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ソシャゲの序盤で死ぬヒロインにTS転生したけど、とりあえず主人公くんをいじりたい  作者: あまぐりムリーパー
奈落の先の青空

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雲山悠里は

 おかしいな。渚くんと希沙の姿が見えた。


 こんなに早く来るはずないのに。


 それに、私の体が意外とまだ壊れてない。原作よりも早めにアバドンになるようにしたのに。


 本当は混合型とは無理にスキルを連発せずに戦って倒して、その後の深禍の群れとの戦闘中にアバドンになるはずだった。

 それを先送りにした。


 なのに、胸元の血はなぜか既に止まっている。


 何があった?

 体がふらついた。ああ、なんだかんだ限界なんだ。

 じゃあいいかな。


 後は、渚くんに託せば――


 その瞬間に視界が暗転する。






 目を開くと、真っ黒な何かが蠢いている世界。さっきまでの瓦礫の山は見えない。


 なんだ、ここ。こんな心象風景みたいなところあったっけ。


 いや、心象風景にしてはあまりにもなにもないんだけど。黒いのがずっとぐねぐねしてるだけで何も見えないし。


「深淵って感じだよな」


 ――懐かしい声が聞こえた気がした。

 いつかに失った、あの友人の。


 裏庭に駆けた風が頬を撫でた、あの時の感覚を思い出した。


「久しぶり、明上」

「……う、そ」


 雲山悠里が確かにそこにいた。


「ほんと、ここよくわかんない場所だよな」


 なんで、悠里がここにいる?

 しかも、平然としてるし。……もしかして、こいつ何か知ってる?

 逸る気持ちを抑えて、とりあえず聞いてみるか。


 そう思ったのに。


「ゆう、り……」


 口から出たのは酷く掠れた声で、それ以上に言葉が出てこなかった。


 だって、あの時以降に久々に会って、夢ではいつもこいつがいなくなるときばっか見てて、ようやく全部終わるってときに、姿が見えて――


 ははは、とあいつが笑う声が聞こえた。


「どーした、そんな泣きそうな顔して」

「……うっさい、これどういう状況?」


 悪態をついてみると、ちょっとだけ気持ちを持ち直した。……こいつと話すときはいつも、悪態をついてたから。


「なんかさ、カースシーカーと深禍って力の根源みたいなのは同じらしいじゃん。その根源がここっぽいぞ」

「それは……」


 ……それはゲーム内で少しだけ語られる設定のはず。


 この世界の裏側みたいな場所があって、カースシーカーはそこから力を引き出していて、深禍はそこから出現してる、みたいな話だったか。


 もしかして、ここは私の心が生み出した幻みたいなもの?

 死にかけてる時に、最後に思い浮かべてるみたいな。都合のよすぎる夢だから。


「なんで知ってんの?って顔してんな。まー、ずっとお前の中にいたし」

「は?」


 脳が理解を拒んだ。

 ……なんだ、中にいるって。


「俺さ、お前に手を握られたまま千切れて死んだじゃん?」

「……まあ、そうだけど」

「あの時にさ、コネクトリンクを結構強めに繋いでたから俺の一部がお前の中に残ったんだよ」

「一部が、残った……?」


 そんな力、コネクトリンクにないはず。確かに、記憶を勝手に見るようなことはできるけど。


 いやでも、もしかしてあるのかそういうこと。死ぬときに繋がっているとそうなるみたいな。


「だから、ずっとお前の中で見てたよ。お前のことをさ。すげーずっと無理してて、俺があの時に死んでなかったらなーってずっと後悔してた」


 この場所が薄暗くて、表情があまりわからない。こいつはどんな顔をしてるんだろうか。


 ……死んだ後も、人のことを心配するなんて、お人好しなやつ。


「じゃあ、死ななきゃよかったじゃん」

「お前、無茶苦茶言うなあ」

「勝手に死ぬなよ、アホ」

「って言われてもな、死んじまったし」

「バカ、アホ」

「暴言しか語彙ねえのか?」


 感情が溢れ出してきて、色々と云いたいことがあったのに、うまくまとまらない。


「……お前が死んでから、何していいかずっとわかんなくて、でも原作通りにやらないとって思って……って言ってもよくわかんないか」

「いや、わかるけど」

「え?」

「ここは()()()()()()()()()()()()()とか、そういうことだろ?」

「いや、ちょっと待って」

「お前の中に残ったって言っただろ?お前の昔のことも全部知ってるよ」


 ……まじか。いや、なんか……なんかさ。


 なんで、普通そうにしてんだよお前は。もうちょっと驚くとかない?

 いや、違うか。その段階はもっと前に終わってて、理解し終わった後……みたいな。


 ってか、昔のことって言った?


「さすがに最初は驚いたよ。転生してるみたいだし、この世界がゲームってのもよくわかんないもんな」

「……お前、それを受け入れたのか」

「お前の思ってる通りのやつが出てくるんだからしょうがなくね?あの、篠崎渚ってやつとかさ。にしてもきつかったなー、好きなやつがずっと知らない男にベタベタしてるんだぜ?」

「うっ、うっさいな。……ああいうことしてないと、なんかしんどかったんだよ」


 正直、あんなに渚くんとくっついたりする必要もなかったけど。なんか、悠里に抱き締められたあの時以降、誰かと接触してると気持ちが楽になってしまった。


 お前のせいじゃん。


 体についた傷が、そうやったら塞がった気がしたんだから。


 ……反応がよくて過剰にやってしまった面もあるけどさ。


「にしてもさ、わざわざ偽名に俺の名前使ってるなんて、どういう反応したらいいかわかんねーよな」

「なんだよ、勝手に借りて悪かったな」

「いんや?なんか、俺のこと大好きみたいでちょっと嬉しいわ」

「こいつ」


 ……いや、傍から見たらそんな感じか。そんなんじゃなくて、友達と一緒にいたいだけの気持ちだったのに。


「結婚で名字変わるみたいなのと似た感じで名前もらってくれてるってこと?」

「ちげーよ、アホ」


 調子に乗った悠里を小突いてやる。なにも感じない。やっぱり、感触とかもないのか。


 でも、久しぶりに心地よかった。今までずっと、全部を偽り続けてきたから、久しぶりに肩の力を抜いて話ができた。


「ひとつだけ聞いていい?」

「なんだよ」

「俺はお前が好きなんだけどさ」

「……うん」

「いつも、ツンツンしてるわりに話したら寄ってくるし、ふとした時に見せる笑顔がすっげー可愛くて好きなんだけどさ」

「待って、なんの話?」

「一人でも平気みたいな面してる割に寂しくてなんか俺を探しに来たりするところとか、人目あるところで俺と関わってこなかった癖に困ってるときはそういうの無視して助けてくれるところとかが好きなんだけど」

「長い長い長い!なんか恥ずかしいだろ!!」

「俺はそういうお前が好きなんだけどさ、お前はどう?」


 思わず息を飲んだ。たまたま、顔がよく見えた。

 こっちを見るあいつの真剣な瞳と目が合う。


 そんな長々と言うなよ。いつもみたいに、ふざけてるのかと思っただろ。


「――好きだよ」

「ははは、こんなときに嘘つくのもお前ぐらいだよ」

「バレたか」


 こいつのことは友達としては好きだ。いいやつだし、こんな俺をわざわざ好きになってくれた。


 でも、それ以上の何かはない。本当はこの先にあったかもしれないけど。


 それでも最後だから、聞こえのいい嘘で誤魔化そうとした。


「そろそろ、か」


 視界が、少しだけぼやけてきた。


 まだ、私には役割がある。それだけは終えないと。


「まあ待て」


 不意に、手を握られた。感触はないけど。


「なんだよ」

「いや、もう死ぬみたいな雰囲気出してるから」

「……お前もわかってるだろ。アバドン化したカースシーカーは死ぬって」

「お前は死なせてやらないよ」

「は?」


 何を言ってるんだ、こいつは。


 私が死ぬのは避けられないことで。それの回避なんてしようがない。それは運命だから。


 ……でも、胸元から出た血が止まっていた。これは本来、体が耐えきれなくて崩壊しかけてる状態だったのに、何か起こってる?


「アバドンの状態にはコネクトリンクが有効なんだろ?俺は、コネクトリンクでお前に繋がった残滓だから、似たようなことができる」

「……いや、待って。それって」


 そうだ。アバドンはコネクトリンクである程度軽減できる。奈落帰りのカースシーカーがコネクトリンク中だけ力を使っても平気なのも同じ。


 本来、アバドン化して手遅れになった後に渚くんが来るはずだった。


 でも、その前に私の中にいた悠里がそれを止めた?


 なに、それ。


 じゃあ、死なないってこと?


「まあ、俺は残滓だからさ。これやったら消えてしまうんだけど」

「なんで」

「好きなやつを助けたいって思うのは自然だろ?」


 あいつが、ニッと笑ってるのが見えた。ずるいじゃん、そういうの。目の奥が熱くなった。


「悠里、待って」

「ごめん、そろそろ本当にさよならだわ。じゃあな、明上」

「……最後ぐらい名前で呼んでくんない?お前だけ人を名前で呼ばせやがって」

「そういうの、付き合ってからやりたかったんだよ」

「アホ」

「じゃあな、蒼空」

「…………さよなら、悠里」


 ――さよなら、親友。


 ……あーあ、私は生き残ってしまうのか。


 でも、友達に背を押されたら、しょうがないか。


「で、お前ってあの篠崎渚ってやつは好きなの?」

「おい、さっきさよならしただろ」

「いや、聞かないと消えられねーなって」

「はあ……正直わかんねーよそういうの。だって――」

「ああ、前世はおっさんなんだっけ?まあいいじゃん、今のお前は可愛い女の子だろ」

「うっさい。わかんねーものはわかんねーんだよ」


 なんだ、いいじゃんって。渚くんを好きになっちゃえよってこと?


 最後までよくわかんないやつ。


 ……正直、前世についてはあんまり知られたくなかったけど。


 視界のぼやけが強くなってきた。本当に、そろそろ終わりか。


 ふと、目を瞑る。再び開けたときには、篠崎渚の顔が目の前にあった。


 さて、私はどうしたらいいんだろう。


 空虚な私は、まだ終われないらしい。


 渚くん、君は私を救ってくれるかな。

 簡単に救われてなんてやらないけど。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


[アーカイブ]


 篠崎渚の女性ifストーリー「青空の続く先」では明上蒼空が生存した先が描かれます


 同時期に奈落帰りになった明上蒼空が期間限定キャラとして追加されました

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― 新着の感想 ―
ここから蒼空は渚を好きになれるのか…… トテモ面白い!
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