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その鎖、まぼろしです。  作者: クロネコ
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リアムと共に会場へと戻ったシェリルだったが、

やはりまだ少し体調が悪いらしく

早々にこの場を離れたいと、リアムに申し出ようとする。


「………リアム様、わたしやっぱり。」

「リアム殿下!」


自分の言葉に被せるように、

リアムの名前を呼ぶ護衛の姿が目に入る。

………この人、

確かわたしを部屋まで案内してくれた護衛さんだ。

シェリルがボーっとする頭で思い出していると


「………先ほどの女性達がわかりました。

 今こちらに向かわせていますが。」

「…………そう。」


何やらリアムにコソコソと伝えている。

自分が部屋で休んでいる間に何かあったのだろうか?

でもわたしには関係ないことだろうし、

出来れば一刻も早く横になりたいんだけど。


「………シェリル。」

「は、はい?」

「俺のそばから離れてる間に、なにを言われたの?」

「!」


探るような目で自分を見るリアムに、

シェリルは"知ってたの?"と視線だけで返す。


「シェリルを怒らせるようなこと?

 それとも不安になるようなこと?

 ………まぁどれだったとしても、

 そのせいで体調が悪化したっていうなら

 ちゃんと謝ってもらわなきゃいけないよね。」


怒っているのだろうか。それとも呆れているのか。

少し冷たい声を発するリアムの前に

先ほどの護衛に連れられてきた女性が二人、

体をガタガタと震わせ、青ざめた顔をして現れた。

その二人の顔には、シェリルも見覚えがあった。


「もっ、

 申し訳ございませんでした!!リアム様!!」

「私達、決してシェリル様を見下すつもりでは………っ。」

「頭を下げる相手が違うし、

 そんなに大きな声出すのやめてもらえる?」

「!!」

「………それに謝るってことは、

 自分たちがそういう話をしていたって

 自覚があるんだよね?」

「っ…………。」

「この子に何を聞かせたのかは知らないけど、

 内容によっては今の自分たちの生活と立場を

 無くすことになっても文句は言えないよね?

 ………あ、キミ達の名前、まだ聞いてなかったっけ。

 ここにいるってことは 

 それなりの爵位のご令嬢だろうから 

 ご両親にもお伝えしておこうか?」

「リアム様。………もうおやめください。」


目に涙を溜め、少しうつむき加減になりながら

ガタガタと震える二人の姿を見たシェリルは、

矢継ぎ早に責めの言葉を並べたてるリアムを止めた。

こんなふうに冷たい声で責めの言葉を浴びせられれば

何も言えなくなるのは当然で、

しかも相手はこの国の王弟なのだから。


「わたしに直接言ってきたワケではありません。

 盗み聞きしてしまったのはこちらですし。

 ………たしかに、

 話の内容は心にグサっとくるモノでしたけど。」

「シェ、シェリル様………っ。」

「私たちは決して………!!」

「でも。

 すべてが嘘ではなかったですし、

 そういう考えを持っている女性もいるってことを

 知らないままでいるよりはよかったです。」


リアムの愛人になろうとしている女性は大勢いる。

それだけ彼は魅力的に見えるのだろうが

きっとその女性たちは、

外見にだけ魅力を感じ、彼の中身なんて知らないだろう。

だってこの人、中身はだいぶヤバい。


「皆さんのおっしゃるとおり、

 私ではリアム様を"満足"させることは

 難しいでしょうし、自信もありません。

 でも、一つだけ言わせていただくとしたら

 わたしがリアム様を満足させるよりも先に、

 彼の方がわたしを

 "満足させられるか"ですわ。」

「!!!」

「だってわたしがリアム様を選んだのでは無く、

 リアム様がわたしを婚約者に選ばれたのですから。」


ねっ?とシェリルはリアムに向かって微笑む。


「それに、

 外見だけで判断するのはおやめになった方がいいですよ?

 リアム様がわたしの"何に"首ったけなのか、

 皆さんはご存知ないのですから。」


ごめんなさい、わたしも知らないんですがね。

心の中で自分のついた嘘を謝りながら、

今度は女性達に向かってふんわりと微笑む。

でもこれで、少しは変な噂話も収まってくれるだろう。

わたしが彼を選んだのでは無く、

彼がわたしを選んだのだと、

今まさにハッキリと宣言したのだから。

………でもまぁ、

"満足"という言葉の使い方が間違っている気もするが。


そしてやはりと言うべきか、その勘は当たり、

シェリルの目に映った彼女たちは

さっきまで顔を青ざめさせていたはずなのに

今度は少し頬を染めて自分を見ている。

シェリルはその表情に、あれっ?と首を傾げ、

やっぱり言葉選びを間違えただろうかと

隣にいるリアムに助けを求めたが。


「………なっ?!

 なんでリアム様まで赤くなってるんですか?!」

「………だってシェリルが。」

「わ、わたしがなんだって言うんですか?

 ………あ、待って!

 皆さんもなにかちょっと違った方向に勘違いを!」


よく見れば、

先など彼女たちをここに連れてきた護衛も、

聞いてはいけないものを聞いた、といった顔をして

少し頬を赤らめているように見える。


「そ、そうですわよね!

 シェリル様はたしかに可愛らしい方ですけど、

 リアム様しか知らない、その、そっちの方が……。」

「そっちってどっち?!

 ち、違うんです!!

 わたしが言った"満足"っていうのは

 王子妃としてであって!

 べ、べつにそっちだとかどっちだとかの事じゃなくて

 そんなやましい意味じゃ………!!」

「大丈夫だよ?シェリル。

 間違ったことは何一つ言ってないし、

 俺がキミを"満足させられる"ように

 日々奔走してるのは本当のことだから。」


まだ頬をうっすらと赤くしたままのリアムが、

自分を見ながらうっとりと笑うのを、

シェリルはひとり、顔を青くして見つめたのだった。



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