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あの日聖堂で、あの男に触れられてから。
疲労からくる熱で体調を崩したあの時から。
………あの子はまた、自分から離れたがるようになった。
外交官達が集まって会議を開く中、
リアムは目の前で話し合われている議題とは
まったく別のことを考えていた。
自分にとっては聞かなくてもいいような話を、
先ほどからここにいる者たちは話し合っているから。
…………少し考えればわかりそうなことを。
何をどう動かせば自国にとって得となり、
どのような発言をすれば損となるか、
ここにいる連中はわかっていないらしい。
…………儲けばかり考えるから損をするのに。
リアムはただ微笑んで、彼らが牽制し合う様を見つめる。
………自分には関係ないことだ。
こちらが損をするようなことさえなければ、
どこがどこと関係を結ぼうとどうでもいい。
………それよりも。
あの子をどうやって繋いでおこうか、
その方法を考える方がよっぽど難しい。
…………あの日から、
シェリルにどんなに触れても足りなくなった。
髪を撫でても、頬に触れても、
膝枕をしてもらいながら腰に抱きついても、
………キスをしても。
そんなものじゃ全然足りなくて、
ふとした瞬間に全部奪ってやろうかと
黒い自分が顔を覗かせることが多くなった。
そのことにシェリルも気づいているのか、
自分が手を伸ばしておいでと誘うと、
警戒の色を今までより濃く浮かべるようになってきた。
………それはまだいい、それよりも。
自分に抱きしめられているのにシェリルは、
心ここにあらず、といった顔をするようになった。
………ほかのなにかを、
別の誰かのことを考えているような、
少し寂しそうな表情を自分が浮かべていることを
彼女自身は気づいていないのだろうか。
………面白くない。面白いワケがない。
自分の腕の中にいるのに、
ほかのことを考えるとか、ありえないでしょ。
あの猫、意外と浮気性だったのかなぁ………?
いまだ目の前では、
胸の内を探り合うかのようなくだらない討論が続いている。
…………さっさと奪ってしまえばいいのに。
そんなに必要なら、そんなに欲しいのなら、
自分のモノにしてしまえばいい。
ニタリとリアムが笑ったことは、誰も知らない。




