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「おい、クソガキ。」
「…………は?」
王太子であるバルドが正式に
国王として戴冠すると関係者に宣言した後、
ヴィンセントはやっと一人になったリアムを捕まえる。
ちなみに自分がボディガードとして守っていたシェリルは
弟のレンのところに送り届け、
今はリアムの補佐官達と一緒に部屋で談笑しているはずだ。
「………お前、あの子の"変化"に気づいてんの?」
「………なに急に。」
「その様子じゃ気づいてねぇなぁ?
昔っからバカだと思ってたけど、やっぱりバカだな。」
今この場にはヴィンセントとリアムしかいない。
普段の"オネェ言葉"ではなく
素の方で話しても誰にも聞かれることはない。
それぐらい、ヴィンセントは苛立っていた。
「あんだけ好き好きオーラ出しといて、
相手がおかしくなりつつある事には
まったく気づいてねぇなんて、
お前の目は節穴か?お飾り程度についてんのか?」
「………喧嘩売ってんの?」
「あの子に何があったか知らんが
お前に助けを求めるのはやめようとしてるのを、
お前は気づいてんのかって話だよ。」
「!」
「今日あのメガネヤローからシェリルちゃんを守れって
お前はオレに言ったよな?
まぁそれはいい、正しい判断だったよ。
あの子が気づいてたかどうかはわからんが
向こうもあの子をチラチラ確認してたからな。」
「………………。」
「でもその事を、あの子はヨシとしてない。
お前にいらん手間をかけさせた、
オレに余計な仕事をさせた、
自分一人で対処できるようにならないと。
………お前、信頼されてねぇんだなぁ?」
「………オマエ。煽ってんの?」
「親切に教えてやってんだろ?
………あの子は突っ走るタイプだよなぁ。
お前の力なんて借りずとも、
自分だけの力でなんとかしてみせるって。
王子妃として恥ずかしくないように、
ただの"お飾り妃"にならないように。
その為にお前の力を借りるんじゃなくて、
自分の力だけで何でも出来るようにならなくちゃって。」
「…………………。」
「このままだとお前の方が"お飾り"になるかもな?
あの子に必要とされない、
甘やかしたいのに甘えてこない。
どんなワガママもお願いも聞いてやるのに?
その地位も財力も力もあるのになぁ?
………あぁ、もしかしたら、
王子妃として生きていくのは
真っ白すぎるあの子には難しいのかもなぁ?」
「………っ。ヴィンセント、おまえ。」
「いいよ。あの子が王子妃の座から降りたら
その時はオレがもらって可愛がってやるから。
オマエみたいな大層な地位にいるわけじゃないし、
かといってあの子を幸せにできないほど
低い地位にいるわけじゃない。
………いいか?クソガキ。
自分の好きな相手を婚約者にしたからって
安心して気ぃ抜いてるとサッサと掻っ攫われるんだよ。」
自分より背の低いリアムを上から見下ろし、
ヴィンセントは冷たい視線を向ける。
ただの公爵令嬢だったシェリルを
自分の婚約者にと選んだのがリアムならば
守ってやらなければいけないのもリアムだ。
「王子妃として生きていく未来を与えたのはお前だ。
ならちゃんと守れ、泣かせんな。
苦しい思いだけさせないで甘えさせろ。
………それが出来ないなら
サッサとあの子を解放してやれ。」
自分を睨みつけるリアムにそう言い放つと、
ヴィンセントはその場から立ち去っていく。
その後ろ姿を見つめながらリアムは
握りしめた拳を思いっきり、壁にぶち当てたのだった。




