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案内された部屋の窓から、
シェリルはジッと外を見ていた。
少し横になれば治るかと思った調子の悪さは、
回復の兆しを見せることはなかった。
様子を見に来たメイドが頭痛薬を持ってきてくれたが、
それすら飲む気にもならず、横になっていた体を起こし
窓から外を眺めてボーッとしている。
「…………愛人かぁ。その手があったか。」
ボソッとつぶやいた自分の言葉に、
シェリルは苦笑いを浮かべる。
自分とリアムの婚約が決まってしばらくが経ち、
その立場は確固たるものになりつつはあるが、
まさか今度は愛人の座を狙う女性達が現れるとは
さすがのシェリルも笑うしかない。
これではいつまでたっても自分の立場は崖っぷちだ。
「わたし、恋愛経験ほぼゼロなんですけど。
………そんな子供に、
あんな色気ぷんぷんのお姉様たちを相手に戦えなんて
ちょっと酷すぎやしないですかねぇ。」
自嘲気味に言った独り言が、部屋の中に静かに響く。
正々堂々と戦う気力も、リアムの愛人になろうと
躍起になっている女性達が持つ色気も、
今のシェリルは持ち合わせていない。
というか、これから先も持てる気がしない。
ただリアムを好きだという気持ちだけでは、
王子妃として"戦場"に赴いたとしても
こてんぱにやられて今のように傷つくだけだ。
「………頭痛い。気持ち悪い。眩暈がする。」
絶不調のシェリルはふと、
結婚式が行われた聖堂が窓から見えることに気づく。
………あの時のアイリーン様、
本当に幸せそうな顔で笑ってた……………。
幸せそうに微笑むアイリーンを思い出し、
シェリルはチクリと胸を痛める。
自分もあんなふうに幸せそうに、
愛する人と笑いながら向き合えるのだろうか。
……….このままだと結婚式にも
愛人候補が乗り込んで来そうな気がする。
シェリルは内側から掛けられた鍵を外し窓を開けると、
もう一度聖堂をジッと見つめる。
………少しだけ、行ってみようかな。
いい気分転換になって、体調も良くなるかも。
静かに窓を大きく開け、
シェリルはヒラリと窓枠から外へと飛び出す。
幼い頃はいたずらっ子で、
屋敷からよく抜け出していたシェリルにとって
窓から飛び出すぐらい朝飯前だ。
ちょうどココが一階なのもラッキーだった。
外から窓を閉め直し、周りに人がいないことを確認する。
きっと護衛やメイドもしばらく部屋には入って来ない。
体調が悪いのでそっとしておいてほしい、
少し眠りたいからと先ほど頼んでおいた。
……どうせリアムも、
女性達に捕まってしばらくは動けないはずだ。
少し冷たい夜風を浴びながら、
シェリルは早足で聖堂へと向かったのだった。




