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王子妃教育初回はあっという間に終わり、
シェリルとヴィンセントは連れ立って部屋を出た。
初めての授業のテーマは"お互いを知ること"で
ヴィンセントの女装は趣味であること、
恋愛対象として好きになるのは
もちろん女性だと教えてくれた。どっちでもいいけど。
ヴィオレ兄弟とは幼い頃から一緒に過ごし、
特にリアムとはよく喧嘩をしていたと話す先生の顔は、
苦虫を潰したような顔をしていた。
「ほんと、なんであんなのがいいの?
確かに見た目"だけは"は褒めてあげるけど、
他にいいところなんて一つもないじゃない。」
「え、えーっと………
仕事はとても出来るそうですし、
わ、わたしにはあま………優しいかなぁ、と。」
甘いのは間違いない。何かと甘やかそうとしてくるし。
だがそれを言えばきっとヴィンセントは
その内容を詳しく教えろと言ってくるはずだ。
………恥ずかしくて言えやしない。
「まぁバカにされたり、嫌がらせされたり、
姑息な手を使って
イジメられたりしてないならいいんだけど。」
「…………………。」
きっとそれ、先生がリアム様にされてきたことだよね?
チラリとヴィンセントの方を見ながら
シェリルはそう思ったが、口には出さない。
「それにあなたが語学や歴史とか、
他国について興味があるのが知れたのはよかったわ。
この先のことを考えれば それについて勉強するのは
間違いなくあなたの為にもクソガキの為にもなるから。」
「わたしも楽しみです!
これからよろしくお願いしますね、ヴィー先生。」
「もちろんよ!
………ほんとのところはね、
あなたがただの"お飾り妃"になりそうな子だったら
この話は断ろうかと思ってたの。
なんてったってあのクソガキが選んだ相手だし、
きっと世間知らずのワガママ女が
えらそーな顔して出てくると思ってたから。」
「でもそれぐらい気の強い人の方が
王子妃には向いてるかもしれないですけど。」
「ムリムリムリ。
そんなのと親戚関係になるなんて絶対ごめんだわ。」
あれやこれやと話しながら歩いていた二人だったが、
ふいにヴィンセントがそういえば、と切り出す。
「あなた、まだ専属の侍女はいないのよね?」
「侍女、ですか?」
「これからはここで過ごすことも増えるし、
場合によっては屋敷に帰らずに
泊まることもあるはずだから、早くつけた方がいいわ。」
「うーん………そうですよねぇ。」
「私も母に聞いてみるわ。
良さそうな子がいたら紹介してあげる。」
「ありがとうございます!助かります!」
にっこり笑ってお礼を言うと、
ヴィンセントも笑って、どういたしましてと答える。
………この先生とならうまくやっていけそうな気がする。
そう思うとこれからの王子妃教育が楽しみになり、
シェリルは自然と笑みをこぼす。
その様子を隣で見ていたヴィンセントが
"………アレが気にいるわけだ。"とつぶやいたのを
シェリルは聞き取れず、ヴィンセントに問いかける。
「今なにか言いました?」
「いいえ、なんにもー?………それより、
前から歩いてくるのはクソガキじゃないかしら?」
「!」
そう言われ視線を前に移したシェリルの目に、
少し不機嫌そうな顔でこちらに向かって歩いてくる
リアムの姿が映し出されたのだった。




