29 やりすぎアリス
俺とミアと、ついでにアリスはロアの街の冒険者ギルドにやって来ていた。
「あ、シグルドさん。お久しぶりです。最近顔を見ませんでしたね」とにこやかに応対してくれたのは受付嬢のメロさん。ちなみにミアは俺の腕を取ってにこやかにギルド内を威嚇中。
「ミアさんも一緒ですか。……そちらの女性は?」
「彼女はアリス。まぁ、ざっくりいうなら仲間が増えました」
「それはそれは。おめでとうございます。彼女も冒険者ですか? ランクは?」
「いや、それが冒険者じゃないんですよ。この際登録させようと思って。あとギルドマスターいます? ランクの担保について相談が……」
「承知しました。それではまずアリスさんの冒険者登録の方から進めさせていただきますね。職業は何になさいますか?」
「アリスは武器とか使いませんよね?」
「まぁ、大抵はブレスで一発ですからね」
「ブレス?」
「何でもないです。魔術師でお願いします」
「あ、なるほど。イリスさんの抜けた穴を埋める要員ですか。試験は今日できると思いますよ。ギルマスは……。ギルドマスター!」
メロさんが俺たちの後ろに向かって声を張り上げる。すると待合に座っていた禿頭の男が動いた。
というかそこに居たんかい。意外と頭丸めてる人が多いから埋もれて分らんかった。
「どうした、メロ。ん? シグルドじゃないか。ミアも。お前らが来るのは久しぶりだな」
「お久しぶりです。ランクの担保がてら獲物を狩って来たんですけど、どうなるか相談したくて」
「お前らまだか。もうそろそろ半年くらいになろうってのに。何してた?」
「少々旅を」
「はーん。まあいいが。お前の得物って言うとそのままだろ? ついて来い」
そう言われてキール支部長の後を三人で続く。やって来たのは解体場。今日もここは忙しい。
「おやっさん!」
あ、キール支部長もおやっさん呼びなんだ。
「キール? どうした?」と血に汚れた解体包丁を布で拭っておやっさんがやってくる。
「いや、シグルドが取って来た獲物がランクの担保になるかって。その確認をな」
「シグルドぉ? そう言えば最近見てなかったな。ミアの嬢ちゃんも。元気か?」
「お陰様で」
「元気だよー」
「がっはっはっは。そうかそうか! それは何よりだ。で、今日は何持って来た?」
俺は各地で食肉とされている生き物や、期待外れだったグリーンフライングサーペントを積み上げる。
「この辺じゃ見ない奴ばっかりだな……。というかフライングサーペントなんてどこで取って来た? こいつらの生息域、相当南だぞ?」
「おやっさん、いくらくらいになる?」
「そうさなぁ。フライングサーペントは皮の相場から弾けるが、他の肉はちょっと値がつけられん。肉自体はいいんだが付加価値がな」
「底値でいいですよ。利益はギルドに」
「いいのか?」とキール支部長が聞く。
「ええ。お世話になってますし」
「おやっさん、どうだ?」
「なら……金貨三十枚ってところか? 肉が二十、グリーンフライングサーペントが十だ。黒ならあと五は足して良いんだが。緑はよく出るらしいからな」
「だとすると鉄等級で換算して五つくらいは依頼を受けてもらわなけりゃならんか……」
「ラッシュさんにこれで足しになるって言われたんですけど」と言って俺はアリスからさっき貰ったばかりの特大サイズの竜鱗をキール支部長に手渡す。
「なんだこれ? いや待て……。おやっさん」
「あ? あ゛あ゛⁉ シグルド! お前こんなもんどこで手に入れた⁉」
「た、旅の途中で、ちょっと」
鼻息荒く迫るおやっさんが怖い。
「キール、買い取れる金あるか?」
「流石に竜鱗の一枚や二枚で傾きはしないぞ。問題は売り先だが……」
「買う相手、いや、買える相手が居ないか……。王家が買い取ったりしねぇか? ほら、リフリスが併合して変人の姉ちゃんが来てから魔道具関連の素材の取引が活発になっただろ?」
「ああ、ウェレンスク女伯爵か。彼女なら欲しがりそうだ。魔装機兵の改良は急務だそうだからな」というキール支部長の視線は俺に向いている。俺はそっと視線を逸らした。
「まぁいい。竜鱗ならミスリルでも担保に十分だ。後は何でもいいから依頼達成の事実があればいい」
「良かったです。査定はいつ頃終わりますか?」
「あ? ああ。明日の昼までには終わらせる」
「分かりました」
「ところでシグルド」
「はい?」
「お前がギルドに来てから気になってはいたんだがそっちの女性は誰だ?」
「ああ、紹介が遅れました。彼女はアリス。平たく言えば新しい身内です」
ちょいちょいとキール支部長を手招きし、おやっさんは既に仕事に入ったので遮音結界を張る。
「彼女、人間に見えますけど俺の従魔なんです。正体はドラゴンです」
「ドラゴンって……、あのドラゴン?」
「はい。それも竜神信仰のご神体です。役目を譲ったので今は元ご神体ですけど。ベルベストに行ったらくっついてきちゃいました」
「確かに漏れ出ている魔力量はとてつもないが……、いや、お前がそんなくだらない嘘を言うとは思えん。マジか」
「はい。一応冒険者登録をさせようと思って。あの姿だと従魔と言い張れませんし、元の姿はとんでもなく巨大ですし」
「試験はこれから?」
「はい。メロさんに魔術師で試験を準備してもらってます」
「それなら場所を開けて的を置くだけだからすぐ終わるな」と話しているうちにギルド職員がやって来た。
「アリスさんの試験準備が整いましたので訓練場にどうぞ」
俺とキール支部長は互いに頷き合うと、割符を貰ってからミアとアリスを促して訓練場に向かった。
訓練場の端にはアリスが立っている。反対側には的の付いた藁人形。アリスには相当力を抑えるように言っておいた。
ちゃんとキール支部長の前で言った。くれぐれも目立つなと念押しした。
「では、お好きな魔術を撃ってください」
試験官が告げる。アリスがちらりと俺を見てきたので「頼むぞ」との願いを込めて頷いた。
アリスから魔力の奔流が爆ぜる。下げられた右手から白いビームが放たれ、振り上げられた腕の動きに合わせて弧を描くように的に向かって地面を抉る。途端、地面が大爆発を起こした。
「おい、シグルド」
「いや、俺ちゃんとギルドマスターの前で彼女に釘差しましたよね? 聞いてましたよね?」
「ああ、聞いてた。確かにお前はリスクヘッジしたな」
キール支部長の頬がピクついてる。相当キレてるのを我慢してる顔だ。さもありなん。なにせ施設の一部に被害が出たから。
というか、アリスが放った魔術に見覚えがありすぎる。それ、闇喰らい君の技だよね? あの極大ダメージのレーザー爆破。
「結果とギルド証は俺の部屋に持ってきてくれ。シグルド、ミア、あとアリスとやら! 俺の部屋に来い!」
四人そろってギルマスの執務室へ。
「で?」と俺はアリスの頬をむにぃっと摘まみ上げながら問う。
「いはいれふいはいれふ」
手を離す。
「あれほど目立つなって言いましたよね?」
「あれが限界値なんですよぅ。あれでいちぶです」
「一部って……。ちょっと待って下さい。どっちの“いちぶ”ですか?」
「一割一分一厘の方の一分です」
一パーセントの出力であれか。
「わかりました。じゃあなんであの技使ったんですか?」
「地面爆破だから上方向に指向性があって使いやすかったんですよぉ! 後の民家まで吹っ飛ばす訳にはいかないでしょう⁉」
「ギルドマスター。あれが精いっぱいだったそうです。すいません。俺が見誤ってました」
俺は素直に頭を下げた。
「わかった。悪気はないようだし、努力した結果だと言うのも理解した。だがどうする? 火力過剰が過ぎるぞ」
「いや、俺もあれ程とは思いませんでした。ガンナーやらせた方が良かったですかね?」
「かもしれん。だがガンナー職だと勧誘合戦が酷いだろうしなぁ」
「そんなにですか? 俺の時は金獅子が防波堤になってくれましたけど、ガンナーってそんな需要高いもんです?」
「お前のせいだバカタレ。うちの稼ぎ頭筆頭がどこのパーティーだと思ってる?」
「あはは。うちですね、多分」
「そうだ。お前が来てからお前んとこもギルド自体も金回りが良くなったもんだからガンナーを入れれば楽に稼げるとか思ってる阿呆も少なからずいるんだよ。そこに新人ガンナーなんて公言してみろ」
「うちのメンバーだって言っても駄目ですかね?」
「お願いと言う名の抗議文が大量に届くぞ? それにギルドとしても、明らかに過剰戦力だから出向と言う形で他のパーティーに戦力分散するように勧める義務が出てくるしな。強制ではないが。そうなるとお前をどこかに動かさなきゃならん」
キール支部長はソファに深く体を沈める。するとノックの音がした。
「入れ」
「ギルドマスター、折り入ってご相談が」
「こいつらは外させるか?」
「いえ、アリスさんの試験結果に関わることですので大丈夫です」
それは逆に大丈夫なのか?
入って来たのは副ギルドマスター。何気に初めて会った気がする。彼が言うには魔術の威力と制御技術が卓越していることからいっそ銀でもいいのではとの声が出ているらしい。ちなみに必ず鉄級や銅級から始めなければいけないと言う規定はないそうだ。
「訓練所を破壊しましたけどそれで制御技術が高いって言っていいんですか?」
「あの威力でギルドの訓練場の壁が壊れただけで済んだんです。壊れたのも後の爆発によるものなので寸止め自体は成功していると判断しています。というか一番壁に近い爆発地点は的の足元だったのを私自身が確認しています」
そういうものか。
「それに彼女は金獅子所縁の方でしょう? ここにシグルドさんとミアさんも居らっしゃますし。私も銀で問題ないと判断しました」
「分かった。それで手続きをしてくれ」
「承知しました」
しばらくすると別の職員がアリスのギルドカードを持ってくる。
「アリスとやら。お前のギルドカードだ。無くすなよ? あと魔術はほどほどに頼む」
「じゃあ支援特化で頑張りますね」と言ってアリスはアイテムボックスに銀色のギルドカードを放り込む。
「じゃあ俺たちはそろそろ」
大戦の準備もしなければいけないので席を立とうとする。そんな俺を呼び止める声。
「何ですか?」
「物は相談なんだが、壁の修理費出しちゃくれねぇか?」
「いいですよ、壁くらい。いくらです?」
キール支部長はすっと指を二本掲げて見せる。
「二十ですか? 意外と」高いですねと言おうとした矢先に言葉を重ねられる。
「二百だ」
「高ッ⁉」
家買えるじゃん!
「あのな、訓練場ってことは下手糞の制御が離れた魔術がバカスカ当たるんだわ。だから壁全体が魔道具化してあるんだよ。一部壊れたら全体がパァなんだ。その辺はお前なら理解できるだろ」
「あー、あの規模の魔道具って考えたらそれぐらいは行きますねー」
むしろお安い部類。
俺は黙って金貨百枚入った麻袋を二つ置いた。
「言っといてなんだが、ホントにいいのか? しかも即金で」
「あのー、ギルマス? 俺が商業ギルドの方で何してるか知ってます?」
「いや? ポタタの薄揚げの件と魔装機兵の事しか知らん」
「ギルマス、クエン酸リンスって知ってる?」とギルマスの禿げあがった頭を見ながらミアが問う。
「ああ、あの髪洗いの薬剤か。嫁と娘が使ってる」
知ってるのか。というか奥さんと娘さんいたんか。
「あれ、アルベーヌ家が専売してるじゃん?」
「そうだな。石鹸の普及とともに大衆にも浸透してきてるし、莫大な利益だろう。何があったか知らんが商業ギルドがかめないってんでラペッドさんが歯ぎしりしてたけど」
「あれの製品登録してるの、シグルドなの」
「……マジでぇ?」
何があったと聞かれたので事の経緯を説明。それを聞いたキール支部長は目を覆った。
「商業ギルドが不憫すぎる。それに因縁つけてきた本人は放逐された上に魔装機兵の実験台になってシグルドの手によって戦死? 目も当てられんな」
「俺もそう思います」
「そう思うなら商業ギルドに販売権やれよ……」
「いやそれが。普通登録製品の収益って一割じゃないですか」
「そう聞くな」
「何か後から聞いた話、三割入れて頂いてるみたいで……」
ビフォワード氏の妹はやらん的なお手紙の中で知った。収益の一割が登録者に配分されるのはギルドの規定で決まっているが、それ以上の割合にするのは寄付金扱いで販売元の方で勝手に決められるらしいと知ったのは随分後の事だ。すぐさまラッシュさんに相談したが、断ることは失礼に当たるそうで。
「そりゃ、アルベーヌ家の専売で続けるしかないわな」
「そうなんですよ。だから金は溜まる一方で」
「金の匂いにつられて変な女が寄ってきたりしないか?」
「別に金遣いは荒くないと自負してるので大丈夫です。というかミアが居るのにそうそう俺にたどり着けると思いますか?」
「それもそうか。今日もロビーでウチの女ども威嚇してたしな」
苦笑いを向けるキール支部長にミアはぷいっとそっぽを向く。そんなミアの頬をアリスが突いて遊んでいる。
「にしてもお前んとこも大所帯になったな。産休中のイリスも入れると六人か」
「いえ、七人です」
「ああ、すまん。お腹の子も入れてやらないとな」
「いや、なんか勝手に家事手伝いがくっついてきたんで。お腹の子を入れれば八人になります」
「はぁ?」
かくかくしかじか。リーゼの事を説明する。
「もしかしてやたら身長の低い女か?」
「そうです。もしかしなくても見ました?」
「ああ、見た見た。昼飯食べた帰りにリューグとすれ違ってな、そんとき成人前の女の子連れて歩いてたからなんかの見間違えかと思ったのを覚えてる。それも二人であの水飴? とか言うの舐めてたし」
「あの人あれで二十歳らしいですよ」
「嘘だろ⁉」
そう言いたい気持ちはすごくよくわかる。
「にしてもリューグが外でも水飴を、ねぇ。家でも仲良さげなんですよねー、あの二人」
「ほう? あのリューグが?」
「ええ。あのリューグが」
俺とキール支部長はニヤついた顔を隠そうともしない。
「でもそれならお前ら、今の家は少々手狭なんじゃないか? 裏通りの小さめの元宿屋の物件だろ?」
「まぁ、否定はしませんね」
一階部分を改築したせいで部屋数が足りていない。リーゼをミアの部屋に、アリスを俺の部屋に寝かせて俺とミアは秘密基地で寝泊まりしている状態だ。完全に飽和している。
「アーデルハイド侯爵所縁の貴族の別邸がずっと売りに出されてるが、どうだ?」
「いや、どうだって言われましても……。なんで急にそんな話を?」
「いや、商業ギルドから相談を受けてるんだよ。高ランクの冒険者で家探してる奴はいないかって。貴族の別邸なんてそうそう買える資金持った奴いないし、お前らは既に拠点持ちだから蒼烏の拠点にどうだって話も出てたんだ。あそこもメンバーが増えただろ? でも蒼烏はガルムを筆頭に妻子持ちもいるし、宿暮らしってニールとロブぐらいだったんだよ。ああ、今はミーナもか。そんな状態で勧めても仕方ないだろ? だからお前らが引っ越しを考えるならどうかと思ってな」
「ちなみにおいくらくらいですか?」
「俺が聞いた時は金貨一千枚だった。だがお前がミスリルになった頃の話だから多少変動してるかもしれん。この辺の土地、今人気だし」
「人気? なんでまた」
「お前とラッシュののせいだよ! 主にお前の!」
「俺のせいって、俺何もしてませんよ?」
「ミスリルの知名度を考えてくれ。うちにはそれを二人も擁するパーティーがいるんだ。お前ら目当てで移住してくる冒険者が多いんだよ。それに伴って宿屋も増えたし。あとお前考案の名物料理を求めてくる輩がいるんだ」
「料理の件は、まあ分かりました。でも冒険者は来てどうするんです?」
「顔つなぎと、あわよくば引き抜き。ミスリルは自立してる奴が多いから。あとなまじお前らがミスリルになるまで看板背負ってたのがあのジャックだからな。逆にパーティーに入れてもらおうと思ってる奴も少なからずいる」
「へーぇ。知りませんでした」
「そりゃ、こっちである程度は突っぱねてたしな。ラッシュから頼まれて」
すでに対策済みとは。さすがラッシュさんである。
「それにあいつはギルドでよく捕まってるし」
「そうなんですか? 俺、声かけられることなんて無いんですけど……」
「お前、自分の二つ名理解してるか? 銃持ってるかパワードスーツ着てない限りこれと言って特徴がないから認識されてないんだよ。その軽鎧もなけりゃ依頼人と間違うレベルだぞ。アーマーライノの鱗もそれといって分かる特徴がないからぱっと見じゃ高級品って分らんし」
「そうなんですか?」とミアに聞くと「うん」と頷かれる。アーマーライノの鱗は似ている魔物が多く類似品や模造品が多く出回っているそう。そもそも本物のアーマーライノの鱗などまず市場に流れないらしい。
あの時リューグが全部引っ剥がした訳だ。
「嘘だと思うならパワードスーツ姿でロビーに出て見ろ。囲まれるぞ」
「嫌ですよ」と言いつつ席を立つ。片手を挙げて見送るキール支部長を背中に、俺たちは一階に降りた。
依頼掲示板の前で手ごろな依頼を見ているが、べっとりと視線を感じる。
「私、見られてます?」
「見られてますね」
「そりゃ、あんな事すればね」
「ミアさん」
「何」
「厄介ごと防止のために手を繋ぐくらいは許してもらえますか?」
「………………ん」
「ありがとうございます」
そう言って右手にアリスの手が絡まる。左腕はいつものようにミアが掻き抱いている。
アリスへの視線は減った。俺への嫉妬と好奇の視線は増えたが。
「よう兄ちゃん」と後ろから声をかけられる。嫌だなーと思いながら後ろを振り返ると、知らない顔。
「俺らパーティーメンバー募集中なんだわ。そっちの女どもを寄こせ。今ならお前も入れてやってもいいぜ? 雑用係だけどな!」
ゲヒャヒャと品のない笑い声をあげるその男を俺は冷めた目で見る。あと左腕が痛い。ミアがキレてる。
「話は訓練場でしましょうか」
俺はミアを抑えて、努めてにこやかにそう言った。
「あ? 俺に楯突こうってか?」
「人は見た目で判断しないほうがいいですよ~」と言いつつ俺は受付で模擬戦の申請を終わらせる。
かく言う俺もキレている。こいつは女どもと言った。ミアを狙ったのだ。お仕置きは必要である。
ところは変わって再び訓練場。遠距離魔術は使用禁止な上に俺の武装は使えないので木製のたんぽ槍を選択する。相手の男は長めのロングソードを模した木剣。皮手袋をした右手で剣の刃の部分を握って突きの構えだ。
そういう持ち方もあるのかと思いつつ俺は槍を構える。構え方は銃のそれ。なので知らないギャラリーや相手からは嘲笑の声が漏れる。
「いつでもどうぞ?」
「こいつ、舐めやがって……!」
激高した相手が突進しようと腰を落とす。その瞬間、俺は魔力波を放った。乗せたイメージは刺突。首をさっくりと、一突きにするイメージで。
剣を取り落した男が首をぺたぺたと触る。動揺が隠しきれていないその男の後ろに歩いて回り、俺は首筋に槍を突きつけた。
「はい一本」
槍を返却して戻ってきた俺にミアは呆れたような顔をした。
「シグルド、おじいちゃんの技使ったでしょ」
「あはは、バレますか」
「あたしたちは大丈夫なんだけどさ?」とミアが周りのギャラリーを視線で指す。みんな首元を気にしていた。
「あー、余波が行ったか」
俺は声高に「エリアヒール!」と叫ぶと、範囲回復魔術を展開した。だが直接相手にしたあの男にはかけてやらない。遮音結界も張って一瞬声が届かないようにもした。ミアに手を出そうとした罰だ。周りを見ると件の男以外は喉の違和感が消えた模様。俺は満足気に頷くと、とある人を見つける。
「よっ」と手を上げたのは蒼烏のガルムさんだ。
「お久しぶりです」
「元気そうだな。しかしお前、何やったんだ?」
「まー、その辺は秘密ってことで。あ、そうだ。一つ頼めませんか?」
「何だ?」
「あの喧嘩吹っ掛けてきたバカに俺の素性を説明してやってください。今俺がばらすと面倒なことになる気がするんで」
「ああ、その辺の事情はラッシュからもギルマスからも聞いてる。いいそ。請け負ってやる。あいつは……、どれくらいで復帰する?」
「さあ?」と俺はにこやかな笑みをその顔に浮かべた。
「おお怖。えげつねぇ顔するようになったもんだ」
早くいけと道を開けてくれるガルムさんに礼を言ってロビーに戻る。アリスの事もあるので適当に討伐系の依頼を受けて、俺たちは冒険者ギルドを後にした。
受けた依頼はオーガの討伐依頼。エリエルからベルヌにかけて、西側に存在する山々の麓にある村からの依頼だ。人的被害はまだないが、目撃情報が相次いでいるらしい。といいつつこの手の依頼はよく出ている。近くにダンジョンがあるからだ。村に金はあるのかと心配になるが、聞くところによるとダンジョンアタックをする冒険者の仮拠点になっているそうなので、他の村と比べてそこそこ金を持っているらしい。あとダンジョンアタックに赴く冒険者がこういった魔物を駆除することはまずない。基本的に時間と労力の無駄だからだ。
何回か受けたこともある依頼なのでさくっと村の近くにゲートで飛ぶ。村と言うよりかは宿場町と言った趣のその村に入り、依頼主である村長宅へ。
「村長さんいますかー?」とドアをノックする俺に誰何する声。
「オーガ討伐の依頼を受けてきた冒険者です」
扉が開く。出てきたのは六十代になると言うのにはちきれんばかりの筋肉をたたえた爺さん。元々村付き冒険者だったらしい。
「お? お前さん、ラッシュんところの……そうだ、シグルドだ! 横にいるのはミアだな。思い出した。前も受けてくれたよな? また受けてくれるのか? ラッシュは居ないようだが……」
「今日は俺たちだけですよ」
「大丈夫か?」
村長さんの中では俺がひよっこの時の記憶しかないので仕方がないが、新鮮な反応である。
「大丈夫ですよ。これでもミスリルなんで」
恒例の如く、蒼く輝くギルド証を見せる。
「ミスリルが来るほど高い脅威度認定されたのか⁉」
「違いますよ。依頼としては銀等級の下の方です。彼女が冒険者登録したので」
そう言って俺はアリスを紹介する。
「ああ、そういうことか。じゃあ前と同じように頼むわ。十匹も狩ればしばらく大丈夫だろうし」
「分かりました。残りは村の方でやる訳ですね、いつも通り」
「よくわかってるじゃねぇか。依頼は五匹以上、十匹以下だ。そこんとこ頼むな」
アリスはよくわかっていない様子だが、つまりはオーガが増えすぎたのが問題であって、はぐれオーガ自体はこの村の資金源の一つなのである。だからむやみに狩り尽くすなと言う話なのだ。
とりあえず村長さんと別れて山との間にある森へ。サーチで確認するとすぐに見つかる。
「あ、一応支援魔術でも掛けておきますか? 要らないとは思いますけど」
先へ進もうとした俺とミアにアリスがそんなことを言う。
「じゃあ、せっかくですし」とアリスの申し出を了承する。アリスは胸の前で手を組んで祈るようにすると、周囲にアリスの魔力が溶け出して俺とミアを包んだ。
「終わりましたよ」
「どんな効果があるんですか?」
「攻撃力と防御力の強化ですね。分かりやすく言うと黄金樹に誓って」
ミアはキョトンとした顔をしているが俺は完全に理解した。
「ミアさん、その辺の木を切りつけてみて下さい」
「えー、刃が痛むからヤなんだけど」
「大丈夫ですから。軽くでいいです」
渋々言われた通りにミアが剣を木に叩きつける。するとその木がスパッと切れてメキメキと音を立てながら倒れた。
「えー…………」
「防御力についてはもう言いませんけど、刃物だと切れ味が上がります」
「打撃武器の場合はどうなるんです?」
「より重い武器をつかったのと同じ効果になります。ちなみにシグルドさんの銃は刺突武器扱いですね。貫通力強化です。ゴム弾は打撃になりますけど」
俺は試しにその辺の木にゴム弾を撃ち込んでみる。バゴンと音を立てて木がへし折れた。
「これじゃ戦闘につかえないでしょうが」
俺はアリスの頬をつまみ上げる
「いはいれふいはいれふ」
手を離す。結構力を入れて引っ張ってやったので赤くなった頬をさすりながらアリスは涙目だ。
「ゴム弾は非殺傷武器なんですよ。これじゃあ当たった相手がミンチになるでしょうが。で? 効果時間は?」
「半日くらい?」
もう一度頬を抓り上げる。
「いはいいはいいはい!」
「ったく、邪魔なだけじゃないですか。今後はよっぽどのことがない限り攻撃力アップ系の支援魔術は使わないでください」
「はいぃ……」
優秀過ぎるのも使いどころに困る。
何はともあれ依頼は達成せねばならない。銃は使えなくなってしまったので、近くにいるオーガに忍び寄ると、俺はライフスティールの連続詠唱で膝をつかせる。後は首筋をさくっと薙ぐだけだ。
「とりあえず一匹……っと」
改めて遠距離から一方的に敵を無力化できる銃のありがたみを感じる。それだけに使い物にならなくしたアリスをどつきまわしたくなるが、ぐっと我慢する。
正確にはあの威力の銃を使って殺してしまってもいいのだが、そうすると獲物に傷がつくから嫌なのだ。今まで綺麗な状態で獲物を持ち込んできたガンナー職としての矜持がある。
同じようにオーガを仕留めていくと、いつもより時間はかかったが無事十匹討伐することがかなった。オーガは一か所にまとめ、討伐証明になる角を切って村長宅へ。
「村長さーん」
「おう、早かったな。まぁ上がれや」という村長さんについて家の中へ。全員で案内されたダイニングのテーブルにつく。
「討伐証明の角は切って来たか?」
「はい。十匹分の角です。本体は固めて村を出たすぐの所に放置しています」
そう言って俺はオーガの角をばらばらとテーブルに出す。
「ああ、そういやアイテムボックス持ちだったな、お前。いいのか?」
「構いませんよ。持って帰ろうとしたら解体して皮だけにしなきゃ痛むから面倒ですし」
オーガはその身体に巣食っている常在菌の作用なのか足が早いらしい。適切に素早く処理をしないと皮の質がどんどん下がっていくそうだ。
「助かる。依頼書くれ。サインするわ」
依頼書に完了報告を貰い、討伐証明の角を回収して村長宅を後にする。またゲートでロアに帰って受付の列に並んでいると、先ほど模擬戦をした男がやって来て綺麗な土下座をかました。
「すんませんでしたァッ!」
床にはぽたぽたと脂汗がしたたり落ちている。汚い。
「アリス」
「何ですか?」
「俺以外の記憶って覗けるんですか?」
「できますよ?」
「こいつの余罪と名前を探ってください」
アリスが額に指を当てて「んー」と唸る。俺以外の記憶を覗くにはちょっと努力がいるらしい。
「名前はベント。余罪と呼べるほどのものはありませんね。横柄な態度なのでトラブルメーカーらしいですけど。今の態度を見て分かる通りただの小物です」
アリスの言葉に男、もといベントは震える。
「余罪が無くて良かったですね。目障りなんで早くどっか行ってください」
「そ、その前に一つだけ、お願いが……」
「何です?」
「首の違和感が消えなくて。息が漏れ出ると言うか、喉に穴が開いたような感覚がして……」
俺は無言でヒールをかけてやる。
「治った……」
「さ、もう用は済んだでしょう。これ以上手間を取らせるなら……」
「すいませんすいませんもうしませんーっ」
ベントは逃げるように立ち去った。
「あらら、言い切る前に行っちゃった」
「なんて言おうとしたの?」
「今からギルドに苦情を言いますよって」
「それ、シグルドがやるとほぼ冒険者人生における死刑宣告だよね?」
「あはは、そんなまさか」
そんなことある訳ないだろうと一部始終を見ていた受付嬢たちに視線を向けると、一斉に目を逸らされた。
え、マジ?
「とりあえず目立ってるけど、どうする?」
「どうするも何も、どうにもならないでしょう。このまま依頼の完了報告して帰るだけですよ」
そうして奇異の目にさらされながら列に並ぶこと数分。俺とミアとアリスは三人で依頼報告をしてそそくさとその場を後にする。
これでアリスのランク担保もできたので今年いっぱい問題は無いだろう。
とりあえずこの日はゆっくりとし、翌日俺は解体所に持ち込んだ獲物の代金を受け取って来た。帰ってくると全員今はイリスさんの私室化している和室に集まっていたので俺も向かう。
「お、蹴った」
「私も感じました。結構元気ですよね」
部屋に入って見えた光景は大きくなったイリスさんのお腹に耳を当てているラッシュさんの図。そんな光景を皆があたたかく見守っている。若干ミアとリーゼがうずうずしているが。
今は確か妊娠六か月か七か月のはずだ。
「もう名前とか決めてるんですか?」
「お、シグルド。帰ってたのか。名前か? 名前って生まれてからつけるもんじゃないのか? 男か女かも分らんし」
「二パターン決めとくとか……」
「同性の双子だったらどうするよ?」
なるほど。そういうもんか。
納得して順番が開いたので俺もイリスさんのお腹を触らせてもらう。一応お腹の子はすくすくと順調に育っているようだ。
「シグルド、どうですか?」
「順調だと思いますよ。素人判断ですけど」
魔力の流れを見るだけなのだが、ラッシュさんとイリスさんの二人からは医者扱いされている。さしずめ産婦人科の往診と言ったところだ。ちなみに近所のママさんコミュニティからはそろそろ安静にし始めた方がいいとのこと。軽い散歩くらいにした方がいいらしい。
「あ、そうそう、ダンジョンアタックする予定なんですけど、誰か来ますか?」
俺は問う。ミアとアリスは当然来るとして、イリスさんは動けないしラッシュさんは付き添いで来ないだろう。リーゼは非戦闘員だし、リューグ辺りが来るかなと思って声をかけたのだが答えはノー。なんでも最近料理に目覚めたらしい。リーゼを手伝っているうちに面白いと感じるようになったのだとか。
「ほーん」と俺は生暖かい視線をリューグに向ける。
「何」
「いや、別にぃ? リーゼ、リューグはどうですか?」
「ん? リューグさん? 高いとこのもの取ってくれるから手伝いは非常にありがたい。でも火の番はだめ。焦がすから。まだまだ役立たず」
そう言われてしゅんとなるリューグ。まだまだ春は遠そうだ。だが項垂れるリューグにリーゼが背伸びして「がんばろうね」とよしよししている。脈はありそう。多分。
「とりあえず俺はしばらくダンジョンに籠るんで、何かあっても対応できないんでよろしくお願いします」
そう言いつつ俺はミアとアリスを伴って秘密基地に移動した。秘密基地に行くと、格納庫の方からベルの子機がじぃっと俺の方を見ていた。
「ベル、おいで」というととことこ寄ってくる。頭に手を置いて魔力を流し込んでやると、しばらくした後満足そうに去っていった。
アリスに言われてベルの子機に魔力を流し込んでやったら、俺を見てもじもじするようになってしまった。アリスにあれでいいのかと聞いてみたところ「乙女心です」と言われた。全くもって分からない。
「あ、ベルー」とベルを呼び戻す。
「何でしょうか、マスター」
「ダンジョン潜るんですけど一緒に来ますか?」
「私がダンジョンに行くのは不可能だと推定します。ダンジョン内が外界と隔絶されており、ゲートが不安定になる都合上、同じ経路で子機を操っているので子機の操作に影響を及ぼす恐れがあります」
「グレイハウンド自体をダンジョンに持ち込まないと無理なわけですか」
「肯定します」
「すいません。時間をとらせました。もう行っていいですよ」
そう言うとぺこりとお辞儀をして去っていくベル。立ち居振る舞いだけはうちの家事手伝いよりメイドしてる。
ついでにベル専用の保管庫、もとい俺への献上ボックスを見ると獲物が入っていたのですべて回収する。
イノシシと鹿と牛と蛇か。相変わらず大漁だな。全部綺麗に頭がふっとんでるけど。
「とりあえず晩飯前まで空飛んできます」
「あ、私も行っていいですか?」とアリスが言う。
「……どうするつもりですか?」
「え、いや。元の姿で」
俺は指を何かをつまむ形にして上げる。アリスは頬を抑えた。
「目立つでしょうが!」
「北に行くんでしょう? 大丈夫ですよ。見られませんって」
「あとミアだけ仲間外れになるから心情的にヤダ」
「プロトタイプに乗ってもらえばいいじゃないですか。制御はベルガモットさん任せにして」
「プロトタイプ?」
「シグルドさんのアイテムボックスの中に入れっぱなしになっている奴です」
「いやでもあれ適性が無いと酷く酔うんですよ?」
「レーダーとFCSが問題でしょう? それをオミットして乗るだけの木偶にすれば問題ありませんよ」
「うーん……。ミア、乗ります?」
「まあ、乗れるなら」とミアが言ったので俺は格納庫へ。一番最初に作って行き詰ったプロトタイプを格納庫に出し、手を加える。
とりあえずサーチ関連技術は全てオミット。ただ飛べるだけの機体に仕上げる。中にミアを乗せ、テスト。
「どうですかー?」
「大丈夫。酔わないっぽい」
「じゃあ行きますか」と皆で連れだって外へ。グレイハウンドの手のひらに乗せていたアリスはいそいそと服を脱ぎだす。
「何で脱いでるんです?」
「だって変身したら破けちゃいますし」
なるほど。
素っ裸になったアリスが服をすべてアイテムボックスに入れ、空中に飛び上がる。そしてその身体を光が包んだかと思うと、前にも見た巨大な灰竜が姿を現した。
正直言ってクラーケンよりデカいんだけど。ほんとに対岸から見えないだろうな?
「じゃあベル、ミアのサポートよろしくお願いしますね」
「命令を受諾。了解しました、マスター」
俺たちは北極の空を気持ちゆっくり飛ぶ。徐々に早く。ミアはベルのサポートがあれば十全に機体を動かせるようだ。
「おー……」
「ミア、どうですか?」
「なんか変な気分。思い通りに動けるんだけど飛んでる違和感がすごい」
ミアを先導しつつ俺は北極の大地を飛ぶ。アリスは勝手に「ひー寒いー」と言いながら翼をはためかせて飛んでいる。
「というかその巨体でどうやって飛んでるんですか?」
「え? 魔装機兵と理屈は同じですよ? 姿勢制御を羽でしているだけで。じゃなかったらこんな太ったトカゲみたいな体が飛ぶわけないじゃないですか」
けらけらと笑うアリス。
魔術的な仕組みで飛んでるのか。納得。
「というか自分でトカゲみたいな体とか言っちゃうんですか。それも太ったトカゲって……」
「いや別にこの姿に誇りとかありませんし。シグルドさんとの契約で得た姿の方が大事ですし」
「ドラゴンってプライド高いイメージが……。まあいいや。ベル、二人きりじゃなくてごめんなさい。大丈夫ですか?」
「ちょっとシグルド⁉ その言葉は聞き捨てならないんだけど‼」
浮気か⁉ とミアがすっ飛んでくる。
空中で魔装機兵に乗ったまま組み手をしようとするな。というか器用だな。もう乗りこなしてる。っておい。空中で小内刈からの背負い投げは止めろ。意味ないから。
ちなみに嫌がった俺をベッドに連れ込むときの所作でもある。
「いや、ベルへの愛情はミアとはまた別物ですよ。同列に語れません」
すかさずアリスが「私は? 私は?」と聞いてくるが「別に?」と一蹴するとしょぼくれて高度を落とした。まだ出会って日が浅いのだ。特別な感情を抱けるほどの何かは無い。今のアリスとの関係を言うならば協力者だ。身内にはカテゴライズされているが、正直戦争を唆した張本人でもある訳で割り切れていない部分もあるにはある。
「むー」
「でも序列を作るならミアが一番ですよ。まあ、そのうち二番になるかもですけど。ミアもそうでしょう?」
「ちょっとそれどういう! ……ん? ……んー…………。あっ。シグルド、いいの?」
「すべて無事に終わって、帰ってきたら。ね?」
「うん!」
元気に答えるミアを導きながら再度ベルに問いかける。
「で、どうですか、ベル。皆で飛ぶのは」
「空中遊泳は二人きりの方がいいと申告します。ただし現状を鑑みて別の答えを提示します」
「なんですか?」
「模擬弾の作成を強く提案します。アリスとの模擬戦は私を満足させうる行為と推定」
うーん、ベルさんってば戦闘狂。
「魔装機兵サイズのゴム弾作るんですか? さすがにちょっと材料が……」
それをするならタンポポ畑を作らねばなるまい。
「私ならそのままの武装でも大丈夫ですよ? さすがにライフル弾やグレネードの方は耐えられるんで」
「レールガンの使用を推奨」
「ベルガモットさん⁉ 流石に穴が開きますって! 私素材になっちゃう!」
慌てるアリス。しかしベルは何とかして戦いたい様子なので、アリスにとりあえずお願いしてみる。
「武装変更は無しですからね⁉ レールガンは無しですからね⁉」
「わかってますわかってます。じゃあ行きますよ」
ミアには十分離れてもらう。遠見と鷹の目があるので観戦に不自由はしないはずだ。
俺は武装を構える。アリスは、背を向けて飛び去った。呆気に取られてみていると、アリスはぐんぐん高度を上げていく。俺はそれを慌てて追った。
高く、高く、昇る。地平線が丸くなり始めて、ようやくアリスの尻尾まであと十数メートルと言った距離。俺は両の手のライフルを構え、しかしベルの声に遮られる。
「緊急回避を推奨」
腹の方に身を押し出すようにしてブーストを放った途端、俺の横をアリスの羽が掠めた。彼女が放ったのは、高高度からの反転。重力に任せた、俺との相対速度を利用した翼の一撃。
「模擬戦にしちゃ初手でエグイ攻撃してきやがる……」
アリスの灰竜としての質量は数十トンクラス。そんな質量を乗せた体当たりはそれだけで凶器だ。俺は落下していくアリスを追う。だが、周りに展開するそれを見つけて回避運動を取らざるを得なくなる。
無数の集束していく光。それがアリスの飛んだ軌道上を包囲するように展開されている。俺はその中心に突っ込んでいた。視線が目まぐるしく動く。同時に三十個づつは展開されているそれの発動順を見極める。刹那、俺に向かって無数のライトショットのような魔術が、それもとんでもなく高威力とわかるそれが殺到した。
右左前前後左右右前下下右左前!
弾幕の波を抜け出す。抜け出した先で、アリスはその咢を開いて待っていた。それを寸でのところで避けるが、足に翼が当り錐もみ状態に。だがその一瞬で俺はロックをつけ、ミサイルを撃ち放った。アリスを追ってカーブを描きながら進んで行く六発のミサイル。俺は追加でミサイルを放つと、ライフルを乱射しながら灰色の巨躯を追う。アリスはちらりと計十二発のミサイルを見、急停止してその全てを背中の鱗で受けた。その間に俺は距離を詰める。首元に潜り込み、その場所にグレネードキャノンをほぼ接射した。
俺も爆発を受けて多少の自傷ダメージを貰うが、この勝負。
「いったーい⁉ 降参! 降参です!」
アリスが叫ぶ。俺が狙ったのは首元にある逆鱗だ。
「流石にアリスでも逆鱗は弱点ですか」
「当たり前じゃないですか! お腹とかは歳を重ねるごとに分厚くなりますけどここだけは何当たっても痛いんですよ! 前なんか寝てる時に仲間が飛ばして来た岩がぶつかって大変な目に遭ったんですから!」
「ああ、やっぱり柔らかいんですね……」
「いいえ? 逆鱗自体は竜の体の中で一番固いです。唯一生えかわらないので育ち続けるんですよ。でもそれが変な方向に生えてるせいで押されると痛くって痛くって。大きなささくれを放っておいて固まってしまったものを押すと痛いみたいな感覚です」
そう聞くと大事に聞こえないのだが。
「流石に逆鱗狙うのは不味かったですかね?」
「いえ、そこに当てる以外シグルドさんに勝ち目はないので仕方が無いかと。というか個人的には魔術弾の包囲陣を抜けられたのがびっくりなんですけど」
「ああ、弾幕ゲーやってる気分になりました」
「くそう。腐ってもゲーマーか、この人! いやでも初見突破っておかしいでしょ! 一発ぐらい当たってくださいよ!」
「ベル、どうでしたか?」
ギャアギャアと騒ぐアリスは無視する。
「毎日の模擬戦を希望します」
「んー、せめて月一でお願いします」
結構疲れる。というか楽しかったんだ、ベル。
遠くで観戦していたミアを回収して秘密基地へ戻る。ベルが言うには俺とアリスの戦闘中暇になって制御を練習していたらしく、ベルの補助なしでも飛べるようになっていた。ミア曰く「お箸より楽」とのことだ。
秘密基地に帰ってきてアリスに風呂を進める。その間に俺は飯の用意だ。今日作るのはチャーハン。唯一父さんから教えてもらった料理だ。
フフフ。買っちまったんだよ、ごま油を! だいぶ前の事だけど。エゴマじゃないぞ。ちゃんとしたゴマの油だ。あとやっぱりセミサンはゴマだった。お値段何と一瓶金貨一枚。ずっと使うのを躊躇っていたが、今日は使う。使うったら使うんだ。だから動いてくれ、俺の右手!
冗談はさておき父さんのお手軽レシピに忠実に作っていこうと思う。そのまま使えるウインナーソーセージは無いので肉屋で売っていたフレッシュソーセージをとりあえずボイル。中まで火が通ったら五ミリくらいの厚さに切る。大きめのフライパンにはごま油をたらり。摩り下ろしたニンニクを入れて火をつけて弱火でじっくり加熱していく。わざわざつくっておいた白米の冷や飯で生卵かけご飯を作る。ソーセージ、卵かけご飯、作り置きのコカトリスのがらスープ、塩をフライパンに投入して強火で炒める。あと、中華鍋で超火力のガスコンロでもない限りあのチャーハンを作る演出でよくやる鍋を返してパラパラにするやり方はしないほうがいいらしい。逆に火の通りが悪くなるそうだ。最後にネギを投入し、追いごま油をして軽く炒める。塩加減はちょっと薄目がうちの父さん流。横で一緒に作っていたひらひら卵とワカメの鶏がらスープにもごま油を入れ、スープに白ごまを浮かせれば完成。
アリスも風呂から上がって食卓に座っていたので出来立てのアツアツを並べる。
「シグルド。すっごいいい匂いがするんだけど」
「セミサンです。高級品なので心して食べるように」
三人でいただきますを言ってチャーハンをパクリ。ちなみにいただきますとごちそうさまはアリスもちゃんと言う。
うん。ソーセージが塩味強めだから薄味でよかったな。鶏がらスープが効いてて美味い。
ミアはカッと目を見開いて掻き込んでるから問題なさそう。アリスも大丈夫そうだ。もっともアリスにとっては食事自体が贅沢なので文句など言うはずもないが。こっちに来た初日など、食糧庫の中身は自由に食べていいと言ったら悩んだ挙句生のジャガイモを齧っていた。それで言うなら食わせる必要すらないのだが、そこはベルとは違って見た目人間と同じ体を持っているので流石に気が引ける。
「おかわり」
「はいはい」とミアのおかわりをよそう。そういえばと思い出したのでミアがおかわりに手を付ける前に食糧庫へ。取り出したのはウスターソースだ。
うちでは何故かチャーハンの時はウスターソースが食卓に置かれる。父さん曰く味変するのだそうだ。
「ソース?」
「いや、うちではかけてたので」
「ふーん?」といいつつミアはおかわり分のチャーハンにソースをたらり。俺も半分ほど残っているチャーハンにたらり。
あーうん。家の味だわ。ミアは……。まぁ、俺の勧めるものは何でも食べるわな、君は。
食事を終えて俺とミアは風呂に行こうとする。だがそこにじぃっと突き刺さるアリスの視線。
「いいですよねー。ミアさんはシグルドさんと入浴できて」
「アリス、お行儀悪いから椅子でがったんがったんしないでください。あとミアも許した覚えは無いんですけどね」
「だから家の方使う時はがまんしてるじゃん」
「こっちでも我慢してほしいです」
「あたしの身体触るの嫌?」
「いや、嫌じゃないんですよ。嫌じゃないんですけどそれとこれとは話が別と言うか」
風呂はゆっくり一人で入りたいときも多いのだ。その辺を理解してほしい。
とりあえずジト目のアリスは放っておいて風呂へ。いつも通り二人で入って、少しイチャイチャして出てくる。脱衣所でパンツだけ履いたミアの髪を乾かしていると、またじぃっと俺とミアを見る視線。
「いいないいな。髪乾かしてもらって」
「これは日課なので……。ん? 改めて考えると日課か? まぁ好きでやってるから日課でもいいか」
「じゃあ私の髪も触らせてあげます!」
「いや、ミアの髪と頭を触ってるのが好きなだけなんで別に」
そういうとアリスは地に崩れ落ちた。
「くそう! ミアさんだけズルい!」
「ズルいも何も、嫁ですから。正確にはまだ彼女ですけど」
そんな会話をしているとひょこっと顔を覗かせるベル。
「マスター」
「なんです?」
「汚れが関節部などに堆積していると報告。子機のメンテナンスを要求します」
「あー、そういや掃除したことありませんでしたね……。いいですよ」
俺は髪を乾かし終えたミアを部屋に返してベルの服を脱がせて風呂場へ戻る。手には使い古した歯ブラシと布。
とりあえず大まかに分離の魔術で取り除く。湯で流すと黒くなったから実際汚れは溜まっていたらしい。無駄に追加したパネルラインなどにこびりついているものは歯ブラシで浮かせ、つるつるとした表面は布で拭ってやる。
「どうですか?」
「製造時の九九.九パーセントまで復旧したことを報告します」
「残りの〇.一パーセントは?」
「金属疲労と摩耗です。問題ありません」
ベルと風呂から出る。アリスはまだ打ちひしがれていた。
「なぜベルガモットさんはいいのに……。どうして……!」
「いやだってベルは機械みたいなもんだし……」
「存在としては私と同じ精神生命体みたいなもんなんですよぉ!」
そうはいっても見た目の違いというものがある。
「アリス」とベルが声をかける。
「何ですか勝ち組」
「マスターが肉体的接触を厭うのはアリスが恋愛対象足り得るからです」
その言葉にアリスはがばっと上体を起こす。俺は否定できないのでそっぽを向いておいた。
実際そうなのだ。アリスとの接触を拒むのはミアに、そしてアリス自身に不義理だと感じるから。つまりそれは、ちゃんとアリスを一人の女性として見ている訳で。
「シグルドさ~ん!」
「ええい、寄るな!」
俺はミアの元に逃げる。アリスは部屋の中までは追ってこなかった。
「どしたの?」とミアが俺に問う。かくかくしかじか事情を説明。
「あー、一応シグルドに言われたから独占欲むき出しにしてるけど、真面目な話シグルドが受け入れたいならいいよ?」
「いや、受け入れる気はないって話をしてたんですが……」
「でもその割には割と気やすいよね」
「そうですか? あーでも確かに遠慮は無いか」
ことあるごとに頬を抓り上げてるし。
「私は一緒に寝るくらいならいいよ? それ以上は嫌だけど。でも抱っこは私にしてね? それでもいいなら入っておいで!」
ミアが部屋の外に声をかける。入って来たのは、アリスとベル。
「ミアさん、いいんですか?」
「好きなのに構ってもらえない気持ちはわかるもん。あたしにも譲れない一線はあるけど。それに、あなたはシグルドに害を為す人じゃない。そうでしょう?」
「ミアさん……!」
「あの、俺の意見は……?」と呟く俺の肩に、ベルの堅い手がポンとおかれた。
意識が覚醒する。
「マスターの起床を検知。起動シーケンス、完了。おはようございます、マスター」
ベルに握られていた手が離される。
昨日の夜はミアの提案もあり皆で寝た。壁際にアリス。真ん中に俺、俺と対面を向き、抱き合うように俺を自らの胸に埋もれさせるミア。ベッドの側にはベルが控えると言う布陣。
いつもは魔力供給が終わったらそそくさと去っていくらしいベルだが、今日は起きるまで側にいたようだ。アリスは既に起きていて、ベッドに座って俺の顔を上から覗き込んでいる。
「おはようございます。ベルはともかくとして、アリスは早起きですね」
「私たちに睡眠は必要ありませんから」
「え、寝てないんですか?」
「はい。一晩中堪能させてもらいました……」
ほぅ……と熱い吐息を漏らすアリス。満足しているならそれでいいか。
ミアを起こして抱きしめられた腕の中から脱出する。互いにおはようを言い合うと、ミアとキスを交わす。
「ん⁉」
ミアがびっくりしたような声を上げた。
「なんかすごい気持ち良かったんだけど、なんかした?」
「ああ、魔力を流し込んでみました。どうです?」
「……もっかい」
再度口づけ。今度は拙いながらもミアから魔力が流れ込んでくる。
なるほど。これは気持ちがいい。物理的に気持ちいのではない。だが心の底から安心するような、そんな感覚。
唇を離す。気づかぬ間に舌を入れていたので唾液が糸を引いた。
「あーあー、朝から濃いのを……」
許せ。いつもは軽く唇を重ねるだけなんだ。
続いてお辞儀するように下げられたベルの頭に手を置いて魔力を流し込む。最後にアリスだが、何をとち狂ったのか唇を突き出して来たので頬を抓り上げる指から魔力を流し込んでやった。
「いはいいはいいはいふぉへんははい!」
手を離す。
「いったー……。最近容赦なくなってきてません?」
「というか気になってたんですけどその身体に痛覚あるんですか?」
「ありますよ? 痛みは非常に大事な危険信号なんで。この体の崩壊は私自身の崩壊に繋がりますし。というかそもそもこの身体、竜の身体から超絶防御力を落とした状態と言ったほうがいいですかね?」
「なんでわざわざ防御力落としたんですか……」
「そりゃ、鱗と柔肌じゃ防御力は違いますよ」
なるほど。そういうもんか。
「とりあえず謝るんでいつもどおりお願いします」
俺はアリスの頬を手で包み込む。そしてじんわりと浸透するように魔力を流した。
「ありがとうございます。あー、でもミアさんの味が濃い……。嫌いじゃないけど、嫌じゃないけどなんかくそう。それはともかく今日の上納分です」
そう言って手渡される特大の竜鱗二枚。俺は有難く受け取りアイテムボックスへ。その後は身支度を整えて朝食を取り、俺とミアとアリスは三人でダンジョンへと向かった。
「さて、今からダンジョンを攻略するわけですが……。狙うは最奥のボス、そのドロップ品の竜鱗だけなので、RTAを敢行します」
「わー!」と言って手を叩くアリス。何だかんだノリがいい。
「あーるてぃーえー?」
「ざっくりいうと、さっさと行って最奥の竜をぶちのめしましょうという話です」
「おっけー」
「あ、シグルドさん。ダンジョンに入ったら魔力を乗せて最大出力でソナーを放ちながら進んでください。あ、壁じゃなくて空間に。私が反応を追ってナビゲートします」
「分かりました」
「あとしっかり抱えて下さいね? 落とさないように」
「ん?」
「え?」
なんか認識の齟齬がある気がする。
「抱えるってどういうことですか?」
「私とミアさんを、こう……脇に抱えて」
「何で?」
「だってパワードスーツで飛んだ方が早いでしょう?」
「いや、そりゃそうですけど……」
「魔術回路を利用して私の認識した情報の一部をシグルドさんに譲渡します。ナビゲーションはこれで行けます。あとは速度、及び急速旋回におけるベクトル変化による加速度が問題ですが、これはシグルドさんがパワードスーツに施している通り空間魔術の応用で可能です。あ、私が全部やるので気にしなくていいですよ」
「分かりました。でもそうすると両手がふさがって攻撃手段がなくなるんですけど」
「忘れてません? 私、魔術師で冒険者登録してるんですよ? 砲台くらいにはなれます」
えへんと胸を張るアリス。それを眇めた目で見る俺。
「ダンジョン壊れません?」
「そりゃ、壁が剥がれたり溶けたり抉れたりはしますけど、崩落はしませんよ」
悩んだ末にアリスの案を採用。ダンジョンに入り、銃器類を背中に懸架して二人を抱える。アリスの言った通り最大出力で空気中に魔力波を伴ったソナーを放つと、アリスを通してダンジョンの内部構造が手に取るように分かった。
「あー、これは便利だわ」
「でしょう?」
俺は飛ぶ。一階層はいつも見ている通り洞窟然としていた。しばらく飛んでいると、急にガコンと音がして落とし穴が開いた。
俺は着地する。スイッチらしきものは見当たらない。直感を頼った違和感もない。
「いやまさかね……」と呟きつつ、俺は視覚を強化する。具体的には、より短波長長波長が見えるように。そうすると、それが見えた。
「赤外線センサーだとぅ⁉」
俺は驚愕に思わず口を開く。
「何それ?」
「目に見えない光で線を作って、それを遮ると発動するようになっているトラップです」
「あー、たまにあるらしいスイッチも無いのに発動する回避不可能な罠の正体はそれかぁ」と一人納得しているミア。それを横目に、俺はなんでこんな現代的なトラップがあるんだと歯噛みする。
発動したのが落とし穴で良かった。とりあえず触れないようにするしかない。
俺は速度は落とさず、より慎重に進路を進む。階層を跨ぐ階段を降りると、そこには以前のダンジョンと同様に森が広がっていた。
「あー、気ぃ使ったぁー」
「フィールド階層だとそれ自体がモンスターハウスみたいなものなのでトラップはありませんからね。お疲れ様です。あと階段は零時方向です」
「了解」
階段の前まで来るとトレントが道を塞いでいたが、アリスの極大の黒火球で一掃された。
「それ俺の技……」
正確にはゲームのパクリだけど。性能的には違うが。
「まぁまぁ気にしない気にしない」
降りた先、三階層も、四階層も、森。五階層を目前にして、アリスが「もうすぐ終わりです」と言った。
四階層を降り、五階層にたどり着くと、目の前には転移陣ではなく大きな扉。ミアが言うには転移陣と同じく魔力を通せば開くそうだ。
俺は二人を降ろし、扉に魔力を通す。すると扉はひとりでに開き、中の空間を俺たちに晒した。中はただただ広い、闘技場の様な円形の空間。中央には、揺らぎを伴った小さな水球。それに魔力が集まり、異形の人型を形成していく。
「んっ‼」とアリスが突き出した右手からブレスを放った。それはまさしく竜炎とも言うべきもので、敵に水蒸気爆発を起こさせつつ向こう側の壁まで到達して焦げ跡を作った。
「哀れな同胞よ、安らかにお眠りなさい」
アリスが部屋の中央に残された竜鱗の山に向かって祈る。俺とミアは思わず「えー」と声を漏らした。
「アリス……、なんてことを」
「え? 相手がウンディーネだったので高相性かつ得意技のブレスで行動させる間もなく消し飛ばしましたが……、駄目でした?」
ウンディーネは確か水の精霊。もちろん精霊種。属性的には火と相対する。
「いや、出オチって……。酷くありませんか?」
「速攻の手段があるなら使いません? シグルドさんもRTAって言ってた癖に」
「いや、そりゃそうなんですけど……」
流石にウンディーネに同情する。
「さ、ダンジョンは外に出るまでが探索ですよ」
そういうアリスに促され、俺たちはまた最高速でダンジョンを脱出する。帰り道、また赤外線センサーに反応しないように気をつけながら。




