TS娘、思案する
さーて、ぼっちにならないために、みんなのところにいくよー!
しかし、帆花のことはどうしようかな。いや、自分で撒いた種ではあるんですけどもね。威圧したから中学のことは話さないとは思うんだけど。
中学のことはあんまり話してほしくないんだよなー。私の核を曖昧にした状態でみんなとは接していきたいですからね!
なんでかっていうと、はっきりさせない方が不思議な女の子感あっていいじゃないですか。
いやね、中学の頃は男口調だったとか、私の暗い話とかを知ってほしくないのもあるんだけど。
例えば、友達がいなさすぎて見かねた陽キャが話しかけてきた……みたいなエピソードがあったりするわけ。
誰もが見惚れる美少女でも、中学時代はぼっちなこともあるんです!いやまあ、人目にはついたけどもね。
さてさて、訓練所についたけど……なんか私なしで雰囲気がまとまってるような?
えっ、なんか怜菜とコネクトリンクしてない?
前まで嫌ってた雰囲気だったのはなんだったの!
なんか、希沙と怜菜の仲も深まってそうなんだよね。みんな、仲良しならいいや。
「渚くん、ごめん遅れた」
「椎柴さんとはどうだったの?」
「人の秘密をペラペラ喋りそうだったので、怒っておきました、なんちゃって」
ぺろっと舌を出しておどけてみたのに、なんか反応が悪い。
渚くんの私を見る目が、なんか小さい子供を見るようなというか……庇護対象でも見てるような感じ?
うーん、確かに見た目は小さめ儚げ美少女ですけども。中身は相当いってるのにね。
もしかして、まだ熱でダウンしたときのを引きずってる……?
……やだなあ。そのイメージを払拭したいんだけど、なーんかダメそう。気分はもう雨模様、うじうじモードの明上ユーリです。
まっいいか。全員とコネクトリンクできるなら、実際その感覚を試してもらった方が早いし。
「さーて、私も訓練しちゃおっかな!渚くん」
「わかった、"コネクトリンク"」
手を握る。何かが渚くんとの間に繋がった。
……あれ、なんか手を離してくれない。えっ、何。もしかして惚れさせちゃった?
顔を上げて、渚くんの様子を見る。真剣な表情で、私との握った手を見つめている。
本当にどうしたの?
その時に、繋いだ手のひらが少し熱くなった。僅かな熱が手のひらからさらに奥に伸びて、そのまままっすぐに突き進んでいく。
知らない液体か何かに侵入されてるような、妙な気持ち悪さを感じた。
――これは知ってる感覚だ。通常のコネクトリンクじゃない、もっと深い繋がりの時のコネクトリンクだ。
思わず手を振り払った。接触していなければ、うまく深く入ってくることはできないから。
「渚くん……」
もう、そういうのよくないよ?
という抗議の意思を込めて目を細めてじーっと見つめる。渚くんの瞳が揺れて、左右を行き来してる。
「えっと……」
「コネクトリンクを深く繋ぐと、人の記憶が見えるってやつやろうとしたよね?」
「……うん」
しゅん、としてる渚くんに思わずちょっとときめいたのは内緒ね。
「渚くんのえっち」
「ちがっ……!その……」
ああ、心が洗われる。人のことを覗こうとしたのは本当だから否定しにくいのかな。ばつが悪そうな渚くんもあり寄りだな……。
興味を持ってもらったのは悪い気持ちじゃないけど、いい気持ちでもないですからね!
攻略を焦ってはいけないよ、ほどほどにね。
私のことなんてどうでもいいでしょ。そんなこと気にしちゃって、後からでかい傷になっても知らないよ?本当に。
あっ、もしかして私のこと好きになっちゃって心の内を知りたいとかかな?
んふふ、そうならちょっと許したくなっちゃうなあ。
「渚くん」
「は、はい……」
「私の心を奪うなら、もうちょっとアプローチ変えようね」
「何の話!?」
よし、一旦いじって満足したので訓練するぞー!
希沙と怜菜はすでに訓練中だ。早いね。
シミュレーターによって、仮想の深禍が構築されてる。
どういう技術なんだろう、これ。ちゃんと殴れるし、殴られるんだよね。
「《セイントアーツ》――"ランス"」
光の槍を生み出して握る。形成されてる深禍は前も見た蜘蛛タイプか。
ランヘリ一章に出てくる深禍は虫タイプが多い。機械とかが出てきてもおかしくないんだけどね。
……そういえば、私は渚くん好き好きムーブをしてるんだけども、別に好きではないってことがバレちゃったらしい。
反応がいいからいじってるのはそうだけど、結局渚くんは私の癒しだ。
だから、プラスの感情ではあるけどラブかと言われるとたぶんライクなんだと思う。
でも、実際どうなんだろうな。私はあんまり自分の気持ちを確認したことないし。
そういう意味では、私も渚くんに落ちる余地があるってことか。そうか?
その前に消えてしまうんじゃないかな。
ああ、でも。
もし好きになってしまったら後悔してしまうから。そこまでの魅力は持たないでほしいかも。
なんて、考えてるうちは思考がまとまってないんだろう。いけないいけない、暗いのなんて私に似合わないからね。
槍を振るう。蜘蛛型の深禍がバラバラになる。周囲から吐かれた糸を避けて、合間を縫って切り裂く。
今日は連携じゃなくて、ちょっと体を動かすぐらいでいいか。
全員とコネクトリンクしたのははじめてだろうから、その感覚を渚くんに掴んでもらう。これからのことを考えたら、たくさん経験しとくに越したことはないからね。
世界を救うんだぞ、主人公!
ふふふ、どうせだから活躍したらご褒美とか用意して上げよっかな。
まあ、一つはそのうちあげるものはあるんだけど。
私の体ぐらいでよければ、あげちゃうんだけどな。なんちゃって。
ランヘリのレーティング的には厳しいけど、実現可能だし。
と、冗談はこのくらいにしてちゃんと訓練するか。
……あーあ、どいつもこいつも私のこと気にしてて気持ち悪いったらありゃしない。
こうなるなら、一般モブに転生してもよかったかもね。まあ逆にすぐに死んじゃうかもだけど。
……そっちの方がよかったな。同じ死ぬキャラでも、こんな面倒なキャラやるぐらいならモブでよかった。
そうしたら……ダメだ。訓練中でも変なこと考えちゃうなんて、私もちょっと疲れてるのかも。
また、渚くんで癒されないと。こんな風に、手の震えたままだと訓練も、しにくいからね。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[アーカイブ]
訓練所ではシミュレーターで深禍と戦うことが可能で、それ以外にもカースシーカー同士の対戦も行えます。
訓練所にはシャワー室などの設備もあります。




