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………これは、きっと夢だ。
今シェリルの目には、
知らない女性が窓の近くに座り込み、
ただジッと空に浮かぶ月を眺めている光景が映っている。
でも彼女は、
自分に見つめられていることに気づいていない。
自分はこの場にいない存在なのだ。
今いるこの部屋にも、見覚えはない。
……………部屋?
そう呼ぶには少し"異様"な気がする。
月を眺めることができる窓には鉄の柵がつけられ、
室内にある家具は小さな机とベットだけ。
クローゼットも、サイドボードもない。
机の上に燭台はあるが、火は付けられていない。
………まるで監獄だ。
ならばここは………自分の目に映っている彼女は。
あの言い伝えに出てくる女性ではないかと、
シェリルは直感的に感じた。
その証拠に彼女の手首には………鎖が繋がれている。
「……………ね。」
ジャラ。と鎖の音を立てながら手を伸ばした彼女が
小さく何かつぶやいた。
月の光に照らされた彼女の顔には、笑みが浮かんでいる。
「……………きれいな、月ね。」
今度はハッキリと聞き取れた彼女の声は、
叫び続けた後のようにかすれている。
「…………あなたも見てる?
あの日も、きれいな満月だったよね…………。」
何かを思い出しているのか、
誰かに問いかけるように彼女はひとり、話し続ける。
「………ずっと一緒にいようねって、約束したのに。」
そうつぶやいた彼女の頬を、涙が伝う。
口元には笑みを浮かべているのに、
彼女の瞳からこぼれ落ちる涙は、止まりそうにない。
「……………会いたい。
…………あなたに、もう一度だけ。
…………会ったら、笑ってくれるかしら?
こんな姿になって、穢れてしまっていても、
もう一度あなたは…………愛してくれるかしら。」
彼女のその静かな問いかけに、答える者は誰もいない。
彼女が欲しい言葉を、誰も言ってはくれない。
きっと彼女自身も、その願いは叶わないとわかっている。
自分に繋がれた鎖から、
その鎖がつなぐ歪んだ愛情から、
自分は逃げられないのだと……………。
床に座り込んでいた彼女が、鎖の音と共に立ち上がる。
……………そして。
「……………ごめんね、愛してる。」
そのつぶやきをかき消すように、扉の開く音がする。
夢の中の彼女は振り返らない。
でもシェリルは振り返ろうとして
…………そこで、夢から覚めた。




