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ソシャゲの序盤で死ぬヒロインにTS転生したけど、とりあえず主人公くんをいじりたい  作者: あまぐりムリーパー
奈落の先の青空

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TS娘、過去を振り返る

 私は、部屋の中でゆっくりと佇んでいた。


 そろそろ、私の仮面はもう壊れつつある。みんな、そろそろ気付いてしまったかもしれない。


 所々、ボロが出てきてしまっているし。


 なんとなく、味噌汁を作った。暖かい。


 結局、素は俺であのハイテンションの女の子は偽物だ。

 いや、偽物って訳でもないか。心の奥底にこびりついてはいるし。


 素の自分に、明上ユーリというキャラを無理矢理被せた。コネクターである篠崎渚が大好きで、それをいじることを生き甲斐としているような。俺とはまるっきり違うキャラクター。

 だから、篠崎渚と接することでそのキャラを補強していたけど、それももう限界がきてしまった。


 最後に握った手で、まだ明上ユーリを保ててるけども。


 あと少し、綻んだ私の心は持つだろうか。


 かつての、あいつ……私が名前に選んだ雲山悠里のことを思い浮かべた。


◇◇◇


 私がまだ、明上ユーリではなかった頃の話。あえて、名前は言わないけど。


 一人称は当然、俺だし。口調もわざわざ女に寄せない。だって、俺は女じゃないから。


 小学校の時から、男に混じってボール遊びとか色々やんちゃにやってたし、妹からはそんな様子をバカにされたこともあった。


 取り巻く環境がガラッと変わったのは中学の頃から。男女の体が明確に違ってくると、私はすぐに一人ぼっちになった。


 男と絡んでたら媚を売ってる扱いにされることがあれば女ともろくに絡めない。距離感が近いだのなんだので、色々と問題があってすぐにみんなが離れていってしまった。


 失敗したな、と思ったけど今さらそれのために俺は男であるという気持ちを捨てたくはなかった。気持ち悪いし。


 ……いやまあ、無駄に面がいいせいで近寄ってくるやつはいたんだけど。


 そのまま、教室で頬杖をついて虚空を眺めながらボーッと過ごす日が増えた。


 そんな時だった、あいつと出会ったのは。


 教室は居づらくて、休み時間に裏庭でボーッと立っていた。


「なんだ、先客いたんだ」


 声の方を向くと、知ってる顔があった。同じクラスで、誰とも馴染めるようなそんなやつ――雲山悠里がそこにいた。


「そういや話したことなかったよな。明上でよかったっけ?」


 クラス中から白い目で見られてるような俺相手でも、にこやかに話しかけてきた。陽キャかよ。


「はいはい、クラスであぶれてるやつにも優しい雲山悠里さん。なんか用か?」

「お前、すっげートゲあるな。俺なんかしたっけ」

「うっさい、さっさと消えな」

「別にいいだろ、ここにいてもさ。もう少し話そうぜ」


 しっしっ、と手を振って見ても、雲山はけらけらと笑うばかりだった。


 なんだこいつは。わざと邪険にしてるのに、なんだか楽しそうにしてる。……変なやつ。


 わざわざ、俺と絡むと面倒くさいことになるから遠ざけようとしてるのに。


「話すことなんてないだろ」

「そんな邪険にすんなよ。いいじゃん」


 って、そうやってぐいぐい来るから、押し負けて話すことになってしまった。


 例えば、好きなものがどうとかそういう他愛もないような話を。


 男と話すのは久々で、意外とそのまま話し込んでしまった。普段だと男に気安くするだけで反感は買うわ、勘違いされるわでそれはもう大変だったからな。その分の反動か。


「明上さ、友達になろうぜ」

「は?」


 こうやって人と話すのも久々で意外と楽しいな、なんて思っていたのに。

 いきなりそんなことを言われて驚いて思わず低い声が出た。


「お前って意外と面白いやつだから」

「そりゃどーも。でもめんどくさいからわざわざお前とは友達にはなりたくないな」

「ははは、そうか。じゃあたまにこうやって話してくれよ」


 冷たく放しても、全然めげない。なんなんだこいつは。


 最初は頑張って突き放していたけど、段々と俺が折れて仕方なく話すようになってしまった。俺と話すことの何がいいのかわからない。


 そうして、いつの間にか俺は雲山悠里と友達になってしまった。というか、されてしまった。ちょっと話を聞いてやるぐらいだったのに、だんだんと踏み込んできて、俺もなんか断りきれなくて、気付いたら「友達になろう!」というあいつの言葉に頷いていた。


 教室ではあまり話さないけど、裏庭でたまに話す奇妙な関係で、ずっとこのままなんだとぼんやりと思っていた。




「なあ、なんで雲山は俺にわざわざ構ってくるんだよ」


 いつの日にか、そう聞いてみた。

 こいつが俺に構ってくる理由が検討がつかなかったから。


「野良猫見つけたら、構いたくなるだろ?」

「誰が野良猫だ」

「いやだって、警戒心強いけど意外と懐いたら寄ってくるみたいな」

「懐いてねーから」


 得意気に言うその顔が本気でムカついたので横っ腹を肘でどついた。


「いって!お前、加減しろよ」

「ふざけたことぬかすからだろ」

「本心で答えただけなのに。最初、話にいったのは正直顔がいいからだけど」

「おい、ぶっちゃけすぎだろ」


 しれっと言いやがって。


 雲山悠里はまあまあ人気だ。イケメンってほどでもないけど、面が悪くなくて誰とでも仲のいいやつだ。

 だから、逆に俺の顔なんてあんま興味ないと思ってたけどそうでもないらしい。


「でも、しょうがなくね?お前、結構可愛いじゃん」


 でも、さすがにこうやって面と向かって言われると面食らった。恥ずかしいという気持ちがないのかこいつには。


「お前、女子にそんな感じのことずっと言ってんの?」

「いんや?明上にだけ」

「……はあ、お前思わせぶりに言いすぎだろ」

「何が?」


 キョトンとしているその顔になんとなく腹が立った。


「――まるで、俺が好きみたいに言ってんじゃん」


 慌てて否定するかな、そう思っていたのに雲山の表情が緩んだ。


「バレたか」


 あまりに、にこやかに言うもんだから、言葉を失った。


「……ロマンチックの欠片もねーやつ」


 どう返したらいいかわからなくて、なんとか言葉を絞り出した。バレたか、じゃないだろ。


「なんか言いたくなったから。ってか、お前の場合、そういう場を整えたら逃げるし」

「よくお分かりで」

「……これ、一応答えとか教えてくれんの?」

「……お前、これ告白でいいのか?」

「いいよ、もう。で?」

「うっざ、答えてやんねーよ」


 恥ずかしげもなく、気持ちを伝えてくるこいつが眩しくて答えを誤魔化した。

 抗議の視線が飛んでくる。


「せこくね?そういうの」

「変なコクり方してくるからだろ」

「頷いてくれるまで頑張れってことな!」

「はあ、このポジティブ野郎が」

「せめてさ、雲山じゃなくて悠里って呼んでくれねえ?」

「…………しょうがねーな、悠里」

「よっしゃ!」


 まあ、こいつのバカな様子は嫌いじゃないけどな。そこは名前を呼ぶんじゃなくて呼ばせるのかよ、なんてふと思った。


 確かに、今の俺は女で可愛いように思えるかもしれないけど。俺の前世は男で、その意識が消えたわけじゃない。


 だから、きっとこいつの気持ちには応えてやれない。


 それでも、俺の日常を崩したこいつに少しずつ気持ちが傾いてるような感覚がして、曖昧にしてしまった。


 この後、すぐに終わりがくるとも知らずに俺は呑気にこの心地いい関係に身を浸していた。


◇◇◇


 ところで、この世界がランヘリの世界だということはこの頃はまだあまり考えていなかった。


 深禍も今と比べれば大した出現量じゃなかったし、まだ俺は女であることに反発していたせいもあって、そういったことをあまり考えられていなかった。


 でも、もう少し早く気付いていたら。この可能性に思い当たっていたら、もしかしたら何か違っていたんじゃないか。ずっとそう思っていた。





 その日は、珍しく登校中に悠里に会った。普段、話すと面倒なことになるから避けていたけど、会ってしまったらどうしようもないとばかりにあいつから話しかけてきた。


「よっ、明上」

「よっす、悠里」


 軽く手をあげて挨拶する。別に朝に話すこともない。

 なんとなく、二人で並んで歩いた。いつもと同じ街並み、こいつが隣でいるだけで見える景色が変わって見えた。


 あの日から、なんとなくあいつのこっちを見る目が変わった気がする。というか、隠していた好意をさらけ出したって感じか。


 一歩だけ、あいつが寄ってきた。肩が触れそうになる距離。だんだん遠慮しなくなってきたな。まあいいか。


 無言でも悪くない、ちょうどいい空気だった。崩れた学校を見るまでは。





「なに、これ」


 声がうまく出なかった。俺たちがずっと通っていた学校が、ものの見事に瓦礫の山になっていた。


 瓦礫の隙間に見えるあの赤は、もしかして――


 俺はその考えを振り払った。頭がおかしくなってしまいそうだったから。


 ああ、そうか。ようやくこの時にわかった。


 あの輪郭のぶれた獣のような存在は深禍で、俺はカースシーカーで、ここはラスト・インヘリタンスの世界だ。


 俺はバカなやつだった。自分の名前だって、あのゲームのキャラと同じなのに。


 同じように立ち尽くしてる悠里の手を取る。


「逃げるぞ」

「あ、ああ……」


 別に、逃げる場所なんてないけど。俺はまだ立ち向かう勇気もなかった。深禍たちが、そこらに突然沸いてきては破壊活動をしてる。ここにいるのは危険だから、逃げた。

 どこが安全かもわからないけど、とりあえず自宅を目指して。


 でも、世界は待ってくれない。


 悠里の手を引いてたどり着いた、俺の家は学校と同じように崩れていた。


「あ、ああ……」

「明上……!」


 呻き声以外、何も出せなかった。俺を支えてくれる悠里の言葉も、何も耳に入らない。


 あの瓦礫に挟まっている制服も、スーツも……きっとそういうことなんだろう。


 わらわらと、深禍たちが沸いてくる。辺りを見渡すと、いつの間にか囲まれているぐらいに。


 これか、こいつらがやったのか。


 悠里の手を放して、初めてスキルを使った。ただ、怒り任せて暴れようとしただけなのに。


 獣のような深禍の首を千切った。足をえぐって、胴体を何度も切り刻んだ。


 二匹目がやってきた、殺した。

 母親の、指輪をつけた手が見えた。

 三匹目がやってきた、殺した。

 妹のぬいぐるみが瓦礫の隙間から見えた。誕生日に送ったやつ。

 四匹目がやってきた、殺した。

 五匹目がやってきた、殺した。


 ただただ、深禍を殺した。家の残骸から見える家族の欠片をもう見ていられなかった。


 そして、ある程度倒し終わった後に急に現実感が来て、その場にへたり込んだ。


 妹の明上結愛も、両親も。もう、声すら聞けないのか。


 俺を見た悠里が心配そうに口を開こうとしてる。


 でも、何も聞く気にはなれなくてそれよりも先に俺が言葉を紡ぐ。


「悠里、ずるいことを言ってもいい?」

「……なんだ?」

「抱き締めてくれない?」


 悠里の瞳が揺れた。そのまま、諦めたように俺の前に座る。


 悠里の腕が背中に回された。暖かい。


 ズタズタにされたような心が、この胸の痛みが悠里の温もりで塞がったような気がした。


 ……こいつの好意を利用しているだけなのに。


 ここに戻ってくるときに通りすがりに見た、悠里の家だって、崩れていたのに。


 本当にいいやつだよ、こいつは。


 悠里に放してもらって、なんとか立ち上がった。まだ、それぐらいの力はある、はずだ。


「ありがとな、明上」

「ん、何が?」

「お前がいるおかげで、なんとか正気を保ってるっていうかさ」


 本当は俺がもう、精神がすり減ってて、お前のおかげでなんとかなってるだけだっていうのに。

 まるで、自分が限界だから支えてもらってるような言い方をする。ずるいやつ。


「そうかよ」


 そのせいで、俺からはお礼を言い出せなくて、ぶっきらぼうに返すしかなかった。


 悠里がスッと手を差し出す。


「明上、ちょっと手を握ってくれない?」

「……まあいいけど」


 何が狙いかはわからなかったけど、悠里の手を握った。手のひらから、何かが流れ込んできた。


「なんかさ、俺コネクターになったっぽいから、お前を助けられるかなって」

「……さんきゅ」


 こいつも手伝ってくれるんだ。

 だから――


 と、気合いを入れ直そうとした時に激しい衝撃が襲った。


 何かが急に降ってきたみたいな、そんな衝撃。土煙で辺りが見えない。


 繋いだ手の感触から、まだ悠里はここにいるはずだ。


「おい、悠里!大丈夫か!」


 返事はない。


「おい!」


 手を引っ張った。


 やけに、軽かった。


 それもそうか。だって、俺が握ってるのは腕だけで、肩から先がないんだから。


「ゆう、り……」


 腕の先からは、だらりと血が流れているだけで、あいつの体はどこにもない。


 目の前には、大量の深禍がいた。こいつらが急にやってきた衝撃で吹き飛ばされたらしい、ということはわかった。


 そして、その下にいくつもの赤が見えた。


 そこからは、何も覚えていない。周りにいる深禍は全員ズタズタにして殺した。


 そして、全部倒した後、俺は悠里の手を握りしめたまま、その場に立ち尽くした。誰かが俺を見つけるまではそうだったらしい。


 なんとなく、静かで何も起こらなかったことだけは覚えている。


 俺にはもう、生きる理由も何もない。家族は死んだ、友達も死んだ。ただただ、何もない日々を過ごした。





 第三深禍災害。俺たちを襲ったのはそれらしかった。


 生き残ったのはわずか。あの中学のうちでは30人ぐらい。全員、カースシーカーかコネクターになっていた。


 この頃は、まだ中学生でも出撃の許可が降りていて、俺たちは全員出撃していた。別にしろって言われたわけでもなくて、ただの憂さ晴らしだとか、死に急いでいたとかそういうのだけだ。


 次々に無茶な行動をしてみんな死んでいった。

 しょうがない。だって、死ぬ理由をくれるんだから、そうもなる。生き残ってるやつで、まともなやつなんていなかったから。


 俺はどうだろうか。何もない。これで死んでもいい。


 本当にそうか?


 ここは、ラスト・インヘリタンスの世界で、俺はいずれ死ぬヒロインの明上██だ。

 わざわざ、今死んでやる必要もない。


 結局、生きる気力もなかったけど、死ぬのもなんとなく怖かったんだと思う。

 それに、今死んだらシナリオ的に迷惑がかかるだろうし。


 だから、いずれ頑張ってくれる主人公くんたちのために、この時は死なないことにした。


 中学の終わり、生き残ったのは三人だけだった。俺と原口と帆花だけ。


 これからは高校生活、本格的にシナリオも進む。


 主人公たちのチームに入って、今の状態で全うにやっていける気がしない。

 だから、キャラを被ることにした。今までと違って女の子っぽくて、明るいようなやつを。


 勇気がなかったから、悠里の名前を借りた。友達となら、なんとなくやっていける気がしたから。


 そうして、明上ユーリは生まれた。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


[アーカイブ更新]


 明上██:中距離の万能型アタッカーです。遠近両用、防御も使用できるためどの立ち位置でも機能します。


 好きなもの:まっすぐな人

 嫌いなもの:大事な人を助けられなかった自分


 スキル:セイントアーツ 神聖なイメージを具現化させる


 性能

 ・パッシブスキル:ウォール 自動で光の壁を発生させて防御する。二回目以降は確率で発動する。

 ・スキル1 ランス 正面の敵に攻撃

 ・スキル2 アロー 遠距離の敵に攻撃

 ・スキル3 ヒール 傷ついた味方を自動で回復させる

 ・特殊スキル ジャベリン 強力な遠距離攻撃を行う

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