73
王妃との初対面と、
ヴィンセントの母の強烈さに少し疲れながらも、
シェリルとヴィンセントは執務室の前にたどり着く。
それじゃあまたね。と去って行くヴィンセントを見送り、
シェリルも執務室の扉を開け、中へと入る。
「………リアム様?」
声をかけながら部屋の中を見回すと、
ソファで仰向けになって眠るリアムの姿があった。
「…………寝てる?」
そっとソファに近づき、
眠っているリアムの顔に自分の顔を近づける。
………まつげ長い。
女の自分より綺麗な顔をしているリアムの寝顔を
マジマジと見つめていたシェリルに
「………キスしてくれるワケじゃないんだ?」
「!!」
突然目をパチっと開けたリアムが
口元に笑みを浮かべて聞いてくる。
「い、いつから起きてたんですか?」
「んー?………シェリルが入ってきた時から。」
「なっ………。」
そう言いながらリアムは上半身を起こすと、
座って?と言うように、ソファをポンポンと叩く。
寝たフリされていたことに少し呆れつつも、
大人しくシェリルはソファに座る。………が。
「!
…………リアム様っ?」
一度起こした体をリアムは再び倒し、
頭をぽすんとシェリルの太ももに乗せる。
その状況にシェリルは少し恥ずかしさを感じながらも、
再び目を閉じ、眠ろうとしているリアムを見ているうちに
呆れも恥ずかしさも消え、今度は少し心配になる。
「………夜はちゃんと眠れてるんですか?」
シェリルはそっと、リアムの髪を撫でる。
彼のゆるふわなクセっ毛は柔らかく、
撫でているシェリルもなんだか心地良さを感じて、
思わず笑みがこぼれる。
「………まぁほどほどにはね。」
きっと忙しくて寝る暇もないのかも……
シェリルはリアムの髪を撫でながら思う。
兄であるバルドの戴冠式と、
それと同時に行われる結婚式の準備の合間に、
きっと普段の業務もこなしているのだろう。
本当なら自分とこんなふうに会っているより、
他のことに時間を使った方がよっぽど有意義なはずだ。
………わたしが無理をしなくなっても、
リアム様が忙しければ頼るのはやっぱり難しい。
でもそれを口にしたら、あなたは怒るんだよね。
「誰か呼びに来たら起こしてあげますから。
…………おやすみなさい。リアム様。」
「…………ん。」
髪を撫でられるのが心地よかったのか、
リアムはすぐに静かな寝息を立て始める。
その寝顔を見つめながらシェリルは、
自分にる出来ることは………。と、真剣に考え、
一つの答えに辿り着いたのだった。




