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「おいで?シェリルちゃん。」
語尾にハートでもついてるんじゃないかと思うほど甘い声で
リアムが自分の名前を呼ぶ。
「………リアム様。」
「んー?早くおいでー?」
「………いや、おかしくないですか?」
パーティー会場での客人たちの見送りを終え、
王城に泊まることになったシェリルは今、
目の前のベットに自分の婚約者が寝転がり、両手を広げ、
自分が飛び込んでくるのを待っているというその状況に
「どうしてここにいるんですか、リアム様。」
冷静にツッコミをいれているところだった。
「………どうしてって、
シェリルと一緒に寝るからだよ。」
「いやいや、ご自分の寝室に戻られたらいいでしょ?」
「嫌だよ。
なんでシェリルが泊まってるのわかってて
自分の部屋で一人で寝なきゃいけないの?」
「………なんでって。」
「婚約者なんだから
一緒のベットで寝るのは当たり前じゃない?
シェリルの湯浴みとか、髪の手入れとか、
手伝ってくれたメイドも何も言わなかったでしょ?」
「…………………。」
確かに手伝ってくれたメイドは、
シェリルが用意してもらった部屋にリアムがいても
なんの反応もせず、動じず、自分の仕事を終えると
にっこり笑って部屋を出て行った。
「………あぁ、なに?そういうこと?」
「え?」
「そんなに怖がらなくても、
抱きしめるだけで我慢してあげるよ。………今日は。」
そう言うとリアムは、
ベットの前に立っていたシェリルの手首を掴み
グイッと自分の方に引き寄せた。
「っわ?!」
ベットに飛び込むかたちになったシェリルを、
リアムは抱きとめ、そのまま自分の腕の中に閉じ込める。
「が、我慢ってなにを………。」
「まぁそのうちわかるよ。」
リアムは片手で布団を掴み、自分達の上にぽふっと掛け、
シェリルの背中を一定のリズムでポンポンし始める。
そのリズムと小さな振動が心地よくて、
リアムの胸元に顔をうずめていたシェリルは
あっという間に睡魔に襲われ始める。
「………本当は、
わかっててけしかけたんでしょ?あの女に。」
眠気の渦に
ほとんどの意識を飲み込まれつつあったシェリルに
リアムがそっと問いかける。
「あんな茶番ごときで
婚約が解消されると思ってたなんて………
シェリルはホントに可愛いなぁ。」
「………ん………。」
夢と現実の狭間にいるシェリルに、
リアムの声はもう、ほとんど聞こえていない。
寝付きのいいシェリルに"背中のポンポン"は
もはや睡眠薬に近い効果がある。
「………早くおちておいで、シェリル。
………俺のこと、もっと求めて?」
甘ったるいリアムのお願いは、
睡魔の渦に完璧に飲みこまれたシェリルには
届いていなかった。
「………あぁぁぁ………起きてぇぇ。」
翌朝部屋には、シェリルの悲痛なお願いが響いていた。




