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「姉さん、ほんとに殿下に会わなくていいの?」
「んー………
もしかしたら戴冠式のことで
話が長引いてるのかもしれないし、
このままここで待たせてもらうのも悪いから。」
バルドの戴冠宣言を聞き終えたあと、
一緒にいたヴィンセントは自分をレンに託し
それじゃあまた授業でね。と
手を振りながらどこかへと去って行った。
それならば………と、レンが、
他の補佐官達も控えている部屋へと案内してくれたのだが、
いくら待ってもリアムは姿を見せない。
きっとまだバルド達と何か話し合うことがあるのだろう。
「殿下にはレンから伝えておいて。
…………あ、でも待って。それなら。」
「?」
部屋から出ようとしたシェリルの頭に、ふと名案が浮かぶ。
………今から書庫に行ってみようかな。
"あの人"もきっとアイリーン様と一緒に
戴冠式やそれと同時に行われる予定の結婚式についての
話し合いの場に参加しているはずだ。
それなら少しぐらい自分が王城内を彷徨いても
鉢合わせする確率は低いのではないか。
「ちょっと用事を済ませてから屋敷に戻るね。
レンはまだ仕事があるんでしょ?
帰りは別々で大丈夫だから。」
「………用事?なんの?」
「ちょっと調べたいことがあって。………それじゃあね!」
そう言いながらシェリルは急いで扉を開け、部屋を出た。
ヴィンセントがオススメしてくれた本の題名なら
ちゃんと頭の中に入っているし、
それとは別に、あるかどうかはわからないが
探してみたい本があるのだ。
「あるといいんだけど………。」
そうつぶやきながらシェリルは、
足早に書庫へと向かったのだった。
「…………調べたいこと?」
「すみません。
どこに行くかまでは聞きそびれました。」
シェリルが部屋を出て少し経った頃、
見るからに苛立った様子のリアムが部屋へと入ってきた。
………しまった。行き先を聞くのを忘れた。
そう思いながらレンは、
案の定"シェリルは?"と聞いてきたリアムに、
ありのままを伝える事にしたのだ。
「どこに行くのかも聞いてないし、
何を調べるのかも聞いてないってこと?
………肝心な事、何ひとつ聞かなかったんだ?」
「………すみません。」
「………誰も護衛につかなかったの?
あの子は俺の婚約者だよね?
そんな立場の子を一人でどこかに行かせたの?」
その場にいたレンを含め全員が、
あぁぁ………と顔を青くしたのは言うまでもない。
王城内にも護衛の者は配置されているが、
シェリルに専属で付き添っている護衛はいないはずだ。
それはつまり、
シェリルがどこへ行ったのか誰一人知らないのだ。
「………揃いも揃って無能だね。」
そう言って部屋から出て行くリアムを
その場にいた全員が恐怖の目で見つめていた。




