第22話 未来の話
冬休みまで、あと数日。
学校はクリスマスムードに包まれて、
廊下にはツリーやリースが飾られていた。
「今日も放課後、カフェ行こ!」
凛がにこやかに誘ってくれる。
「もちろん!
テスト返却も終わったし、ひと息つきたいよね」
天宮さんが同意して、
三人で校門を出る。
駅前のカフェはすっかり常連気分。
窓際の席でホットココアとケーキを並べると、
自然と会話が弾み出す。
「ねぇ、冬休みって、どう過ごす予定?」
凛が一口ケーキを頬張りながら尋ねた。
「私は家族と小旅行かな。
でも、年明けには凛ちゃんの演劇部の公演もあるし、
楽しみなことが多いよ」
天宮さんは穏やかな声で微笑む。
「俺は家でギター練習かな。
あとは、みんなで新しい曲作ったり――」
「絶対やろう!この前の“冬の魔法ソング”、
ちゃんと録音したらバズるかもよ?」
凛がキラキラした目で言う。
「そうだね。
でも、みんなで何かやるのが一番楽しいな」
天宮さんがそっと微笑み、
俺も頷く。
◇ ◇ ◇
会話が一段落したところで、
ふと凛が“将来のこと”を話し始める。
「さっき先生に“進路どうするの?”って聞かれたんだ。
まだ高校生なのに、未来のことなんて想像つかないよね」
「分かる……」
天宮さんも悩ましげにうなずく。
「私、将来どんな仕事したいのか、まだ全然見えてない。
でも、今は毎日を一生懸命楽しみたいな」
「俺も同じかも。
ギターも、将来は趣味で終わるかもしれないし、
でもこうしてみんなと過ごす時間が何より大事だなって思う」
三人で“これから”について、
ゆっくりと語り合う冬の午後。
◇ ◇ ◇
店内のBGMがクリスマスソングに変わると、
凛がぽつりとつぶやいた。
「ねえ、来年の今ごろも、
三人でこうしていられるかな?」
天宮さんが優しく笑う。
「大丈夫だよ。
きっと、何があっても一緒にいる気がする」
「……そうだね。
私もそう思う」
凛も頷き、
俺は胸の中がじんわり温かくなるのを感じていた。
◇ ◇ ◇
カフェを出ると、外はすっかり暗くなっていた。
街路樹には無数のイルミネーションが灯り、
駅前のロータリーがまるで異世界のように輝いている。
「うわー、きれい……!」
凛が足を止めて、光のトンネルに見とれる。
天宮さんも隣で「冬って、なんだか特別な季節だね」と小さな声で呟く。
俺は、ふたりが少しずつ成長していくのを感じながら、
この瞬間がずっと続けばいいのに――と、ふと思う。
「写真撮ろうよ!」
凛がスマホを掲げてみんなを呼ぶ。
「はい、チーズ!」
三人で並んで、イルミネーションをバックに笑顔の自撮り。
その画像はすぐにグループLINEに送られてきた。
【凛】
「来年の冬も、みんなで撮ろうね!」
【天宮さん】
「うん、絶対に!」
【俺】
「また思い出、増やそう」
やりとりだけでも、なんだか心が暖かくなる。
◇ ◇ ◇
帰り道、
それぞれの家へ向かう途中、
天宮さんがそっと歩調を合わせてきた。
「ねぇ、祐くん」
「ん?」
「さっき凛ちゃんが言ってた“来年も三人で”って約束、
なんかすごく嬉しかった。
最近、みんながそれぞれに頑張ってるから、
こうして一緒にいる時間が少し特別に思えるんだ」
「分かるよ。
俺も天宮さんと凛といると、
自分が“今”をちゃんと生きてるって思える」
天宮さんは、
少しはにかんだ笑顔で「ありがとう」と言った。
◇ ◇ ◇
家に帰ると、
グループLINEには凛から追加のメッセージ。
【凛】
「今年はたくさん新しいことしたよね!
演劇も、ギターも、バンドごっこも!」
【天宮さん】
「みんなで一緒に何かを始めるの、
すごく楽しいって思えた一年だったな」
【俺】
「冬休みは新しい曲作ろう。
年明けの演劇も全力で応援する!」
【凛】
「ありがと! 二人がいるから頑張れる」
画面の向こうで、
三人の絆が確かに深まっていくのを感じる。
◇ ◇ ◇
その夜、
窓の外に広がる静かな冬の街を眺めながら、
俺は、
「来年も、再来年も、みんなで同じ景色を見ていられますように」と
そっと願った。
静かな夜の、確かな温度。
この三人で過ごす日々が、
きっとこれからの自分を支えてくれる――
そんな予感が胸に残った。




