面から抱き締めて確認しちゃお。


 ……うん、状況がわからなさすぎて混乱してしまった。


 原作で私だけが希沙と絡んだことはないから、予想外なんだよね。


 希沙とのイベントって、渚くんと一緒に色々遊んだりしていくうちに、ちょっと内面を教えてもらう流れだからさ。


「――ユーリも、私と同じで深禍に大事な人を殺された側でしょ。見てたらわかるよ」


 ――ああ、そっちの話か。胸の中にスッと落ちた。


 同じような境遇のやつが、同じように振る舞ってるのに、私だけ平気そうだから気持ち悪いんだ。原作の私ならなんて返しただろうか。正直に答えるんだろうな。


「違うよ」

「嘘つき」


 私たちの会話はこれきりで、それ以外に話すことはなかった。


 だって、お互いこれ以上踏み入れないから。


 会計を済ませて、無言で別れる。


 そういえば、卵をまだ買ってなかったな。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


[アーカイブ]


 明上ユーリ:中距離の万能型アタッカーです。遠近両用、防御も使用できるためどの立ち位置でも機能します。


 好きなもの:まっすぐな人

 嫌いなもの:████


 性能について:NO DATA

 

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