第23話 冬休みの始まり、三人の小さな冒険
待ちに待った冬休み初日。
カレンダーに大きく丸をつけた今日、
俺たち三人は、ちょっとした“冒険”に出かけることにしていた。
「今日は新しいカフェ巡りしよー!」
朝から元気いっぱいの凛が、駅の改札前で手を振る。
天宮さんは少し厚着をして現れ、
白い息をはきながら「楽しみだね」と微笑む。
「凛ちゃん、今日のコース考えてきたんだよね?」
「うん、駅の向こうにオシャレな路地があるってSNSで見てさ。
カフェも雑貨屋もたくさんあるみたい」
「いいなあ。普段は通学路ばっかりだもんね」
天宮さんがうれしそうに頷く。
「じゃあ、今日は全員で“新発見”見つけるってルールで!」
凛の宣言に、俺も「異議なし!」と拳を合わせた。
◇ ◇ ◇
まず最初に立ち寄ったのは、小さな雑貨店。
「うわー、これ可愛い!」
天宮さんがガラス細工の動物たちを見つめる。
「凛ちゃん、見て見て!猫のキーホルダー、
おそろいで買わない?」
「いいね!私、うさぎにしようかな」
二人で夢中になって選び始めた。
俺は、二人の姿を眺めているだけで
胸がふわりとあたたかくなる。
「祐くんは?気になるのないの?」
「うーん……あ、これギター型のピンバッジだ。
なんか自分に合ってる気がする」
三人でさっそくおそろいの小物を手に入れ、
お互いに「似合う!」と言い合って笑う。
◇ ◇ ◇
次に向かったのは、SNSで人気のカフェ。
店内はアンティーク調で、
窓際の席からは冬の陽射しがふんわりと差し込んでいた。
「ホットチョコとパンケーキ、
どっちがいいかな……」
凛が真剣にメニューとにらめっこ。
「ここはパンケーキ推しみたいだよ」
天宮さんがメニューの写真を見せてくれる。
「じゃあみんなでシェアしよ!」
ふたりのやりとりが自然すぎて、
俺は「家族みたいだな」とふと思う。
運ばれてきたふわふわのパンケーキを、
三人で一口ずつ順番に食べ合う。
「しあわせ~」
凛がうっとりと目を閉じる。
「冬のパンケーキって、なんでこんなに美味しいんだろ」
天宮さんも頬をゆるめる。
◇ ◇ ◇
お腹も心も満たされて、
カフェを出たあとは、路地裏の公園へ。
小さな池があり、
ベンチで温かい飲み物を片手に話し込む。
「なんか、こうして三人でいると
“どこでも特別な場所”になるね」
天宮さんのその言葉に、
俺も凛も「ほんとだ」とうなずいた。
「来年も、こうして一緒に新しい冒険しようね」
凛が小さな声で約束する。
◇ ◇ ◇
公園のベンチで温かいココアを飲みながら、三人はぽつぽつと話を続けていた。
「祐くんは冬休み、何かやりたいことある?」
天宮さんが聞く。
「うーん、最近ギターをもっとちゃんと弾けるようになりたいなって思ってて。
あとはみんなでまた曲作りたい」
「いいね!“冬の魔法”の第2弾、作っちゃおうよ!」
凛が目を輝かせる。
「じゃあ、今度集まるときは“新曲発表会”ね」
天宮さんがうれしそうに提案する。
「それと……」
俺はちょっとだけ真剣な表情になって言った。
「来年も、またみんなでこうやって色んなところに出かけたり、
新しいことに挑戦したりしたい。
“当たり前”じゃないかもしれないけど、
できるだけ多く、思い出作りたいんだ」
二人は顔を見合わせて、
「うん、約束だよ」とそろって言ってくれる。
冬の日差しが、
静かに三人の肩を包む。
◇ ◇ ◇
帰り道、
路地の小さな雑貨屋で“ラッキーくじ”を見つけた。
「せっかくだから引いてみよう!」
凛が張り切って店員さんに声をかける。
「何が当たるかな……」
三人でドキドキしながら番号を引く。
凛は「おみくじチョコ」、
天宮さんは「冬柄のマグカップ」、
俺は「小さなメモ帳」をゲット。
「これでみんなにお揃いの“思い出グッズ”が増えたね」
天宮さんがほほえむ。
「今年の冬休み、すでに幸せ度MAXかも」
凛がマグカップを手にくるくる回す。
小さな冒険の締めくくりは、
ふとした幸運と、
何でもない会話――
それがなぜか、とても大切なものに思える。
◇ ◇ ◇
夕方、駅のホームで見送る時間。
「また次の冒険、計画しなきゃね」
「うん、次はどこに行こうか?」
「行きたいとこ、やりたいこと、いっぱいリストアップしとく!」
笑い合いながら、それぞれの電車に乗り込む。
窓の外に手を振って、
少しだけ名残惜しい気持ちが残るけど、
心はやっぱり温かい。
◇ ◇ ◇
その夜、
グループLINEにはさっそく「新曲作戦会議」のトークが飛び交う。
【凛】
「冬の魔法2、今度はちょっと大人っぽいの作りたいな!」
【天宮さん】
「歌詞考えてみるね。テーマは“秘密の約束”がいいかも」
【俺】
「ギター頑張ってレベルアップする!」
LINEの画面越しにも、
三人の距離がますます近づいていくのを感じる。
◇ ◇ ◇
ふと窓の外を見ると、
冬の星空が澄みきって広がっていた。
“冒険”は、きっとこれからも続く。
そう思いながら、静かな満足感とともに眠りにつく夜だった。




