58
「………今日はいつもに増して不機嫌じゃないか?」
「………おかしいな。
姉さんに起こしに行ってもらったのに。」
翌日、
リアムの執務室でコソコソと話しているのは
補佐官であるジュードと、
補佐官見習いでありシェリルの弟でもあるレンだ。
「そういえばシェリル様、
王子妃教育のために登城してるんだったな?」
「えぇ。
ですから今日は一緒にきたんですけど、
ちょうど殿下を起こす時間だったし頼んだんです。
だから上機嫌で来ると思ってたんですけど。」
「………絶好調で不機嫌だぞ。」
チラリと様子を伺う二人の目には、
どう見ても不機嫌そうな顔で座るリアムが映る。
………それもそのはず。
朝から予想だにしていなかった
シェリルが自分を起こしにくるというサプライズに
リアムは大喜びした。
ぎゅうぎゅうとシェリルを抱きしめ、
"仕事なんて行かない"
"このまま一緒に寝よ?"
"あ、おはようのキスしてない"……などと、
いつものごとくシェリルを困らせたのだが、
そこはうまく交わされ、それでも上機嫌でリアムは起きた。
………が、しかし。
「あらぁ?シェリルちゃんじゃない!」
シェリルと連れ立って執務室へと向かう途中、
背後から聞こえてきたその声に
リアムは眉間に皺を寄せて振り返った。
「ヴィー先生?」
「ちょうどいいところで会ったわね、シェリルちゃん。
そのクソガキはそこの執務室に行くんでしょ?
ならあなたは私と一緒に部屋まで行きましょ?」
ニヤリと笑いながら自分を見るヴィンセントに、
リアムはさらに眉間に皺を寄せて睨む。
……………コイツ、わざと。
「そうですね!
それじゃあリアム様、仕事頑張ってくださいね。」
「…………シェリルもがんばってね?
………あぁ、でも。
少しでも嫌な事とか変な事されたら
ちゃんと言うんだよ?わかった?絶対だよ?」
「そんなこと無いと思いますけど………。」
「そうよねぇ?
"仲良く二人っきり"で勉強するだけなんだから。」
勝ち誇ったような笑みを浮かべ、
ヴィンセントはシェリルをエスコートしながら去っていく。
その後ろ姿を睨みつけながら、
リアムは不機嫌さを隠す事なく執務室へと入ったのだった。
「………何があったかはわからんが、
これ以上、殿下の機嫌を損ねないように
こちらも仕事に集中した方が良さそうだな。」
「そうですね………。」
そう言って補佐官と見習いの二人は、静かに席についた。
その頃、
シェリルと共に部屋へと向かっていたヴィンセントは、
「あの顔っ………ざまぁないわ!!」
「?!」
そう言って一人高笑いし、シェリル驚かせていた。




