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「………おかしいなぁ?
人の姿が見えたような気がしたんだけど。」
「気のせいではありませんか?
私には見えませんでしたけど………。」
隣を歩く護衛の者にそう言われ、ゼインは首を傾げる。
………あれは気のせいなんかじゃない。
まちがいなく曲がり角の陰に人がいたはずだ。
すぐに姿を隠したが、あの髪色は………。
そう思ってゼインは周りを見回してみるが、
どこにも人の姿は見当たらない。
………逃げられた?………足の速い子だなぁ。と
心の中でつぶやきながら、護衛と共に廊下を歩き続ける。
あのパーティーの日。
曲がり角でぶつかってきたその少女が
自分の探し求めていた人物だとハッキリわかったのは、
先日彼女の手を掴んだ時だった。
自分の中に走ったその感覚に、ゼインはゾクゾクした。
………やっと、やっと見つけた。
ずっと探していた"あの子"。
やっぱり彼女も、この時代に生まれていたのだと。
自分と同じように彼女も何かを感じたのか
こちらを見て驚いたような表情をしていたが、
その戸惑いを隠すようにその場から立ち去って行った。
………あの時、もっと彼女に触れておけばよかった。
そうしておけば、彼女も思い出したかもしれない。
本当の運命の相手は、この僕だということを。
「………ゼイン殿?」
シェリルのあの戸惑った顔を思い出して
気づかないうちに口元に笑みを浮かべていたゼインを
隣にいた護衛の者が怪訝そうに見つめてくる。
「あぁ、すみません。
ちょっと思い出し笑いをしてしまって………。」
「………さようですか。」
若干の気まずさを漂わせながらも、
護衛の者は何事もなかったように前を向く。
そんな彼の隣でゼインは、思いを巡らせ続ける。
あの子は本来、ボクのモノだったのに。
ボクが躾けて、ボクのそばにいるはずだったのに。
………まぁいいか。
全部上書きして忘れさせればいいだけのこと。
にやぁと怪しい笑みを浮かべたゼインに
護衛の者は気づきながらも見ていないフリをする。
そうして二人は廊下を歩き続け、
「っ………は、…………行っ、た?」
柱と壁の間で息を殺しながら隠れていたシェリルに
気づくことなく、そのまま去って行った。




