4 憂鬱と杞憂
俺がロアの街に着いてから、五か月が過ぎた。なお取っている宿は大部屋のままである。女将さんが言うには、何でもほかの宿でも客がいっぱいらしい。人がとどまっているのかと思えばそうではなく、北から流れてきては南へと抜けていくようだ。
今日も今日とて仕事をしなければと俺はパーティーの皆とギルドへと向かう。なお金は既にそこそこ溜まっている。道すがら俺が肉を確保していくためだ。その数があまりに多く、街で売ると値崩れを起こしかねないのでギルドからの要請で南にある隣町の港町エリエルまで捌きに行ったほどである。なおその過程で分かったことだが、俺のアイテムボックスは時間経過がないか、非常に緩やからしい。俺は食べ物が腐らなくてラッキー程度に考えていたのだが、ラッシュさんは「またギルマス案件が増えた」と胃をしくしくさせていた。それを見た俺ももれなく胃がしくしくした。
ギルドに入ると、いつもとは少し様子が異なることに気が付いた。なんとなく緊張感が漂っているというかなんというか。よくよく気をつけて観察してみると、ギルド職員があわただしく駆け回っている。
いつも通り依頼を探すか、この事態の確認をするか。ラッシュさんが悩んでいると、受付で何やら話していた禿頭の男がこちらを見つけて手招きをする。キール支部長だ。
「ラッシュ」
「ギルドマスター。この事態は一体……」
「話は上でする。メロ、資料をまとめて二号室へ届けてくれ」
メロと呼ばれた垂れ犬耳の受付嬢は頷いて奥へと走っていく。俺たちはキール支部長に続き、二階の手前から二番目の部屋に入る。
「座ってくれ」
ギルドマスターに促され、俺たちは席に着いた。
「緊急の依頼だ。ベルヌの北西でゴブリンの大集団が見つかった」
「大集団? 集落ではなく?」
そうラッシュさんが問いかけた時、ノックの音がしてキール支部長の誰何に答えて「資料をお持ちしました」とメロさんが丸めた羊皮紙と紙束を幾つか持ってきた。
中身はいくつかの報告書と、地図だ。
ここで俺はこの世界の地理を始めて知ることになる。この世界、アルカフィルにある大陸は、大きなドーナッツ状をしているらしい。正確には今いるロアの南、港町エリエルのあたりで途切れているし、他にも抉れたようになっているところもあるので食べかけのドーナッツという趣だが。
キール支部長は大陸の北端、山を表現したようなマークをした部分を指さす。
「北の山脈で魔物の異常が発生した。ここ六、七十日ほど人が流れてきてるのはそのためだ」
キール支部長はそういうと、もう少し小ぶりな羊皮紙を広げる。それは大陸の北西部を拡大したものであり、中央にライクロイック王国と書いてあった。おそらく、このロアの街が所属している国の名前なのだろう。今まで気にすることもなかったから初めて知った。
ロアの街は王国の南東部に位置しているらしい。すぐ南には港町のエリエル、北方向中央付近にはベルヌの街が描かれている。羊皮紙の中央には王都が描かれているが、ベルヌ、ロア、エリエルの三都市は王都との間に山脈を挟んでいるらしい。ロアやエリエルから王都に向かう場合、山越えを想定しないならばベルヌを経由していくことになるような立地だ。その地図上で、ベルヌの西側にある山脈の切れ目あたりをキール支部長は指差す。
「北からベルヌに向かうまでに点在していた村のいくつかと連絡が取れなくなった。六十日は前のことだ。調査を進めた結果、北から流れてきたゴブリンの集団にやられたらしい。そのゴブリンたちの潜伏場所が、ここだ」
「調査は誰が?」
「ベルヌからの応援要請があったから蒼烏に向かわせた。ほとんど事前報告のままだが、ゴブリンの位置は蒼烏からの情報だ」
「ガルムのパーティーなら巧くやるか……猶予は」
「ほとんどない。連絡員からの情報では集落化の兆候があったらしい」
「受けてくれるな?」とキール支部長が俺をちらりと見てからラッシュさんを見る。
「ミア、お前から見てシグルドはどうだ?」
返答を返す前に、ラッシュさんはミアにそう問いかける。これは俺の戦闘訓練を主にミアが見ていたからだ。双剣使いが何故槍の使い方を熟知しているのかは気になったが、彼女のおかげである程度は戦えると自負している。なお、訓練の後にミアが際どい恰好を晒して俺に絡むまでがセットだ。不本意ながら。
「ゴブリン程度なら集団相手でも大丈夫だと思う。でも、上位種が出たら自衛と援護に回した方がいいはず」
ラッシュさんは熟考する。だがその時間は十秒にも満たない。
「すぐに準備して立つ。出立は明日だ。いけるな?」
その言葉に各々が了承の意を示す。
その後の動きは速かった。ラッシュさんは必要な情報を得るのと依頼の内容を詰めるのにキール支部長ともう少し話すらしい。あとの皆は買い物だ。リューグは毒なども使うため薬の調達に行った。ミアとイリスさんは俺と一緒に食料調達だ。保存の利く黒パンと干し肉、干し魚を買い込み野菜類も根菜を中心に買っていく。買ったものは種類ごとに収納袋に入れ、それをさらに俺のアイテムボックスに放り込む。
一通り買い物を終え、宿に帰った俺はベッドに倒れこんだ。慌ただしく準備して肉体的に疲れ、初めての大きな依頼ということで気疲れしたこともあってすぐに瞼が微睡む。
荷物はアイテムボックス頼みなので旅に付き物である荷造りをしなくて済むのは有難い。そんなことを考えながら、俺の意識は闇の中に落ちて行った。
しばらく後、寝ていた俺の鼻腔を食事の匂いが誘った。そろそろ飯時かと頭が覚醒を始める。
目を開ける。視界の中に人はいない。男性陣はまだ帰っていないか、食事に行っているのだろう。そんな俺の耳に、ちゃぷちゃぷと水音が聞こえる。なんだと思って音の方向を見ると、白い背中が見えた。ミアが濡らした布で体を拭っていた。上半身裸の下着姿で。
後ろに伸びた髪は留め具でアップにしてあり、細いうなじが覗いている。腕を上げて脇の辺りを拭っているため、斜め後ろから見ている俺からは腕で押されてひしゃげた乳房の丸みが見えてしまっている。一見して鍛えられたことが分かる体でありながら、腰のくびれやところどころの丸みが否応なしに女性を感じさせる。だが、一番目立つのは、その背中に付けられた袈裟切りにされたような三本の大きな切り傷の痕。
処理が追い付かない俺の下で、ベッドがギシリと音を立てた。
ミアと俺の視線が絡まる。ミアの口角が、にやーと吊り上がった。
「……えっち」
「ごめんなさいッ‼」と叫びながら俺は部屋から転がり出た。閉めた扉を背にしゃがみ込み、激しく脈打つ心臓を宥める。一体今のは何だったとか、意外と胸が大きかったとか、うなじとくびれのラインが綺麗だったとか、背中の傷は何だとか。そういうのは全て頭から吹っ飛んで、覗き魔という単語が俺の頭を駆け巡る。頭を抱えて「うぁ~」と唸っていると、不意に背中の扉が開いて背中から転がった俺は強かに床に頭を打ち付けた。そこには、俺を見下ろすようにシーツを体に巻き付けただけのミアが立っていた。
「反応自体は新鮮で面白いんだけど、実際されると少し腹立つね? なんか女の沽券とかそっち方面で」
俺はミアを見上げ、すぐさま視線を外して目をぎゅっと瞑る。見えちゃいけないものが見えていたからだ。胸の先で自己主張激しく盛り上がっている部分とか、引き締まった足の付け根とか。
「なによー。見たくもないってことー?」
「いや、あの、見えてます。……下着」
さすがに下着を見せる気はなかったのか「おっと」と声を上げてミアが一歩下がったのが気配で分かった。
「こういう時、男ってガン見するもんじゃない?」
「人によると思います」
「ふーん」
顔を手で覆いそっぽを向く俺に対し、何を思ったのか。ミアの方からしゅるりと衣擦れの音がしたかと思うとパサリと服を落としたような音が続いた。
「……何を、しているので?」
「知りたいなら、自分で見て?」
ムクムクと起き上がった思春期混ざりの好奇心を叩き潰す。それはもう完膚なきまでに叩きのめす。きっとミアは俺をからかって楽しそうな顔をしているのだろう。それが想像できるだけにいっそのことホントに見てやろうかとも思うがそれは負けた気がするので鋼の意思で我慢する。
「紳士だねぇ」
均衡を破ったのはミアだった。顔を覆ったままの俺を引き起こすと、扉の外に放り出す。パタンと音を立てて閉まった扉にようやく俺は閉じていた目を開けた。すると扉が少しだけ空いて、ミアが顔を覗かせる。はみ出た白い肩がいやに艶めかしかった。
「ちょっと待ってて。すぐ着替えるから」
三分ほどしてミアが部屋から出てくる。よかった。いつもの姿だ。
何とはなしに俺はミアの胸を見る。さらしでも巻いているのか、普段は胸当てで抑え込まれているのか。さっき一瞬見えたサイズ感よりはだいぶ小さく見える。どうやら着やせするタイプのようだ。
「ふむ。興味がないわけじゃないみたいだねぇ」
「……心臓に悪いんで二度としないでください」
「にしし。それは、あたしの気分次第」
連れだって一階の食堂に降りる。奥の席では、三人が既に食事を始めていた。
「上が少し騒がしかった。何かあった?」
「いやー、シグルドに身体拭いてるとこ見られちった」
ミアの回答にラッシュさんが「ぶほっ」と噴き出す。イリスさんはあらあらと困ったような笑みを浮かべていた。
「ちょっ、ミア⁉ 言うんですかそれ!」
「ミア……。だから普段から気を付けろと」
ラッシュさんがミアを嗜める。ここで怒られるのがミアな辺り、俺が出会うまでのミアの行動も推して知るべしである。
「でも二年一緒にいて俺もラッシュもそうなったことはない。これまでのシグルドもそう。いつもフリだけで、ミアが俺たちに肌を晒したことは一度もない」
リューグのその言葉に、ラッシュさんは一瞬そういえばという顔をしたが、すぐにやめた。この気遣いのできる細かいことを気にしない男はすぐに口を出す問題ではないと結論付けたようだ。
確かにリューグの言う通り、ミアはルーズっぽいし、脇が甘いような素振りは多かった。だが、直接的なのはこれが初めてだった。
ちらりとイリスさんに視線を向けてみると、何かを知っているようで。とても優しげな目をミアに向けている。
「まぁいい。二人とも席に着け、注文は適当に。酒は明日に響かない程度にな。まぁミアはそもそも持ち越さないし、シグルドはあんまり飲まないから大丈夫だとは思うが」
手早く注文を済ませ、これだけはすぐに出てくるエールに口を付ける。最初のころは苦みが先行していたが、最近ではその芳醇な香りや仄かな甘みを感じる余裕も出てきた。
「全員揃った。打ち合わせをしよう」
リューグの言葉に、ラッシュさんはもう食べ終えているのか食器を置く。同じく手を止めようとしたイリスさんには「食べながらでいい」と手で制した。
ちなみにイリスさんは酒ではなく果実水だ。酔っているときの記憶は飛ぶらしいがTPOは弁えられるらしい。
「先にギルマスが言っていた通り今回は時間がない。イリス、ミア、シグルド。食料調達の方は問題ないな?」
「ベルヌまで十日。往復と補給できないことを考えて一応三十日分は確保しました。シグルドのアイテムボックス様様ですね。野菜類も十分です。生肉は買ってませんが、前に狩った鹿と猪のお肉がまだあるはずなので大丈夫かと」
「ありがとう、わかった。悪いが料理している暇は夜ぐらいしか無さそうだ。日中は歩き通しになる。あとシグルド、今回狩りは無しだ」
運ばれてきた料理をつつきながら俺は頷いた。強行軍になることは理解している。今までは俺の戦闘経験を積むために弱い魔物やら野生動物やらを仕留めていたが、今回はそういう場合ではない。
「出発は日の出前。今日は早く寝て各々体を休めるように。何か聞きたいことはあるか?」
質問が出ないことを確認すると、ラッシュさんは席を立ち、部屋へと戻っていく。きっと有言実行するのだろう。隣でリューグも立ち上がる。ラッシュさんに続くようだ。
テーブルには、女性陣二人と俺が残される。エールの代わりに果実水を頼みつつ食事を頬張っていると、訓練がてら身体強化と知覚強化を常に使っている俺の耳におそらくは遮音結界をつかっているであろう女性陣のひそひそ話が聞こえてきた。
「ミア、今回のはやりすぎたのではなくて?」
「うん。私もそう思う。気をつけるよ」
「自覚があるかはわかりませんが、貴方、最近シグルドへのちょっかいが増えてますよ」
「え、マジで?」
「はい。うちのニブチンたちは……と言ってもリューグは違和感くらい感じてそうですし、ラッシュはあえて気にしてないのでしょうけど。おそらく単純に好意を寄せていると思っているでしょうね」
「…………」
「ミア。ちゃんとシグルドを見てあげてください。その上でその態度を取るなら私は何も言いません。でも、今のあなたは違う。シグルドは、彼ではないのですよ」
「……わかってる」とうつむくミアを極力無視して俺は口の中身を果実水で流し込み「じゃあ俺も寝ますね。明日に備えないと」と席を立つ。イリスさんは「おやすみなさい」と、ミアは何か言おうとしていたが、その言葉を聞く前に俺は踵を返した。
部屋に戻るとラッシュさんは既に床に就き、リューグは彼の予備武器である短剣を手入れしていた。
「何かあった?」
「何も」
短く答えて、俺は帰ってきた格好のままだったのでコートと軽鎧を脱いでベッドに入る。そしてシーツを深くかぶると、固く目を閉じた。
今は何も考えたくなかった。何も話したくなかった。夜も更けた頃にミアの小さな声で「シグルド」と呼ばれたが、無視した。
最近のミアの態度に思春期男子のよくある勘違いを起こしていたことに今更気が付いた俺は先の二人の会話も相まって恥ずかしいやら悔しいやらで頭の中がぐちゃぐちゃだった。だが俺は、有難いことに行き場のない感情の抑制の仕方を知っている。すべて閉じ込めて、蓋をすればいいのだ。そして蓋をしたことすら忘れてしまえばいい。下策も下策であることは重々承知だが、今の俺にはそれしかできそうにない。
そうこうしていると、意外と朝が来るのは早かった。まず目を覚ましたのはラッシュさん。いつも一番に起きており、今日も朝から元気なようだ。聞いているところによると、この後はリューグ、ミア、イリスさん、俺の順で起きるのが常なのだが。
「ん? おはようシグルド。今日は早いんだな」
「早朝出発と聞いていたので頑張りました」
嘘である。寝れなかっただけだ。だがこれでも問題ないのが魔法のある世界のすごいところ。闇系統の精神操作魔術には睡眠の術があるが、その逆の寝れなくなる術もある。これを使えば二十四時間戦えますかなんて目じゃない。文字通り体が限界を迎えてぶっ倒れるまで寝ずに動ける。最も、脳への負担も大きいのだが。
それを見通したかのように「無茶はするなよ」と俺に声をかけたラッシュさんは手早く鎧を着始める。俺も軽鎧を身にまとい、ロングコートを羽織った。
何とはなしにミアの方を見る。嫌な夢でも見ているのか、眉が八の字になっている。
昨日までなら、無自覚に愛おしいとでも思ったのであろうか。
そんなことを考えていると、着替えを終えたラッシュさんが物理的に俺の視線を外させた。
「あまり女の寝顔を見てやるもんじゃない」
ラッシュさんに誘われて一階に降りる。カウンターには、眠そうな顔をした男の子が立っていた。夜の番をするために雇われている男の子だ。
「ぁ、おはようございます。早いですね」
「おはよう。テーブルを借りるぞ」
「どうぞ」
まだだれもいない食堂に二人で座る。俺はアイテムボックスから黒パンと干し肉を取り出すとラッシュさんに手渡す。厨房の方からは朝の仕込みをしている音が聞こえる。二人で黒パンをもそもそかじっていると、リューグが上階から降りてきた。片手を挙げて応え、リューグにも食事を渡す。続いて降りてきたのはミアだった。俺を見て少しばつの悪そうな顔をし、すぐにその表情を隠す。俺から食料を受け取り、隣へ腰かけた。
「……おはよう」
「えぇ、おはようございます」
端から見れば普通の朝の挨拶。だが普段から俺たちを見ていればわかる程度の違和感。
どうしたとばかりに干し肉を咥えながら俺たちを見る二人。微妙な空気が流れる中、しばらく遅れてきたのはイリスさん。よく見ると少し髪が湿っている。体を拭っていたのだろう。彼女は機微を察すると、俺とミアに苦笑いを向けた。
「おはようございます。皆さん。少し遅れてしまいました」
食事を受け取りながらイリスさんは席に着く。
「イリス。すまんが手早く食ってくれ」
わかっています、とイリスさんは黒パンと干し肉をいつもよりも小さくちぎりながら、ものすごい勢いで口の中に入れていく。いつものゆっくりとした食事ペースからは考えられない早さだった。
「イリスさん、早く食べられたんですね……」
「これでも冒険者ですもの。早食いスキルは必須ですよ」
少し違和感を残したこの空気の中、ふんわりとしたイリスさんの笑顔は癒しであった。なお、この世界はスキル制ではない。冒険者の早食いはただの職業病だ。
出立の用意を整え、跳び兎亭を出る。当初の予定より一ヶ月早く出立する俺たちに女将さんが気を利かせてくれ、「旅先でつまみな」と弁当を持たせてくれた。弁当というか、中身が見えない大きめの瓶二つだったが。
「行くぞ」
ロアの街を出る。身体強化を使い、早足に街道を進んで行く。身体強化を入れた上での足の速さはミア、俺、リューグ、ラッシュさんとイリスさんが同程度となる。俺が早いのは身体強化の出力が高いせいで、ラッシュさんが遅いのはパーティーで唯一重装備だからだ。なお持久力に関してはミア、ラッシュさん、リューグ、イリスさん、俺となる。多少鍛えたとて異世界の冒険者家業を続けてきた人間に体力で敵う訳がない。結果どうなるかというと。
「…………」
「シグルド。晩飯、食えるか?」
「スープだけにしておきます……」
寝不足と合わせて力の出し加減を完全に間違えた俺は、野営の準備もそこそこにダウンしていた。
「飛ばしてたからねー。明日からはもうちょっとスピード落とした方がいいかも」
ミアが手を差し出そうと動く前に、俺は体に鞭打って起き上がる。そしてさっさと焚火を囲む位置に座ると、今日の料理番であるイリスさんから器を受け取る。
「いただきます」
今日はイノシシ肉と野菜のスープ。街で見つけて確保した味噌らしき調味料を入れているので見た目と匂いは豚汁だ。固形物がきついので具材少な目でお願いしている。
味付けはいつものごとく薄味だ。だが今はそれが有難い。
ちなみに跳び兎亭の女将さんがくれた瓶の中身はザワークラウトっぽいこれまたキャベツというよりは白菜に近い野菜の酢漬けとまんまズッキーニのピクルスだった。時間経過のないアイテムボックスで新鮮な状態で野菜を運べることを知らない女将さんからの「ちゃんと野菜も食べな」というメッセージだ。宿の食事でも出ていたので味は知っている。癖になる酸味でけっこう美味い。
皆が黒パンを齧りながら晩御飯を消費していく中、俺も体が酸味を欲しているのでピクルスに手を伸ばす。
そんな俺の様子を見ていたラッシュさんは、食事を口にしながら俺に言った。
「シグルド。お前、今日の見張りは免除してやるからしっかり体を休めろ」
「え、いいんですか?」
「ああ。いくら急ぎとはいえ強行軍が過ぎた」
聞くところによると、すでに歩きであれば四日分に当たる距離まで来ているらしい。ちなみに馬なら飛ばせばロアとベルヌの間は一日で走破可能だそうだ。だがそれは軽装備であることが前提な上、馬の数も確保でき無そうだったので断念したらしい。そもそも俺は馬の乗り方を知らない事を話すと、ラッシュさんは「その場合はミアの後ろに乗せるつもりだった」とのこと。なお人選は単純に二人載せた馬を制御できるかどうかと荷物を含めた総重量を比べた結果だそうだ。
「馬の乗り方も訓練しとかないとな」
「そうですねー」
乗れる気はしないが。いや、平均的な能力は与えられているのだから練習すれば人並に乗れる……か?
考えるのも疲れたので、手早く食事を終えると俺は皆に断ってテントの中に潜り込んだ。
なお冒険者パーティー金獅子は俺の加入に伴いテントを一張購入した。三人入れる中型のやつだ。中型の中でも大きめのものを買ったので、最悪詰めれば五人全員が入れる。
アイテムボックスを使う応用で空間拡張が出来そうな気はしているのだが、おそらくテントは崩した時に魔術が解けるのと、どうせまたラッシュさんに「ギルマス案件」と言われるのが目に見えているのでやっていない。
毛布に体を包んで横になる。話し声が聞こえるが、あの時から知覚強化は必要時以外は切っているので何を話しているのかは分からない。分からないほうがいいのだ。
目を閉じた俺は、自分が思っているよりも疲れていたようで。何か余計なことをを考える余裕もなく、深い微睡の中に呑まれていった。
二日目。案の定というほかないが、俺の目覚めは一番遅かった。ラッシュさんに起こされ、寝ぼけた頭のまま黒パンと干し肉を齧りながら歩き始める。進行速度は昨日よりも緩やかだ。それでも普通に歩くのに比べて倍以上のペースで走っているらしいのだが。
「シグルド、今日は大丈夫そ?」
俺の横を並走するミアが聞いてくる。流石は獣人族といったところでこの中の誰よりも余裕そうだ。
「ええ。大丈夫ですよ。昨日は恥ずかしいところを見せました」
「大丈夫だよ。今日はマシなはずだから、頑張って」
俺の背中を押そうとしたミアの手を、俺は不自然でない程度に距離を取って避ける。
普段通りのミアのスキンシップ。仲間になってから、徐々に多くなっていったそれは嬉しいものだったが、今の俺には少々堪える。
気分的にはスキンシップ過剰な付き合いをされて勘違いした挙句、その理由が好意ではなく別れた元彼を想っての寂しさを紛らわせるためだったと知ってしまった時のようなものだ。そんな経験があるわけではないが、きっと近いはず。そんな状態で件の相手とそれまで通りに接することができるかと聞かれれば、昨今の日本での男子の草食化の例に漏れずヘタレであり恋愛経験もない俺は断じて否と答える。それが、意識の外で俺の行動に現れ始めていた。具体的に言えば、ミアとの物理的接触を極力避けるようになったのである。
異変は、全員が気づき始めていた。
その日の夜。見張りと火の番をしているとテントから物音がして一人の男が出てくる。ラッシュさんだ。
「交代の時間にはまだ早いですよ」
そんな俺の言葉を無視してラッシュさんは俺の向かい、焚火を挟んで反対側にどかりと腰を下ろす。
「ミアとなんかあったか?」
「…………別に、何もないですよ」
単刀直入。訊くべきことは訊く、言うべきことは言うという姿勢は、流石というかなんというか。ちゃんとリーダーをやってるんだなと俺は素直に尊敬する。だが、事実として何かあったわけではないのだ。俺が勝手にいろいろ考えてしまって、どうしようもなくなっているだけで。
「ミアの付き合い方が嫌になったか?」
「別にそういう訳では……」
「ならお前がそうなった理由があるわけだ」
こっちを見ろ、と言われて焚火に落としていた視線を上げる。ラッシュさんの蒼い瞳が俺の言葉の真偽を測るように射貫いてくる。
「ミアから昔の男の話でも聞いたか?」
一瞬、俺の目が泳いだ。だがその一瞬を見逃すほどラッシュさんは甘くはない。「ハァ~」と盛大なため息をつくと、弱くなっていた焚火に薪をくべて話を続ける。
「今のお前の行動はな、好きになった女の過去を下手に詮索して勝手に怪我した男のそれだ。好きだった女に彼氏がいたことが分かった時の奴らとそっくりだからな」
「否定はしないですけど。別にミアに対して恋愛感情は抱いてませんよ。まだ勘違いで済みましたから」
「勘違いだろうが何だろうが、お前の中に生まれた感情は本物だろうが。違うか?」
そういわれて俺はぐっと言葉に詰まる。思い出の箱に詰めようとしたものを、無理やり引っ張り出されているような気分だった。
「本来なら俺が口を出すべき問題じゃあないんだがなぁ。お前みたいなタイプはどう転ぼうが発破をかけて一端ケリを付けさせないと長引くんだよ。自覚、あるんじゃないのか? 自分が我慢して、感情に蓋をすればいいとか思ってないか?」
図星だった。それはまさに俺がしようとしていたことだったから。
「お前、今日一日ミアがどんな顔してたか思い出せるか?」
そう言われて、俺は気づく。ラッシュさんはいつも通りだった。リューグは少し疲れたような顔だった。イリスさんは困ったような顔だった。ミアの顔は、思い出せない。それはそうだ。おれは今日一日、彼女の顔をまともに見ようとしていなかったのだから。
「いつも通りだった」
「え?」
「いつも通りだったんだよ。だがそこにお前の行動を重ねて見るとどうなると思う。痛々しくて見てられなかったぞ」
想像してみる。少々スキンシップ過剰なミアの言動が、ことごとく俺に躱され、防がれ、跳ね除けられる様子を。それでも普段通りを貫く彼女の姿を。
「理解したようだな」
「はい」
ミアは決して無神経な奴じゃない。そんな彼女が普段通りであったとするならば、必死でそれを取り繕っていたということに他ならない。
大人げない態度を取ったと自覚した心が、自分自身を苛み始める。すると意識を現実に引き戻すかのように、細めの薪で俺の額がコンと突かれた。
「そうやって自分に閉じこもるからよくないんだ。と言っても変えられんだろうな、すぐには。うーん……少し下世話な話に変えてみるか」
そういってラッシュさんは雰囲気を変える。自分のことは近所の兄貴分とでも思えと言ってきた。
「そもそもお前、ミアが昔の男のこととか引っ張るような玉に見えるか?」
いきなりそんなことを言われて面食らう。しかしその言葉を考えてみると、確かにミアはそんなことより次、という方がしっくりくるタイプだ。
「見えないよな? ならお前が見たか聞いたかしたことは色恋の話じゃないってことだ」
訝しげな視線を向けると、言うつもりはないが確証はあるとのこと。
「じゃあ次。出発前夜にリューグが言ってたこと覚えてるか?」
「リューグ? なんか言ってましたっけ?」
考えるが、思い当たることはない。そもそも二日前にした日常会話など覚えてはいない。
「ミアは俺とリューグに対してはガードが堅いって話だ」
「あー、あの時の……」
言われて思い出す。ほぼ全裸のミアにからかわれた後のことだ。確か発言や行動が際どいだけで実際に肌を晒したことは無いとかなんとか。
しかし今考えると妙な話だ。なにせ彼女は、訓練後に熱いとかなんとか言ってよくさらし姿になったり、さらにはさらしを緩めて胸元を広げて見せたりして俺の反応を楽しんでいたのだから。
時々の事を説明しながら思い出しているとどうしても顔が熱くなる。するとラッシュさんは呆れたような顔をした。
「んなことしてたのかアイツ……。そりゃシグルドもこうなるわ。……まぁ、なんだ。少なくとも俺はあいつの肌着姿なんて見たことないぞ。むしろイリスが谷間に手を突っ込んで汗を拭いてる光景の方がまだ見る」
それは確かに俺もたまに見る。胸が大きいと結構谷間に汗をかくらしい。
「話が逸れたな。まぁ、それだけミアはお前に気を許してるってことだ。それにさっきお前にも言ったことだが、勘違いだろうが何だろうが心の内にできた思いは全部本物だ。こうして考えてみると、好意の種類はいくつもあるが、ミアの中で生まれたお前に向けられた好意、もしくは関心は本物ってことにならないか?」
ラッシュさんは言っているのだ。自分の気持ちを否定するなと。見えたものを信じていいのだと。
なんと甘い考えだろうか。だが、詭弁だと切って捨てたくはなかった。
俺は自分の中に生まれた想いとちゃんと向き合おうと決める。一人の男が、ちょっと優しくされて、脇の甘いところを見せられてコロッと惚れてしまったというだけのなんとも情けない話と。しかし客観的に見ると、自分にだけ甘いのだ。そりゃそうなるわという話でもあり、俺の中に「俺が悪いこと一つも無くない?」と開き直りにも似た思いが湧き上がってくる。
「なんかミアに腹立ってきました」
「なんか着地点がズレた気がするが、元気になってきたな」
「あー、別にミアを嫌いになったとかじゃ無いんで。むしろ惚れたことをちゃんと自覚しました」
「そうか。いい顔になったじゃないか」
そういってラッシュさんは笑う。あと、この件について俺がどう動くかは勝手だが、ケツは拭いてやるとのことだった。
交代の時間が来て、俺はラッシュさんに後を引き継ぐとテントの中に潜る。
俺は今日、自分の中に一つの結論を出した。迷いがなくなったと言い換えてももいい。だが想いを告げることは無いだろう。きっとそれでいいのだ。
今日はいい夢が見れそうだ、と心の中で独り言ちて、俺は眠りについた。
三日目の夜。俺たちはベルヌの街にいた。ここはベルヌの冒険者ギルドの待合。ロアとは異なり食事処が併設されており、酒も提供されている。つまりは時間的に飲んだくれている冒険者がそこそこいるということで。
「そこのおねぇちゃんたち、一緒に飲もうぜ?」
「お酌してくれよ~」
ミアとイリスさんに絡む輩が一定数いるのである。ちなみにパーティーの第一防波堤であるラッシュさんは依頼の件でほかの冒険者とギルドマスターの執務室で会議中である。またこういう時にリューグは役に立たない。面倒ごとは御免とばかりに我関せずを決め込むからだ。しかしそこは冒険者。ミアとイリスさんは強かだ。
「ウフフ、私には心に決めた殿方が居りますので~」とイリスさんは誘いをすべて跳ね除けていく。ミアはというと、聞いていた話では適当にあしらいつつ、しつこい奴らには拳が飛ぶと聞いているが。しかし今日は俺が居る。ミアにとっては格好の獲物である俺が。なおミアとの接し方は朝の時点で改めている。遠慮がちに差し出した手を取った時の、一瞬見せた安堵の表情を俺は忘れないだろう。だから彼女は笑う。俺を見つけて、チェシャ猫のように。
「私にはこいつがいるからね。やだよーだ」
ミアは俺の左腕を取って胸に抱く。胸当てのせいで感触が硬いのが残念だった。
冒険者どもから「けっ」という視線が届く。だが俺は昨日の俺とは違うのだ。なので、好きなように行動してみた。
空いている右手をミアの頭に伸ばす。さわりと頭頂部の髪をなでると、ひょこひょこ動いていた猫耳がビクンと跳ねた。この行動に一番驚いたのはミアだった。なにせ俺からのアクションは、これが初めてだったのだから。イリスさんは微笑ましいものを見たような顔であらあらと笑顔を見せている。
これで俺たちの関係がどうなろうが知ったこっちゃない。どうなろうとパーティーに不和が起きないようにラッシュさんがなんとかしてくれるハズだ。俺自身、自己満足のためにやってるだけで既に割り切っていることだし。
というか、ミアの髪は撫でているとさらさらと手触りがいい。耳の付け根は思った以上に肉厚でフニフニしてやると感触が面白い。
一応冒険者たちに睨みを利かせておく。唾を吐きそうな視線が増え、何故か砂糖を吐きそうな顔も増えた。
「あの、シグルド? その辺で……」
イリスさんに言われて横を見ると、真っ赤になって俯くミアの顔。ぷしゅ~、と頭から湯気が出ているのが幻視できるが、俺の左腕は離さないようだ。
意外と言えば意外な初心な反応。ミアは自分から仕掛ける分には大丈夫だが、やられるのには頗る弱いらしい。
いい反撃材料ができたと俺は内心ほくそ笑んだ。これからはやられっぱなしではないのである。
ミアの頭から手を放し、そのまま頬に添える。ミアの肩がビクビクと跳ねた。面白い。
触ったことで初めて知ったが、この世界の獣人は人間の耳もあるタイプらしい。ならば獣の特徴は聴覚を司る器官というよりは特殊な感覚器官なのだろうか。
「シグルド? お前、何やってんだ?」
ミアへの仕返しから興味の解消に移った俺がミアの猫耳をモフモフしていると、会議を終えたらしいラッシュさんがギルドの二階から降りてくる。隣には俺たちに先立って出発した蒼烏のリーダー、ガルムさんと、もう一人見知らぬ女性冒険者がいた。おそらくこの街を中心に活動しているパーティーの人だろう。
「いつもの調子でやられたのでやり返しました。後悔も反省もしていません」
「お前……、吹っ切れたなー」
ラッシュさんは顎に手を当ててニヤニヤしている。だがすぐに雰囲気を一変させると、俺たちを待合席に着かせる。
「今回のゴブリン討伐作戦は俺たち金獅子、ガルムのとこの蒼烏、この街の金ランク、月光蝶の計三パーティーでの合同作戦となった」
ラッシュさんの言葉にそれぞれのパーティーを見ると、蒼烏は男四人、月光蝶は女四人のパーティーらしい。体格的には両パーティーとも防御よりは機動力重視のようだ。また蒼烏は接近戦重視で、月光蝶は魔術重視の編成であることを説明される。
「基本、パーティーを超えての連携は無しだ。だがそれぞれでだいたいの役割が異なる。蒼烏は遊撃、月光蝶は火力、俺たちは盾だ。メインは俺。ミアも守りの剣を意識してくれ。リューグとイリスはヘイトを稼げ。立ち位置は俺とミアの後ろだ。シグルドは……」
「麻酔弾で全体の足止め、ですね」
そうだ、とラッシュさんは頷く。
報告によれば、ゴブリンの数は六〇を超えるという。既に上位種である体格の良いファイター、魔法を使うメイジが確認されており、予断を許さない状況になっている。なお、ゴブリンが集落化して討伐依頼が出される基準が二〇匹前後。今回はその三倍の規模となるわけだ。なお、この世界のゴブリンやオークは雄が人の雌と交わることで上位種を生み出させる特性を持っている。突然変異でも稀に発生するが、上位種が確認されているということは、犠牲者がいる可能性が高い。
ラッシュさんからの報告に、皆が、特にミアとイリスさんが沈鬱な表情を見せる。
「これ以上の被害拡大は許されない。出発は明朝。西門に集合だ。宿はギルドが用意してくれている。何か質問はあるか?」
「逃げ出したゴブリンは。どうする」
感情を消した目でリューグが問う。
「今見張りをしてくれている冒険者たちが引き続き取りこぼしの掃討をしてくれる。俺たちが下手を打たなきゃ、万一にも街に被害は出んよ」
他に無いなら行くぞ、とラッシュさんは席を立つ。それに俺たちも続いた。
ギルドの用意してくれた宿は西門の近くにあった。宿の店主にラッシュさんが二言三言話しかけると、既に話は通っているのかすぐに部屋の鍵を貰える。部屋に荷物を置き、併設されている食堂にて食事を取る。ロアの街に比べると魚料理が少なく、逆に王都から流れてくるのか酒の種類が多い。ロアでは見なかった蒸留酒があるようだ。だが今は酒を楽しむ気分ではない。飲まないとは言っていないが。
「むー。やっぱり海から離れると魚が不味くなる」
「ミアは魚の方が好きですものね」
食事の質に文句を言うミアをイリスが宥める。
「そんなに変わりますか?」
「変わるよ! 鮮度の差は大きいね。シグルドも食べて…………みればわかるよ」
ミアは言いながら自分の魚料理にフォークを突き刺し、それを俺に向け……ようとして中空を彷徨わせ、最終的に自分の口に運んだ。
そのまま突き出してくれれば素知らぬ顔で食ってやろうと思ったのだが。先ほどの一件以来、微妙にミアが俺を意識しているのがよくわかる。体はいつも通りに動くが、意識がそうさせない。そんなところか。
そうしてミアの様子を肴に俺が肉とエールを口にしていると、おもむろにラッシュさんが口を開く。
「ミア。因果応報って言葉、知ってるよな」
その言葉は今までのミアの行動を責めるものではあったが、声音には多分に優しさが含まれていた。それにミアは顔を赤くして小さく頷く。一瞬ラッシュさんが大丈夫なのかコイツという顔をしたが、戦闘時の切り替えはちゃんとできる奴だと信頼の元、表情を戻す。若干俺にやりすぎだと非難の目を向けながら。なので俺も「ケツ拭いてくれるって言ったじゃないですか」と目線で返しておいた。自分で言うのもなんだが、随分図太くなったと思う。
食事を終えて部屋に戻る。ここでも二部屋は確保できなかった、というか普通は人数が多い場合以外は男女混合パーティーでも部屋を分けることは無いらしく、六人部屋を一つ与えられている。
男女で分かれて部屋を使い、旅の汗を拭う。ちなみに俺がパーティーに加入してからは男性陣が使うお湯は俺が用意している。前まではイリスさんが用意していたらしく、冷めることもしばしばあったそうなのでありがたがられている。
明日も早いということでちょっと早めの就寝。明日は長い一日になりそうだと心の中で独り言ちながら、俺は眠りについた。




