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第24話 秘密の約束と、新しい曲

冬休みも半ばを過ぎたある日。

俺たち三人は、再び天宮さんの家に集まった。

目的はひとつ――“新しい曲”を作るためだ。


「ねえ、今日はどんなテーマにする?」

凛が真っ先にノートを開いて、色とりどりのペンを机に並べる。


「この前LINEで話した“秘密の約束”っての、すごく良かったよね」

天宮さんがにっこりと頷く。


「確かに。冬の夜に、みんなでだけしか知らない約束をするって、

なんか特別な感じがする」

俺もギターを膝にのせながら同意した。


「じゃあさ、歌詞もみんなで考えようよ。

それぞれ“誰にも言えない約束”とか、“心の中だけの想い”って何かある?」


凛の問いかけに、

一瞬だけ部屋に静けさが流れる。


「私は……そうだなあ、

昔、お母さんと“絶対毎年一緒に初詣行こうね”って約束したことがあるの。

でも、中学生になってから部活が忙しくなっちゃって、

その約束、いつの間にか守れなくなった」


天宮さんが、少しだけ遠い目をする。


「今でも、ちょっとだけ胸が痛むんだ」


凛はしんみりと頷き、

「そういうの、歌詞にしたら絶対エモくなるよ」とメモをとる。


「俺は……みんなが大人になっても、

今日みたいに三人で集まれるって、

なんとなく思ってたんだ。

でも、最近それって当たり前じゃないのかも、って気づいた」


俺の言葉に、

二人ともふと黙り込んだ。


「“今”を守るのって、実はすごく大変なんだよね」

凛がぽつりと呟く。


「だからこそ、“未来への約束”が特別になるんだと思う」


天宮さんがそっと微笑む。


◇ ◇ ◇


そこからは、

三人で順番にキーワードを出し合い、

歌詞の断片がノートの上に少しずつ増えていく。


「秘密の約束」「冬の夜」「消えない星」「変わらない日々」

……どれも、三人にしか分からない“合図”のような言葉ばかり。


「ギターのリズムは、ゆっくりめがいいと思う」

天宮さんが手拍子をしながら提案する。


「じゃあ、コードはC→G→Am→Fあたりかな」

俺がぽろぽろと弾いてみる。


凛はすぐに「サビはみんなでハモろう!」とノートに書き込む。


歌詞もメロディも、

少しずつ、でも確実に“自分たちだけの歌”になっていった。


◇ ◇ ◇


作業の合間に、

温かい紅茶とクッキーを囲みながら、

三人の会話は自然と“秘密”の話題に戻っていく。


「実はさ――」

凛が突然小声になる。


「私、ちょっとだけ、

祐くんと天宮さんにまだ言ってないことがあるんだ」


「え、なになに?」

天宮さんが身を乗り出す。


「……今度の演劇部の公演でね、

先生に“主役をやってみないか”って言われたの。

でも、自信がなくて、まだ返事してない」


凛の告白に、

俺も天宮さんも驚く。


「すごいじゃん!」

「絶対できるよ!」

すぐに二人で口をそろえた。


「ありがとう……。

でも、本当にできるのかなって、まだちょっと怖いんだ」


凛の不安を包み込むように、

天宮さんが優しく手を握る。


「大丈夫。もし迷ったときは、

私たちが絶対応援するから」


俺も「約束」と指切りを差し出す。


三人の“秘密の約束”は、

こうしてまた一つ増えていった。


◇ ◇ ◇


午後も深まり、窓の外は薄曇りの冬空。

ストーブの前で三人は膝を寄せ合い、

それぞれが思いつくままに言葉やメロディをノートに書き加えていく。


「“秘密の約束”ってさ、誰にも言えないけど、自分の心を支えてくれるものだよね」

天宮さんがぽつりとつぶやく。


「うん、たとえば大きな夢とか、

“また来年も三人でここに集まろう”とか」

凛が同意する。


「その気持ちを歌詞にしようよ。

“約束の場所”ってフレーズ、どう?」

俺が提案する。


「いいね!

サビのラスト、“約束の場所でまた会おう”って入れたら絶対エモい!」

凛が一生懸命ノートに走り書きする。


ギターのリズムも、だんだん温まってきた。

天宮さんが低くハミングを添え、

凛が上のパートでハモる。

俺もメロディラインを支えながら、みんなの声を聴く。


“誰にも言えないけど、心だけはつながってる”

そんな想いが、三人の音に重なっていく。


◇ ◇ ◇


一度歌ってみようということになり、

三人で目を合わせて深呼吸。


「せーの!」


静かなギターのイントロに乗せて、

天宮さんが優しく歌い出す。


「冬の星座が見てる夜

小さな声で交わした約束――」


凛が重ねる。


「来年もきっとここで会えるって

信じてる、それだけで強くなれる」


俺は二人の声に包まれて、

ギターをそっと鳴らし続ける。


サビに入ると、三人で声を重ねた。


「変わらない気持ちを

あの星に預けて

約束の場所でまた会おう――

秘密のままでも、君とならずっと……」


歌い終えた瞬間、部屋に静けさが戻る。


しばらく誰も何も言わず、

ただ心がぽかぽかする余韻だけが残った。


「……これ、すごく良い曲になったね」

天宮さんが目を潤ませながら微笑む。


「自分で作った歌なのに、ちょっと泣きそう」

凛も笑う。


俺も小さくうなずいた。


「三人じゃなきゃ、絶対できなかった曲だと思う」


「うん。

来年の自分にこの歌を聴かせてあげたいな」


凛がそっと言った。


「絶対またみんなで歌おう。

“秘密の約束”なんだから、忘れちゃダメだよ」


天宮さんが人差し指を立てる。


「忘れるわけないって」


三人で小さく指切りを交わす。


◇ ◇ ◇


夕暮れが迫るころ、

それぞれ家に帰る準備を始める。


「凛ちゃん、公演の返事どうするか決まった?」


天宮さんが最後に聞いた。


「うん……やってみることにした。

今日みたいに勇気もらえたから、

たぶん大丈夫!」


「絶対応援する!」

俺も天宮さんも、声を揃えて言った。


「ありがとう。

みんながいるから、何でもできそうな気がする」


凛は少し照れくさそうに笑った。


◇ ◇ ◇


帰り道、

新曲のメロディを口ずさみながら歩く。


グループLINEには早速、

【“秘密の約束”音源(初バージョン)】

がアップロードされ、

三人で「何回も聴いちゃう!」「やばい、泣ける」と盛り上がる。


それぞれの胸の中に、

“秘密の約束”が確かに芽生えている。


新しい歌と、これからの希望と、

冬の静かな夜。


三人の青春は、

まだまだ終わらない。

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