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その日、
空は雲ひとつない晴天だった。
赤い絨毯が敷かれた聖堂の奥。
色とりどりの宝石が散りばめられた王冠は
現国王から次の新しい国王の頭上へと置かれ
新たな国王の誕生を宣言した。
………このあとは、二人の結婚式だ。
戴冠式と結婚式を同じ日に行うのは
この国が建国されて以来、初めてのことだ。
本来ならば別の日に執り行われるのが普通だが、
いっぺんに済ませた方が楽チンだろうと
新しい国王となったバルドが提案したのだ。
………そのせいでものすごく忙しくなった。
と、王弟となったリアムから聞いた時は
苦笑いを浮かべるしかなかったが。
「さぁ、シェリルちゃん。
私たちも一度外に出て待ちましょうか。」
そう言って声をかけてきたヴィンセントと共に、
シェリルは聖堂の外へと出る。
このあと行われる挙式も同じ聖堂で開かれるため、
その準備のため戴冠式へ出席していた者たちは
皆外へと出始めていた。
「にしても、
戴冠式と挙式を同じ日の同じ場所でやるなんて、
バルドもアイリーンもめんどくさがりねぇ。」
「おめでたいことは同時にやった方が、
幸せ度も二倍になるからってアイリーン様が。」
「周りの人間は忙しさが二倍になったでしょうね。」
ははは、と乾いた笑いを口にしたシェリルは、
これから始まる新国王の挙式を楽しみにしていた。
結婚式に参列するのは子供の時以来で、
しかも王室の人間の挙式に出席することになろうとは
夢にも思っていなかった。
「アイリーン様のウェディングドレス姿、
きっと素敵でしょうね!」
「まぁあの子はどちらかと言うとキツめの顔だから、
"可愛い"というよりは
"綺麗"な花嫁さんになってるでしょうね。」
「どちらでも素敵なことには変わりないです。
ウェディングドレスもピンクにしたって
この前会った時に嬉しそうに言ってました。」
「あの子はどっかの誰かさんと違って、
明るくて可愛い色が好きみたいだもんねぇ?」
「………誰のことですかね、それ。」
………今日のドレス、べつに地味じゃないのに。
そう心の中で思いながら
ぷいっとそっぽを向いたシェリルが着ているのは
深緑を基調としたクラシカルなドレスで、
胸元から首元にかけて
黒いレースのシースルーデザインになっており
ふんわりとした白の長袖がついた
オフショルダータイプのドレスだ。
………ただ問題なことがひとつ。
ウエスト部分がコルセット風に締められたデザインのため、
このあとの豪華な食事を楽しめるのか………
それだけがシェリルの心配だった。
「自分の挙式のときは、
シェリルちゃんも可愛い色を選んだら?」
「………未来のわたしに頑張るよう伝えてください。」
そもそも結婚式も地味でいいんですけど………。
"はぁ"と、下を向いてため息をついたシェリルに
「ほら。王子様が迎えに来たわよ。」
と、ヴィンセントが声をかける。
その声に反応して前を向けば、
こちらへと向かって歩いてくるリアムの姿が目に入る。
限りなく黒いに近い深緑色のロングコート。
高く立ち上がった襟と斜めに重なる前あわせには、
細かな模様が入った生地が使われている。
彼が選ぶデザインは黒を基調とされたものが多く、
クールで大人な印象を与えるためか
年齢より幼く見られる自分が隣に立つのは少々、いや、
だいぶ気が引けてしまうのだ。
「よく似合ってるよ。そのドレス。」
「………ありがとうございます。」
ニコリと軽く微笑んで、シェリルはリアムから目を逸らす。
この日の為に忙しい日々を送っていたであろうリアムとは
シェリルも久しぶりに顔を合わせるのだが、
あの夜、眠りについたリアムを見届けて
静かに部屋を出たことを、後日散々責められたのだ。
"どうして隣で寝てくれなかったの?"
"朝までそばにいてくれると思ってたのに"
"シェリルが足りないっていったよね?"
………などなど。
仕事の忙しさも重なって、
自分を責めるリアムの不機嫌さは最高潮だった。
それから今日まであまり顔を合わさずに済んだのは
むしろ不幸中の幸いだったといえる。
そして今二人の間には、責められ責めた日から続く、
微妙な空気が変わらずに流れている。
「ちょうど聖堂の準備も終わったみたいね。
………わたし達も中に入って待ちましょうか。」
「そうですね。
実はあの聖堂内のステンドグラス、
もっとじっくり見る時間が欲しかったんです。」
ふふふ。と笑って歩き出したシェリルを
リアムはジッと見つめ、考え込むような表情をする。
…………責めたこと、根に持ってる。
あの夜のことを我ながらグチグチと責めたと、
リアムも少し後悔はしていた。
自分のことを思って彼女がしてくれた行動は、
確かに、間違いなく嬉しかったのだが…………。
「………オマエ、またなんかやらかしたの?」
「………答える必要ないよね?」
ジロリとヴィンセントを睨みつけ、視線を前に移すと、
リアムは先を歩くシェリルの後を追った。




