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その鎖、まぼろしです。  作者: クロネコ
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書庫へと無事たどり着いたシェリルは、

まずヴィンセントから薦められた本を探し出し手に取る。

さして分厚くもないその二冊の本を抱え、

シェリルはもう一つの目的でもある、

この国の"言い伝え"に関する本がないかと

探すことにした。


「………でもあの言い伝えって、

 本にしてまで残すような内容じゃないんだよね。」


一人の女性を鎖で繋ぎ、

どこへも逃げられないように監禁してしまった男の話。

世のうら若き乙女たちに、

"こんな男もいるのだから気をつけなさい"

といった注意喚起には使えそうな言い伝えだが、

本にするとしたらホラーか、もしくは、

大人向けの恋愛小説の題材として使われるのが関の山だ。

だが実際には、

自分の腕には鎖のようなアザが浮かびあがり、

監禁男の血を濃く受け継いだと自覚しているリアムがいる。

………なによりあの不思議なチカラ。

リアムの元へと

強制的に引き寄せられてしまうあのチカラは

まさに鎖に繋がれている状態だと言ってもいい。

彼が指をくいっと動かすだけで、

イヤでも近くに引き寄せられてしまうのだから。


「………やっぱり無さそうだなぁ。」


その後も書庫の中を探し回ってみたが、

言い伝えに関する本を見つけることは出来なかった。

こうなったらリアム本人に

どうやって監禁男の血を濃く継いだと知ったのか

直接聞いてみた方が早いかもしれない。


本を探すのを諦め、

そろそろ屋敷に帰ろうかと思ったその時、


「!!」


カチャッと、書庫の扉を開ける音が聞こえた。

シェリルはとっさにしゃがみ込み、本棚を縦に隠れる。

べつに悪いことをしているワケではないのに

なぜか隠れなければと思ってしまったのだ。


カツカツと書庫の中に響き渡る靴音が、

少しずつ自分のいる場所へと近づいてくる。

このままじゃ見つかるのも時間の問題………

そう思ったシェリルは靴音から逃げるように

体を屈めた状態で少しずつ動き始める。

………バレないように。靴音を立てないように。

だが相手が普通に歩いているのに対し、

シェリルはゆっくり、

しかもバレないように体を屈めている状態なため、

靴音を響かせ近づいてくる人物との距離はどんどん縮まり、


「………何してるの?シェリル。」


コッソリと逃げる泥棒のような格好をしたシェリルは、

聞き慣れたその声に体をビクつかせたのだった。



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