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無事に結婚式を終えた二人はその後、
沿道に集まった人たちに祝福されながらパレードを行い、
残すは夜の披露宴のみとなった。
まだ少し宴が開かれるまでに時間があるため、
シェリルは始まるまで待っていようと
弟のレンと共に部屋で待機していた。
「………姉さん、顔色悪くない?」
「………やっぱり?
なんか疲れてるみたいで………
さっきから幻覚みたいな、
幻聴みたいな症状に襲われてるんだけど。」
「なにそれ?
自分の結婚式でもないのに緊張でもしてたの?」
「………そんなことはないと思うんだけど………
あのステンドグラスを見てから変なんだよね。」
「ステンドグラス?………聖堂の?」
「そう。
綺麗だなぁ、って見てただけなんだけど、
なんかそれから調子が良くなくて………
あ、ねぇ!小さい頃とかに、
家族でステンドグラスがある場所に
出かけたことなんてあったっけ?」
「?
………そんな記憶はないけど。」
「そうだよね………
わたしとアンタは一つしか歳が変わらないし、
出かけた記憶も同じものしかないよね。」
それじゃあさっき見えたステンドグラスの光景は、
いったい何だったのだろうかとシェリルは考え込む。
あれは間違いなく"夜"の光景だった。
それに、聞こえてきたあの声も聞き覚えはなかった。
…………まさか。
「ね、ねぇ!あの聖堂って、
なんか呪われてるとか、怖い話とかあったりしない?」
「はぁ?
仮にも王家が管理してる建物に
呪いなんてあるわけないだろ?正気?」
「………いたって真面目に聞いてるんだけど。」
ここまできたら、自分の身に起こっているのは
心霊現象ではないかとシェリルは思ったが、
キッパリとレンに否定され、ガックリと肩を落とす。
いっそ心霊現象であってくれた方が、
気持ちもスッキリしたのではないかと思う。
「………それより姉さん。
このあとの披露宴の方が大変なんじゃないの?
殿下に付き添って挨拶に回らなきゃいけないんでしょ?」
「…………やめてよ。
余計に調子が悪くなること思い出させないで。」
「くれぐれも騒ぎを起こさないようにって、
母さんがすごい剣幕で伝えてくれって言ってた。」
「なにそれ!
さすがにわたしだって国王の披露宴で
騒ぎなんて起こしたりしないしっ。」
「前回のパーティーでの一件があるからねぇ。
………殿下のそばから離れない方がいいんじゃない?」
「そんなずっとベッタリくっついてなきゃダメなの?
………その予定はないんだけど。」
「姉さんさぁ………
ここんところ殿下が忙しかったの知ってるよね?
そんな殿下を労ってあげる気持ちはないの?
姉さんがそばにいるだけで、
殿下が不機嫌になる確率はグンと下がるんだよ?」
「そばにいるのが労うことになるわけ?
………心配しなくても、
わたし以外の美女たちが労ってくれるよ。
いろんな国からご令嬢も出席するって聞いたし、
今もリアム様を狙ってる子はいるんじゃない?」
「まだそんなこと言ってるのかよ………。」
「………正直、
リアム様のそばにいたいと思うし、
ちゃんと好意も持ってるんだけど………
あぁいう場に出れば
少なくとも女性が近寄ってくる人じゃない?
そういう人が自分の相手だと思うと、
ちょっと自信を無くすというか…………。」
「心配しなくても、
姉さんも美人じゃないけどそれなりの顔してるよ。」
「なにそれ。褒めてんの?けなしてんの?」
「もちろん褒めてるよ。
姉さんみたいな童顔で可愛らしいタイプが好きって男、
結構いたりするもんだから。」
「あ、そっ!
でも残念ながらわたしはリアム様に迫るような、
ナイスバディでも自信家な女性でもないから。
ベッタリ仮面でもくっつけて、
笑顔で挨拶し終わったら早々に壁際に避難するわ。」
「…………あ、そ。」
レンと話しているうちに時間は過ぎ、
披露宴が始まりますので。と、迎えの者がやって来る。
どうかさっきみたいな幻覚や幻聴は起こりませんように。
そんなことを思いながら、シェリルは立ち上がった。




