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その鎖、まぼろしです。  作者: クロネコ
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そのメガネの男性は自分をゼインと名乗ったあと、

にっこりと微笑んでシェリルを見た。

………その笑顔に、なぜかシェリルはドキリとする。


「シェ、シェリル・ファルツォーネです。

 あの時は本当にご迷惑を………

 あ、で、ケガはなかったですか?!」

「ご覧のとおり、大丈夫です。

 こちらも考え事をして歩いていたものですから、

 可愛いご令嬢に気づくのが遅くなってしまって。」

「………あ、あはは。」


この人、絶対に女性慣れしてる………

リアム様とはまた違ったタイプのプレイボーイ………!!

この瞬間、シェリルは直感する。

この人、あまり近づかない方がいいタイプの人間だと。


「ゼインは私の故郷の幼なじみで、

 あの日のパーティーにも

 外交官として出席していたんだけど。」

「一度会場から離れたら

 道に迷って戻れなくなってしまって………

 その時にあなたとぶつかったというワケです。」

「………なるほど。」

「アイリーンから

 王子に婚約者が出来たと話には聞いていたので

 きっとあなたがそうだと思ったのですが、

 声をかける前に去って行かれましたから。」

「あ、あれは。」


リアムに担がれた時の事を言っているのだと、

シェリルはすぐに気づいた。

この人には変なところばかり見られている………

出来ればリアムにはこの人にぶつかったことも、

つまづいて転びかけ抱き止められたことも

知られたくはない。いや、知られない方がいい。


「リ、リアム様にはお会いに………?」

「えぇ、つい先日。アイリーンに紹介していただいて。

 見目麗しいご立派な王子ですね、あの方は。」

「ははは………そうですね。」


あなたも女性に人気がありそうですけど………

自分の向かいに座るゼインを見てシェリルは心の中で思う。

黒髪に深い藍色の目をした彼は、世間一般的にモテる顔だ。

それにメガネをかけているのもあって知的に見える。

リアム様を

"遊び人風のチャラチャラした女好き"に例えるなら、

こちらは

"知的な優等生に見えて実は女好き"みたいな感じか。

どっちにしろ女性にキャーキャー言われる部類の男性だ。


「シェリル様は、お怪我などありませんでしたか?」

「えっ?はっ?」


ゼインの顔をジッと観察していたシェリルは、

突然話しかけられたことに驚く。

まず顔を観察していること自体が失礼なのだが、

やはりモテ男は自分の顔を見られることに慣れているのか、

まったく気にしていないようだった。

むしろ突然話しかけられたシェリルの方が

慌てたせいか顔を赤くしている。


「だ、大丈夫です!丈夫が取り柄なので。」


ハハハと、誤魔化すように笑ってみせたシェリルを、

ゼインもまた笑顔で見つめ返す。

………な、なんだろう?

同じプレイボーイのリアム様は平気なのに、

こちらの優等生型のプレイボーイは少し苦手だ。


「実はね、シェリル様。

 ………そろそろバルド様が正式に国王に戴冠されるの。」

「!」

「その時に私もこちらに数名、

 同郷の者を呼ぶことになってるんだけど………。」

「……………………。」


シェリルはまさか………といった面持ちで

隣に座っているアイリーンを見る。


「ゼインも、そのうちの一人なのよ。」


 

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