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「………あ、あれ?リアム様?
こんなところで会うなんて奇遇ですね!」
体を屈めたまま、首だけを後ろへと向けたシェリルは
エヘヘと笑いながらリアムを見る。
何かから逃げようとしているポーズをとりながら
言うセリフではないと、自分でも理解はしている。
「そうだね。奇遇だね。」
「…………そうですよね。」
少しずつ屈んだままだった体をまっすぐに伸ばし、
自分のことをジッと見つめてくるリアムに
シェリルは問いかける。
「リ、リアム様も
何か読みたい本があったんですか?」
「………ないよ?人を探してここに来ただけだから。」
「………そ、そうですか。」
なんだかリアム様、怒ってる………?
自分に向けられる視線はいつもと同じなのに、
彼の纏うその空気がなぜか冷たく感じられて
思わずシェリルはズリっと、足を後ろへと下げてしまう。
「………シェリルは?
どうして一人でここにいるの?」
「え?」
「誰にも行き先を言わずに護衛もつけないで、
どうして一人でここにいるの?」
「………ど、どうしてって。」
「もうただの公爵令嬢じゃないんだよ?
王子の婚約者である立場の人間が、
一人で行動して何かあったら………
何人の人間が罰せられると思ってるの?」
「!」
「行き先を聞かなかった者、
廊下を歩く姿を見かけたのにそのままにした者、
護衛の立場でありながら後ろに付き添わなかった者。
………あ、でも一番悪いのは、
自分の立場をわかっていながら
勝手な行動ばっかりする本人かもね。」
「!!」
いつの間にか空いていた距離を詰められ
気づけば自分の目の前に立っていたリアムに、
シェリルはとにかく謝らねばと言葉を口にする。
「ご、ごめんなさい!!
ここは城の中だから大丈夫かと思って………!
これからはちゃんと………っ。」
「城の中だから大丈夫?それなら今日だって
ヴィンセントに任せたりなんかしないよ?」
「そ、それは…………。」
「今ここに来たのが俺じゃなくてあの男だったら、
シェリルはどうしてたの?」
「………ど、どうって。」
「こうやって距離を詰められて、手を掴まれて。」
そう言いながらリアムは、シェリルの手を掴む。
その手が赤黒く腫れていることに気づき、
シェリルは思わず声をあげる。
「リアム様!!その手どうしたんですか?!
早く手当てしないと………っ。」
「………ねぇ、どうするの?
こうやって手を掴まれて、………キスでもされたら?」
そう言ってリアムは、シェリルの唇を塞ぐ。
突然の出来事に驚き、
シェリルは持っていた本を床に落としてしまう。
「っ………んぅ、んんっ。」
小さく首を振って抵抗しようとするシェリルの唇に
リアムは何度も啄むようにキスを繰り返す。
しばらく続いたキスの嵐からやっと唇を解放され、
息も絶え絶えになりながら自分を見上げたシェリルに
「…………話して?全部。
シェリルが思ってること何もかも。
一人で抱えこまないで、
…………俺の知らないシェリルにならないで。」
苦しそうな声で、リアムは囁いた。




