主人公くん、冷たい少女と相対する
明上さんがよくわからない計画を立ててしまったけど大丈夫だろうか。仲良くなった方がいいっていうのはわかるけど、チームメンバー渚くん大好き計画って……なんか名前を聞くのも嫌だな。
早めにチームの部屋に来ていたので、誰もいない。椅子に座って、ぼーっと背に持たれる。
……でも、実際に戦いに出てみてわかったことがある。
初めての出撃だった。チームを組んだばかりで、何もわからなかったせいもあるけど、連携とかはあまりできていなかった。
黒河さんが一人で勝手に突っ込んでいってしまうし、黒河さんがいなくなれば前衛がいないので、琴塚さんは戦いにくくなる。
明上さんは僕を守ろうとしてくれてたから、二人のサポートもできなかったし。
それに、僕の役割である"コネクトリンク"を使ってくれそうなのは明上さんだけ。……やっぱり嫌われてるのかな。
まあ、明上さんも距離感がおかしいんだけど。なんか、抱きつかれた時にいい匂いがしたな……じゃなくて!
コネクターとしての僕に何かできることはないのだろうか。そればかり考えてしまう。
……やっぱり、僕は明上さんの言う通り、仲良くならないといけない。
『だって、みんな死にたくはないでしょ』
そう言ってた彼女の言葉は、いつもと違って本心そのものだったように思える。
――まるで、コネクターとうまくいかなくて死人の出たチームでも知ってるみたいに。
……彼女はどんな世界を見てきたんだろうか。あのふざけている様子も、カモフラージュなのかもしれない。
そういえば、明上さんにコネクトリンクを使用したとき、奇妙な感覚だった。初めてのはずなのに、一度この感覚をどこかで味わったことがあるような――
「あら、コネクターだけかしら。他にはいないのね」
がらがらがら、と扉を開いて来たのは琴塚さんだった。
……いつもは冷たい視線なのに、今日は少し柔らかいような気がする。
「こんにちわ、琴塚さん」
「…………ええ、こんにちわ」
挨拶をすると、視線を僅かに揺らして少しだけ目を泳がせた後、覚悟を決めたように挨拶を返してくれた。
……僕への挨拶って、そんな覚悟とか必要かな。
挨拶以外は特に話すこともない。沈黙が続く。……ちょっと気まずい。
「……その、この前は初めての出撃だったけど、どうだった?」
沈黙に耐えられなくて話しかけてみると、琴塚さんの眉が少し上がる。
「……そうね。その、あまり連携が取れていなかったわ」
そして、申し訳なさそうに目を伏せる。
「それはまあ、そうだね……」
知り合って間もないのに協力しろって言うのも無理な話だけど。とはいっても文字通りの死活問題だから、なんとかしないと。……明上さんの言ってるよくわからない計画に乗るわけではないけど。
「私も、少しやらかしてしまったし」
「……まあ、明上さんは気にしていなかったけど」
「それはあの子がおかしいだけじゃないかしら」
辛辣だ、その通りだけど。
「ともかく、私も意識を改めることにするわ」
何か決めたように、琴塚さんは深く息を吐いた。
そして、弱々しく手を差し出す。……もしかして、握手を望まれてるんだろうか。
「えーっと……」
「握手よ、見ればわかるでしょ」
ジロッと睨まれる。
「私はあなたとは仲良くなりたくはないけれど、それでもチームでの協力関係は必要そうだもの。まずはあなたと握手ぐらいは済ませておきたいわ」
「……わかった。改めて、コネクターの篠崎渚だよ、よろしく」
琴塚さんの手は少し震えてる。これ以上無理させるわけにもいかない。
軽く握手をする。びくっと琴塚さんの体が跳ねる。これはもしかしてだけど……。
「その、琴塚さんは男の人が苦手だったりする?」
「……あなたもそんなこと言うのね」
あなたも?すでに誰かに言われたのかな。握手を終えると、すぐに琴塚さんは手を離して、少し距離を空けてくる。
……見るからに、男の人が苦手そうだ。
「そうね、苦手よ。どこにいても、私の体をじろじろと見てくるもの。例え、深禍と戦っているような時でもね。吐き気がするわ」
「……それは」
琴塚さんはなんというかその……胸とか、一部の部分が大きい。すれ違うだけでもじっと見るような人もいるだろう。そんな視線に晒されて嫌になってしまったんだと思う。うまく言葉を紡げなくて、言い淀んでしまう。
「別に、同情してほしいわけじゃないわ。あなたはそういうタイプじゃなさそうね」
「それは、どうも」
……一応、許されてはいるらしい。それなら、まあいいか。
「入場ー!」
「きたよー」
突然、扉が開いて黒河さんと明上さんが入ってきた。
急に騒がしくなった……。琴塚さんもさっきまでの氷みたいな無表情が崩れた状態から元に戻っている。
本を開いて、なにもなかったみたいに。対応が早い。
「二人とも同時に来たんだね」
……一応、なぜか元気な二人にも話しかけてみるか。
「うん、希沙とさっきばったり会ってね」
「そうそう!ついでだから、ユーリと一緒に来たってこと。ねー」
「ねー」
そのまま、二人ともハイタッチ。しかも、名前で呼び合ってるし。
……意外と、このチームがまとまるのも早いかもしれない。
「渚くんと怜菜もなんか仲良くなった?」
じっ、と明上さんがこちらを見てくる。意外とめざとい。
「いや、少し話しただけだよ」
「そうね。仲良くはないわ」
「はっきり言うなあ」
じろり、と琴塚さんからも視線が飛んでくる。さっきのことは言ってほしくないってことだろうか。
「ふーん?でも――私の方が渚くんと仲良しだけどね?」
ふわり、と甘い匂いがした。明上さんの姿が見えなくなったと思えば、目の前に細い腕が回されている。
――そして、背中に柔らかい感触がした。さらさらとした髪が、僕の顔にも少しかかる。
……後ろから抱きつかれてる!?
「わーお、情熱的だねえ」
けらけらと黒河さんは笑う。琴塚さんはただ呆気に取られていた。
あの、助けてほしいんだけど……。
「渚くん」
「ひぅ……!?」
耳元に囁く声に、思わず変な声が漏れる。
「私とも仲良くしてね」
くすり、と小さく笑う声に鼓動が早くなる。なんなんだこの人は。行動の意図がわからない。純粋な好意じゃないはずだ。……それがわかっているのに、僕の鼓動は早くなってしまう。
「……あなたたち、他所でやってもらえるかしら」
「あはは、怒られちゃった」
パッと、明上さんは僕の背中から離れていく。た、助かった……。頭がどうにかってしまいそうだった。
こんなことばかりやってくるのはやめてほしい、本当に。そろそろちゃんと言わないと。
「明上さん、こういうことはやめてほしいんだけど……」
そう言うと、明上さんはにこりと笑う。
「やだ」
「なんで!?」
慌てる僕に、少しだけ近づいて。
「今度、続きをしようね」
とだけ言って椅子に座った。
続きって何!?
「破廉恥ね」
「破廉恥だねー」
……このチームでやっていけるかな。やっぱり不安だ。
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[アーカイブ]
コネクターの能力、コネクトリンクは接触をトリガーにカースシーカーの能力を強化します。強化中、パスのようなものが接続している状態になり、意図的に切断しない限りはずっとつながっています。
コネクトリンクにはカースシーカーの強化以外にカースシーカーの回復も可能です。これは、████による影響を和らげる効果もあります。




