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リアムがご機嫌で公務に勤しんでいる頃、
「目論見は外れたみたいね?シェリル。」
「…………も、目論見って?」
ファルツォーネの屋敷に戻ったシェリルは母に、
話し合いという名の説教を食らっているところだった。
「フィオナさんに婚約者の座を譲ろうとしたんでしょ?
………まぁあの子がなったところで、
すぐに破棄されるのがオチだったでしょうけど。」
「そ、それはわかんな………。」
「あんな傍若無人な子に務まるはずないでしょ。
自分を着飾ることにしか脳がないんだから。」
フンっと鼻を鳴らし、
紅茶が注がれたティーカップに口をつける母。
レンが言っていたとおり、
どうやら我が家とワイマー家は仲が悪く、
私生活においても何かとつっかかってきていたらしい。
「まさか母様………何かしたとか。」
「してないわよ。………あなたと同じなだけで。」
「え?」
「あちらの奥様が本当に結婚したかったのは、
あなたとレンのお父様よ。」
「……………………。」
「まさか娘まで同じ境遇になるとは思わなかったわ。
………あちらはこれで二連敗ね。」
用意されたフルーツを手に取り、母がニヤリと笑う。
………もしリアムの婚約者がフィオナに変わっていたら。
想像してシェリルは、ぶるっと小さく体を震わせる。
「………ところでシェリル。
あなた王子妃としての教育はいつから始まるの?」
「………え?あるの?」
「あるに決まってるでしょ?
第二王子とはいえ、その方の妃になるんだから。」
「ま、まだ婚約者の立場なんですけど。」
「だからこそでしょう?
結婚してから教育を受けるんじゃ遅いわ。」
「……………か、勘弁して。」
シェリルもいちおう、公爵家の娘だ。
最低限のマナーや教養はこれまでに学んできたし
一通りは習得したつもりだが、
王子妃教育ともなれば一般的なものとは異なり、
もっと細かく、そして厳しい教育になるはずだ。
「あなた、バカではないんだからなんとかなるわよ。」
「言い方っ!
………あぁぁ、いやだぁぁ。」
テーブルに肘をついて頭をかかえたシェリルを、
母は呆れたような、困ったような顔で見つめていた。




